4 里での生活始めました。
新章スタートです。
お楽しみ下さい。
「することが無いって暇だな・・・・。」
そう呟きながら朝食を済ませる俺。学校はないし、かといって仕事という仕事があるわけでもない。必要最低限以上からしか儲かりがないのに店を出している人を疑問に思いながらも長老のところへ早速行くことにした。
「ガハハハハ!”やることがないからどうしたら良い?”何て聞いてきた奴はお主が初めてじゃぞ。」
ついてすぐに、真面目な顔で長老に尋ねると爆笑された。
「仕方ないじゃないすか、やること見つからないっすもん。」
返答すると、長老は『すまん、すまん。』と言った後、この里にも学校があることを教えてくれた。学校は、勉強は、近接戦闘、魔法戦闘、治癒魔法、薬学の勉強があるそうだ。ベルもその学校に通っているらしいが、ふと疑問に思った事があって長老に聞いた。
「あれ?でもベルって150年生きてますよね?何十年通ってるんですか?」
「言うのを忘れていたことがあったわい。お前とベルの竜人間、儂ら古代竜、そして竜人族は寿命によって感じる時間が違うんじゃ。儂ら古代竜は大体2000年生きるがな、感覚では100歳までしか生きとらんのよ。儂らは20年を大体1年感覚で過ごしていてな。お主らは1000年じゃから10年を1年、竜人族は500年じゃから5年で1年という感覚じゃ。成長速度もそれに並行しとるんじゃ。」
「それって何か損してますよね?」
「一般的に見たらそうかもしれんな。じゃが、例えば2000年をそのまま人間感覚で生きれるとしたらお主は楽しいか?儂には100を超えたら苦痛にしか思えん。」
「そんなもんなんですかね?」
「そんなもんじゃ。答えは神のみぞ知るというところじゃな。」
「はぁ・・・。え、まてよ?じゃあ俺も?」
「そうじゃな、そういうことになる。お主は元人間じゃからな、変な感じがするとは思うが、まぁそれも楽しめ!ガハハハハハ!」
ひと通り笑い終わった後、長老が学校に話を通してくれるというので、二人で学校にいくことになった。
学校に着くと、ゲルニアと一緒に校長の所へ行き、話をした。
どうやら、このディアス学校は個々の実力で進級できるようで、1年から3年まである。まだこの世界に来たばかりであり、ベルが1年生だということもあり俺は1年に入ることになった。都合のいいことに、今は4月の初めでベルも今年から入学。同じ位置からのスタートになった。ちなみにベルがどこでイジメられてたかというと、サラが忙しかったので託児所のようなところ、まぁ託児所に預けざるをえなかったため、その託児所でイジメられてたらしい。
丁度入学式が終わって教室に戻る頃だというので、俺はゲルニアと別れると、校長に案内され、教室に向かった。
教室に着くと、校長が外から手招きをして担任の先生を呼び、俺の事について話した。校長はそこで校長室へと帰っていった。
教室に入ると、周りの目が俺に集中する。転校生気分を味わっているようだ。ふと、生徒たちを見渡すとベルと目が合った。俺は微笑むと、ベルはぷいっと顔を逸らした。
・・・・嫌われてるのか、俺?
先生が校長との話で事情を察しているので、席はベルの右隣になった。あれ?席がないな。と思っていた矢先、先生が指をパチンと鳴らすと、ベルの右隣に机が現れた。
さすが魔法の世界!力仕事も魔法で解決だね!
こういうのを見てしまうと将来が心配になったりする。
まぁ、そういう事は置いといて、俺は席についた。先生がこれから行う自己紹介について喋っている中、小声でベルに話しかけた。
「俺はカイト。長老とサラさんから話は聞いてるよ。よろしくね。・・・・ベルって呼んでいいのかな?」
「お母さんとおじいちゃんの・・・・?うん、よろしく。」
会話を終えるとすぐにベルは先生の方を向いた。やっぱり嫌われ・・・・いや、警戒されてるんだろうか。
自己紹介をひと通り終えると、これからの授業などについて説明をされ、その後に校舎の案内をされることになった。
俺はなるべくベルの警戒を解くために、ベルの近くに行こうと機会を伺ったが、実際にその必要はなかった。ぞろぞろと並んだ後にベルは、いたの?と思われるレベルでサッと並んだ。
・・・・分かるぜその気持ち。でも俺よりも辛いんだろうな。
などと考えながらもベルの隣に行く。
「・・・・なんで隣に来るの?」
あからさまに嫌がられたが、俺は諦めないぞ!
前の世界で家事をやってきた俺はよく食材を買い出しに行っていて、その時に編み出されたのが値引きスマイルだ。あれはなぜか若いお姉さん辺りにしか通用しないが。
とりあえず俺は、全力の値引きスマイルで話しかけた。
「さっきも言ったけど、長老とサラさんから話は聞いてるし、俺さ、訳あって友達が全く居ないんだ。だから友達になりたいなって。」
「っ!・・・・・他の人と友達になればいい。嬉しいけど、私と友達になったら色々と面倒だからやめたほうがいいよ。」
値引きスマイルは効かなかったのか、すぐにぷぃっと顔をそらされて、そう言われた。
Oh・・・・なんて健気な。話には聞いていたけど、それでも俺の方を心配するのか。何なんだこの健気で他人思いな美少女は!抱きしめて頭撫でくりまわしてやりたいくらいだ!・・・・・ロリコンじゃないぞ。ベルコンだ。いや、コンプレックスが入ってる時点でダメか。
こうなったら最終兵器だ!
「俺もベルと同じ竜人間なんだよ。」
俺は最終兵器を口にすると、ベルは目を丸くしてこっちを見た。俺は再び値引きスマイルを発動すると、またぷぃっと顔をそらされた。やはり少女には効かないらしい。
「でも、でもカイトはやっぱり私より他の人と友達になったほうがいいよ・・・・・。」
最後のほうがゴニョゴニョとして聞こえなかったが、これ以上迫ると、何か勘違いされそうなのでやめておくことにした。
校舎案内が終わった後、身体測定と能力測定をすることになった。身体測定は勿論、男女が別の教室に行って終わらせてきた。教室に、身体測定を終えた皆が集まると、能力測定を始めた。能力測定は簡単にいえばステータスを測定する。この学校では学生手帳の代わりに、ステータスカードが渡される。所属の学校と学年が入れられて、能力も表記される。
一人ひとりが席順に呼ばれていく。俺は右端なので一番最後だ。俺が一番恐れているのは、能力測定で使う魔導器が容量オーバーで爆散することくらいだが、杞憂に終わった。
無事皆終わり、ステータスカードを確認する。
-カイト-
所属 ディアス 1年
年齢・17
種族・竜人間 ハーフ
性別・男
レベル・1
魔力・10000
攻撃力・9800
防御力・6500
俊敏力・8000
魔攻力・9800
魔防力・6500
運・65
魅力・70
{装備}
・竜人族の普段着
{スキル}
・鑑定・全言語理解・竜化・竜魔法・古代竜の加護
鑑定で見れるところの上に所属と学年が書いてあった。相変わらず何時見ても化け物ステータスだなおい。
ステータスを確認したところで昼食になった。俺はベルを誘って食堂に行こうかと思ったが、ベルが居なかったので1人で行くことにした。
食堂は全学年が同じスペースに入るので、やはり混雑していた。食事はバイキング形式になっていて、俺は適当に美味しそうなものをトレーに乗せると、空いている席を探した。すると、隅の方にベルが居た。ベルの周囲には誰も居なかったので、俺はベルの隣りに座った。
「1人で食べるくらいなら俺の事誘ってよ。」
俺は微笑みながらベルに声を掛けたが、『ごめん、でもやっぱり。』とだけ答えるとベルは昼食を食べ始めた。俺もそれ以上話すこともなく、昼食を食べる。時折、ベルの方を見たが特に会話もせず。ベルの口角が少し上がっていたのは、多分気のせいだろう。
昼食の後、教室で明日の日程の説明を受けた後は放課となった。このまま家に帰るのも暇なので、ベルを散歩に誘おうとした。だが、ベルはなにか思いつめたような顔つきで、そそくさと教室を出て行った。
俺はイジメだろうかと思い、ベルを追いかけてみることにした。
・・・・・ストーカーって言ったら怒るぞ?
ベルを追いかけて行くと、学校からある程度離れたところから裏路地に入った。俺も裏路地に入り、どんどん追いかけて行くと、角を曲がったところが小さなスペースになっていて、行き止まりだった。ばれないように角に身を潜めると、話し声が聞こえてきた。俺は陰から覗くが、ベルしか見えない。
「ベル、クレッチでの約束の日が来たね。あの頃より一段と可愛くなったじゃないか。」
・・・・・ずいぶんとクサいセリフを吐く奴だな。
ちなみにクレッチとは託児所のようなところだ。
「うん。でも、本当にイジメから守ってくれるの?ボルドラさん。」
「あぁ、勿論守ってやるさ。それと、僕のお願いも聞いてくれるって約束だよね。」
「分かってる。ボルドラさんのお願いは何?」
「僕の愛人になってくれ。」
「「・・・・・・え?(はぁ?)」」
・・・・・イジメから守る代わりに愛人ですか。
俺の怒りのボルテージはもうMAXよ?
「あっ愛人!?冗談でしょ、ボルドラさん?」
「僕という引き取り手が居るんだ。良い条件だろう?ベルには他種族を差別する汚れし人間の血が流れているんだ。孤独よりマシだろう?」
「け・・・・汚れてなんかない!お父さんは・・・・お父さんはとても優しくてお母さんのこと助けてくれたってお母さんが言ってたもん!どうして?ボルドラさんは血なんか関係ないって言ったじゃん!」
「・・・・はぁ。まぁいい、この約束を飲めないというのなら、僕の仲間を連れて、”お前”を手に入れる予定だったからね。選ばせてやるよ、イジメから守られて僕の愛人になるか、それとも孤独に生きて僕らに強姦されるか。・・・・全く、なんでお前みたいな忌み子が美少女なんだ?神も頭が狂ったか。」
ボルドラがそう言うと、ベル側に上空から翼を使い、囲むように2人降りてきた。
「うぅ・・・・・。」
・・・・・はぁ。怒りを通り越す感じはこれが初めてだよ全く。
よく、怒りを通り越して呆れるといった言葉がある。それは本当で、さっきまで醜い差別をするボルドラに対してかなり怒っていたが、もう頭は冷えた。
ベルは返答に困り、小刻みに震えていた。
どうしてだろうか?そもそもベルは仮にも古代竜の血も流れているんだから、力技ならベルの方が上だろうに。
そう思いながらもベルを助けに、角から出た。ボルドラさんは、見た目イノシシと竜のハーフだった。言葉遣いからは考えられない容姿だった。
「選ぶ必要はないよベル。俺が守ってあげるから。」
・・・・自分のセリフが臭すぎて死にたくなるが今は気にしない。
俺はそう言いながらベルの所へ行く。ベルはもう涙目で震えていた。俺は囲んでいる奴らを無視してベルの隣に立った。俺がベルの方を見ると、ベルもこっちを見てきた。ベルの顔はもう涙でぐしゃぐしゃだった。無理もない、クレッチから信頼してきた友人に裏切られたんだ、数少ない友人に。
そんなベルを見た俺はもう気持ちが収まらなくなり、気がついた時にはベルの頭を強く撫で回していた。
「ベルやベルの父さん、人間の血が悪いんじゃない。力を悪用した人たちが悪いんだ。」
俺はベルにそう言うと、ボルドラへ向かって歩いた。
「まぁ、そういう訳だ。お前の腐った約束なんぞ知ったこっちゃねーよ。二度とベルに関わんじゃねぇ、胸糞わりぃ。」
悪態混じりにボルドラへ吐き捨てる。
すると、ボルドラはベルを囲んでいた二人を呼び、俺を囲んで立った。
「何かと思えばヒーロー気取りかい?君1人に何が出来る。そもそも君が救おうとしているのは汚れし人間の血が混じっている竜人間だぞ?」
「今度汚れしなんて言ったら問答無用でぶっ飛ばすぞ?俺だって竜人間なんだからな。」
「へぇ、”お前”もか。やれるもんならやってみなよ。全ステータスの平均2000のエリートの僕に勝てるとでも?」
・・・・まったく、エリートってのはどうしてこう。
すると、俺を囲んでいる2人のうち、1人の顔色が変わった。
「・・・ボ、ボルドラさん。あいつの頭良く見て下さいよ。あの角、古代竜のやつですよ?」
顔色の変わった奴がそう言うともう一人も顔が真っ青になった。古代竜効果すごいなおい。
「なにを怯えてるんだ?ハーフだから古代竜じゃ無いだろう?やるぞお前ら。」
そう言うと三人は俺に襲いかかってきた。
うん。で、どう戦ったらいいの俺?
非常にマズイ展開になった。なぜなら俺はステータスは強いものの、戦い方を知らない。万事休すとはこのことだろうか。
ボルドラは魔法を唱え、他の2人が俺に攻撃を仕掛けてきた。
・・・・・・あれ?
俺は2人の攻撃を苦もなく避けた。まぐれだろうと思い、今度の攻撃はまずいと思ったが、それも避けられた。
信じられないが、これが身体が覚えているということだろう。古代竜の肉体が動きを覚えていたらしい。・・・・多分。
まぁ兎も角、戦闘ができると分かったので、俺は2人を倒すことにした。スキルにある竜魔法は頭の中にしっかりと刻まれているので何時でも出せる。
まずは1人目。俺は左腕の魔法陣を光らせると、両腕を竜の腕にして竜魔法を使う。
「竜迅掌!」
俺は何処かの格闘家のように深く構えると、瞬間移動とも言える速さで相手に近づき、掌で相手を突き飛ばす。
1人目は一撃で壁にめり込みノックダウン。まだまだ俺のターンです。
それでは2人目、怯えているが許しません。地面を軽く蹴って近づくと、裏拳を一発顎にドーン。そして一撃ノックダウン。まだまだ行きますよ?
そして最後にボルドラ。振り向くと、ボルドラは詠唱を終えていた。身体がキラキラと光りだした後、なかなかの速度で突進してきた。使った魔法は身体強化だろうか。
だがしかし、もう俺を止めることは出来ないぜ☆
俺は突進を右手で止めると左手でカウンターを放つ。
「竜波!唸れ風迅!」
イノシシと竜の混ざった巨体のボルドラは、1人目の隣の壁にめり込んでノックダウンした。
この辺で説明しよう!まずは最初の竜迅掌はその名の通り掌を使った突きのようなものであり、超高速で相手の前に現れてぶっ飛ばすのだ!そして今回の目玉は竜波!竜波は魔力を波動として飛ばす技で、属性を乗せることができるのでどんな相手でも大丈夫!万能技である。
まぁ技の説明はそれくらいにしておこう。戦いが終わったので、俺はベルの所へ向かった。ベルはまだ少し泣いていたが、俺が近づくと、涙を拭いていた。
俺はとりあえず、さっき疑問に思ったことを聞いてみた。
「ベルも古代竜の力を受け継いでるなら、さっきの奴らくらいどうってこと無いんじゃないの?」
「私ね、お父さんの、人間の血が濃いからそこまで強くないの。」
「・・・・そっか。まぁ、とりあえず帰ろっか。ベルの家は何処?送ってくよ。」
「おじいちゃんの、あっ、長老の家の近くだよ。」
「別に言い直さなくてもいいよ。分かった。じゃあ行こっか。」
俺はベルが立ったのを確認すると、路地の出口へと歩き出そうとしたが、ベルから不意に声を掛けられた。
「カイト。手、繋いでもいい?」
・・・・天使だ。そうだ、ベルは天使だ。まさか俺にもこんな美少女と手を繋げる日が来るなんて。神様、もう死んでもいいです。あ、もう二回も死んでるのか。やっぱり死にたくないです。
「いいよ。」
俺はそう言うと手を繋いだ。内心俺はとても安心していた。学校で散々軽くあしらわれてたけど、なんとか仲良くなれたようだったのでよかった。これで嫌われたら長老に合わせる顔がない。
『あったかい。お母さんと一緒だ。』と言い、微笑みながら歩くベルにメロメロになりながらも俺とベルは家に向かった。
カイト「まぁ、戦えちゃったわけですよ。」
ベル 「カイト、本当に容赦なかったよね。」
カイト「一応怒ってたからな。」
ベル 「・・・ありがとう。」
次回も日曜日更新予定です。
新章を機会に、後書きにちょっとした会話を入れてみようと思います。
これからもよろしくお願いします。