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5話

 

「――なぁ樹、お前、人の話聞いてるか?」


「ん、あぁ……なんだっけ?」


「ったく、今日はどっか抜けてんなぁ。寝不足か?」


 昨夜、姉貴とリリィを交えての講習会みたいなものを終えた後、俺はただひたすらにあの始まりの街周辺のモブを狩り続けた。レベリングという作業だ。作業と言ったが……自らの肉体で剣を振るうのだ、楽しくない訳がない。片手剣スキルもある程度は上げたし、スキルスロットも三つから四つに拡張された。次に得るスキルをどうしようか考えたが、決まらなかったので楓に相談しようと思っていたのだ。

 時は昼休み、これから飯を買いに行くところである。


「なぁ、お前もロストエンドやれよ。樹くらいのハマり症があるならすぐに上位ランカーの仲間入り出来るって、今ギルドのハイクラスの人たちが忙しくてログインできなくてさ、素材も回収しにいけないんだよ」


 席を立ち、楓と共に購買部へ向かう。昼休みの廊下は生徒たちで溢れかえっていた。


「あぁ、そのことなんだけど、昨日から始めたよ。ロストエンド」


「……まじ!? もっと早く言え、サポートしてやるからオレのギルドに来いよ。攻略記事を見て自分で調べるよりも、人から聞いた方が早いぞ?」


「まぁ、それはおいおいな。今は一人で楽しみたい。……なぁ、初期の片手剣メインのスキルってどうやって振ればいいんだ、ステータス値もどうやって伸ばせばいいか分からん」


「ん、そうかい。片手剣なぁ、俺はランサーだからちょいと違うかもしれねーけど――」


 もう少しで購買に着くというところで――女子生徒とすれ違った。黒髪ボブカット、そして黒縁のメガネ。小さい身長の割には胸の膨らみもあって……って俺は何を考えているんだ。それよりもスキル振りとステ振りについて、楓の話をしっかり聞いておかないと。MMOという世界において自分のステは全てみたいなものだからな、間違えてはいけない。その女子生徒が、俺を見るなりバッと振り向いたから思わずまじまじと見てしまった。知り合いでも、俺の向こうにいたのだろうかね?


「それで、片手剣の役割はだな――」


 楓の染めた茶髪が風に踊った。楽しげに話すその表情は、俺と同様にこいつもある種のジャンキーなのだと悟らせてくれる。陽は、まだ高い。ロストエンドにログインするまではまだまだ時間がある、早く放課後にならないものか。


 ・・・


 “LEW”内。始まりの街よりも一つ先に、流通の起点ともなっている大きな街があった。大きさは二倍以上あり、露店やらパーティ募集、ギルド募集など、この街で行うのがベターとなっている。理由としては単純で街の大きさもさることながら各地域にアクセスできる転送魔方陣、そして初心者でも立ち入りやすい場所だから、というところだ。ギルドハウスなども販売されており、その一角に――緑一色の装備を着たエルフの少年が居た。


「だーかーら、マジでいたんですって! 複合属性持ちのスキルを、しかも片手剣で撃てる奴が! おれの装備品の防御も貫通してたし、絶対あれは新スキルですって!」


「……エルフィン、そんなスキルを、初心者が持っていると本当に思うか?」


「ぐっ……でも確かにやつは初期服と鉄剣だった。ジードさん、信じてくださいよ!」


「もしもそんなスキルを持った初心者がいれば、是非とも私のギルドに参入してもらいたいものだがな――。そのスキルがあるだけで、グランドクエストを攻略できるかもしれない」


 エルフィンと呼ばれたのはつい先日、樹が倒した相手だった。必死にエルフィンは己の所属するギルドのマスター、ジードに話をするも、余り相手にされていない。ジード呼ばれる男は逆立った燃え上がるような赤髪、そして紅色に煌めく鎧を着こんでいた。その背には細かな装飾の施された両手剣が吊るされており、一目でハイランクのプレイヤーだと分かる。

 苦笑と共にため息を零しながら、ジードをエルフィンをなだめるように告げる。


「――ただ、お前もお前だ。強力な新しい固有技能が欲しいのは分かるが、初心者を手に掛けようとするのは何事だ? プレイヤーがいてこその“LEW”だ。新しい芽を紡ぐような情けない真似は金輪際するな、次に同じ話を聞いたら、お前を脱退処分とする」


「……っ、わかったよ。ギルドの看板に泥を塗るような真似して、悪かった」


「うむ、それでいい。しかし、“無慈悲の刃”とかいう固有技能のせいでここまで騒ぎになるとはね。確かに、ライフゲージが半分以上ある場合で攻撃力に倍率が掛かるというのは魅力的にも思えるが、そんなふざけた修得条件ではな。私たちも、拠点を始まりの街に移した方がいいのかもしれない」


「PKから初心者を保護するためか?」


「ああ。どうせ“朱槍”とかは死にもの狂いでスキル修得を目指してるだろう、並みのプレイヤーでは太刀打ちできないからな、今夜にでも私が退かせよう」


 ジードはそう告げて、回復系のアイテムを補給しに市場へと去っていく。残されたエルフィンは、除隊されなかったことに安堵を覚えつつ、新しい固有技能を諦めるのであった。


tips:《楓》

主人公、樹の腐れ縁。彼もまた樹と同じく、ネトゲの中毒者。メインで扱っている武器は槍、ギルドマスターでもある。お調子者であるが、人情に厚い。“LEW”内での繋がりも広いようだ。

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