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いじめっこですが復讐されそうです  作者: とりのはね
【第二部】 休日(戦い編)
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バカにすんな

「あいつめええええ!」


 ふざけんなと熱り立ったあたしが地団駄を踏み始めるとともに、弟たちがその場に泣き崩れる。


「「「「ふぎゃああああああああぁぁぁぁあああぁぁ!!!」」」」


 室内をとどろかす餓鬼どもの悲痛な叫び声に、あたしは鼓膜がジンジン痛みだしてすぐさま正気に戻った。

 う、うるせぇ……、ハンパなくうるせぇ。

 なっちゃんの悪行はひとまずおいといて、こいつらなんとかしないとご近所から苦情がきそうだ。

 貧困耐性のない西園寺は固まってて役に立ちそうにもないし、しょうがないからあたしが体を張るしかないか。


「ねえ、泣きやんでよ」

「ふぎゃああああああああぁぁぁぁあああぁぁ!!!」

「泣きやまないと叩くよ」

「ふぎゃああああああああぁぁぁぁあああぁぁ!!!」

「泣きやんだらお金あげるかも」

「ふ……いくらいただけますか?」


 ああ、この家はとことん世知辛い。

 もちろん本当にあげる気なんてさらさらないので今は持ち合わせがないと誤魔化して、代わりになるものを与えることにした。

 持っていたトートバッグの中をあさって、駄菓子の袋を取り出す。

 昼飯代わりにするつもりで用意してたんだけど、しゃーないから提供するよ。


「ほらケーキには劣るけど、駄菓子だって捨てたもんじゃないよ。色々あるから好きなの選んで食べよう?」


 あからさまなグレートダウンに始めはしぶっていた弟たちだったが、気にいった菓子があったようでいくらか気持ちを持ち直したようだ。よかったよかった。


「あんたも食べる?」


 いまだに固まっている西園寺に余り物のあめ玉を差し出すと、西園寺はハッと我に返ってそれを受け取った。そして感慨深げにつぶやいた。


「しずかちゃんからゲンコツ以外で貰えたのは初めてだ……家宝にする!」


 えっ、そういうのはやめて。

 なんだかものすごくいたたまれない気分になって早く食べるようにせかしていると、静かになったと思った弟たちが再び騒ぎ始めた。

 ああもう喧しいなぁ。


「今度は何なの!?」

「聞いてください! ジローのやつが狙っていたチョコを勝手に食べたんです!」


 昨日あたしに言い寄ってきた弟が涙目で訴えてきた。

 なんとなく判別がつくようになってきた。こいつが長男のイチローだろう。

 そしてジローと思われる少年は、下のチビ2名からポカポカと叩かれながら「メンゴメンゴ」とへらへら笑っている。絵に描いたような兄弟喧嘩だった。


「もうっ、カンベンしてよ。似たような種類のがまだあるはずだからそれを食べればいいじゃん」

「嫌です! あれは春季限定の味でもう店先には置いてないんですよ!」

「もしかして限定品だからこだわってるの?」

「そうですよ! もう売ってないってだけで欲しくなるじゃないですか!」


 ふーむ。まあ限定品とか希少性の高い品に目を奪われる心理はわからんでもない。

 ――と、そこまで考えてあたしはハッとある可能性に気付いた。

 もしかしたらこれでいけるかもしれない。うん、やってみよう!!


「いいこと考えた!」

「えっ、何をですか!?」


 突然コーフンしだしたあたしをみんなが訝しげに見つめてきたけど、時間が惜しかったので気にせず再びトートバッグの中をまさぐった。

 手に取るは小銭の束。非常時に備えて用意していた、1円玉ときどき10円玉だ。

 それをドアのほうに向けて思い切りぶちまげた。


「なっちゃん、お金落ちたよ!!!」


 大声で長女召喚の呪文を唱えると、しばらくして遠くの方から駆け寄ってくる足音が聞こえてきた。


「拾います!」


 よし来た。

 戻ってきたなっちゃんは先に群がっていた弟たちを即座に蹴散らかす。そして好ポジションを確保したあとにせっせと小銭を拾いはじめた。

 その間あたしはすかさず扉を施錠して、西園寺を誘導しドア前に立たせる。逃げ道を塞いだところで、小銭拾いに夢中になっているなっちゃんの頭をバシッと思い切りはたいた。


「こらケーキドロボーめ、あたしだって食べたかったんだぞ。味はどうだった!?」

「痛いですよ、何をわかりきったことを。絶品だったに決まってるじゃないですかっ! いっときますけどもう残ってないですからねっっ!」 


 なっちゃんが頭を押さえながらこちらを鋭く睨んできた。しかし、口元にクリームがべっとりと着いているので迫力が台無しだ。

 そのこっけいな顔に免じてケーキへの追及はいったん棚上げしてあげよう。

 あたしは逸る気持ちを抑えて、先ほど思いついたアイディアを口にした。


「そんなことよりなっちゃん、ドロボーを捕まえる方法を思いついたよ!」

「え……わたしもう捕まりましたけど?」

「違うよ制服ドロボーのことだよ。今まではレア感が足りなかったんだよ!」


 そうだ。よく考えたらパンツなんてどこにでも干してある。撒き餌にするならもっとマニア心をくすぐる希少性の高い物を選ぶべきだった。

 あたしはコブシを握り締めながら話を続けた。


「セーラー服ときたら――、次はスクール水着だよなっちゃん。スクール水着を干そう!!!」


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