§能力者§
世界には特別な能力を持った人間が多々いる。
私自身も能力者である。そして能力者は、能力者と出会う確立が高い。まるで、誰かに操られているかのように。
私の能力は、本の透視だ。本の表紙を見ただけで、中身がわかり全て理解してしまう。
この能力があれば、速読などまるで亀の歩み。遅い、遅すぎるぜ、ベイビー。
すぐに、本の内容が頭に入るから私は、ほとんどの本を読み尽くしたと言っても過言ではないだろう。
しかーーし! いいことばかりではない。時折目に入る、グロの本やエロな本の表紙に心がぐわんぐわん揺さぶられる。グロの本を見たときは、2、3日食事は摂れないし、エロ本の時は他の事に集中できない。
まあ、私の話は置いといて、つい先日、能力者を発見した。
クラスの転入生の、[真木 重三]だ。教室に扉を開けて入ってきた時、彼は舌なめずりをして入って来た。
坊主頭で、目は据わっていて、クラスを見回すその目はまるで、大蛇だ。
彼は私の席の後ろに座った。ちっきしょー。最悪だ。
何事もなく初めの何日かは過ぎて行った。
しかし、ある日突然声が脳内に響き渡った。
「パパイヤ、マンゴー」
!?何だ? 何の声だ? 私は訳がわからなかった。
初めはこの声だけだった。だが、日に日に悪化して行った。
「パパイヤ、マンゴー、パイナップル、パイ、夏、プルプル」
!?私は悟った。これは悪意ある誰かからの攻撃だ。しかも周りの人には聞こえていないらしい。
つまり……。誰かの能力だ。人の脳内に自分の声を響かせる送信能力。これは、厄介極まりない。
すぐに誰の能力か検討はついた。真木が来てから、声が聞こえるようになったからだ。
私は真木に問いただしたが、真木は「しらないぴょーん」と言うだけだ。
くそー、どうすればいいんだ。
国語の授業中に美人教師に質問された時は、頭の中に「クレオパトラ、小野小町、楊貴妃」と聞こえてきて、先生に向かって「クレオパトラ先生」と言ってしまったし、テストの最中には「ぺろりんちょ、ぺろりんちょ」と訳のわからない、声が聞こえてきて試験に集中できなかった。
しかし、また新たな能力者が現れ、問題は解決した。その能力者は能力者の能力を入れ替えられるなんとも都合の良い能力者だった。その能力者はあの国語の美人教師だった。先生は、すぐに私と真木の能力を入れ替えてくれた。それから、私は真木に毎日毎日仕返しした。真木の頭に、意味不明な言葉を送信し、学校にグロの本を持って来て、真木にこっそり見せた。
私は、美人教師に感謝し、彼女の頭に愛の言葉を毎日毎日送信した。
そして、私は18になり、彼女と結婚した。