えろトラップダンジョンにえろを求めるのは間違っているだろうか
『ブラァ!』
うぉ……数百のブラジャーが一斉に向かってくるの、普通に怖いな。
「って、きらら?!任せて~!【アイアンウィル】」
「流れ的に、俺に来るのかと思ったな。ほら、ライバル見たいな視線合わせたじゃん!」
俺が数百のブラジャーの攻撃に耐えられるわけがない。きららなら何とかなるだろう。だから、この流れ自体は悪くない。
「妙ねェ……嫌な予感がするわ。京ちゃん、ヒール準備」
「きゃー!」
「きらら!くそっ、ブラに囲まれてヒールが届かねぇ!」
「【ウィンドブラスト】大丈夫?」
「見えた!【ヒール】」
風でブラジャーの一部が吹き飛ばされ、きららを目視できたおかげでヒールが通った。だが――きらら、お前その格好は……。
「う、うぅ……見ないで。こんなボロボロにされたきららを見ないで……あ、でも、少しずつ服を剝かれていく感覚もいい……!」
アリのようにブラジャーにたかられたきららは鎧を全て剝れ……
インナーもまたボロボロで服としての定義をなしていない……
だが、あの混戦でつけられたであろうブラジャーを付けている。
正直言うとどスケベになっていた。そして、そのインナーも現在他のブラジャーに食べられている。まるでわざと一部残して扇情的な姿にしたかのように、見せつけるかのように。
くそ……情けない。スライムに服を溶かされた時もそうだった。きららの見た目があまりにも可愛すぎて、どうしても目が離せない。男だと分かっているのに、それでもだ。――いや、ダメだ。今は戦闘に集中しろ。
幸い、インナーの下に見える素肌に傷はない。きらら本人にダメージがないのは僥倖だ。
だが、この攻撃は明らかに装備破壊を目的としている。この先、装備を剥がしたうえで何をしてくるのか……それが分からないのが一番まずい。
『ピー……ブラジャジャジャ……エフエムエラー。ハンベツフノウ……フノウフノウ……ソクテイ……ゼロ……ブラァァァァァァ!!』
「くそ、なんで急に発狂しやがる!」
「気を付けて!ブラジャーも飛んでくるわよ、きららちゃん!」
「ハァハァ……【マウント】……あえ?ハァハァ……らめ、効かない……」
突然の発狂。エフエムエラー。測定ゼロ。ブラジャーのヘイト傾向……なるほど。
ブラジャイアントは、きららを“女性”だと判別していた。だが、実際は違った。そのズレに気付いてキレた、というわけか。
……親友になれたかもしれない、という考えは撤回しよう。ダメだこいつ。何も分かっていない。
でも、高説垂れる余裕はない。キレたブラジャイアントはきららに襲い掛かり、ブラファンネルは俺たちに襲い掛かってくる。つまりはまじやばい。
「くそ、数が多い!剣でちまちま倒してるだけじゃ、捌ききれない!」
「【ウィンドカッター】……僕もダメだ。玄宗さんは?!」
玄宗さんなら、何か手があるはずだ。そう思った、その時――俺は見た。
「だめよォ、玄宗。冷静に……冷静になるのよォ。私は大丈夫、だから先に京ちゃんを!」
全裸にされ、局部をいきり起たせ、ブラジャーを着けたままのあられもない姿。それでも堂々と指示を飛ばす。
玄宗さんはバッファーだ。真っ先に剥がされるのも必然だった。言われるまでもなく、京と合流すべきだった。
そして――俺は見た。
「くそっ……くっ、殺せ!」
ブラジャーに集られ、全裸に剝がされ、屈辱に顔を歪めながらも威風堂々と戦う京を。
確かな胸の膨らみ。あるものがない身体。
「きょ、京……?もしかして……」
「女の子だったんだね」
……今まで、服を溶かすスライムやトラップは何度もあった。でも京だけは、その身のこなしで回避していた。だから気付かなかった、その服の下に隠れていたものを。
くそっ、自分の服が現在進行形で消失しているはずなのに、意識がまるでそっちに行かない。
「てめぇら!細けぇことは後だ!今は現状を乗り越えることだけ考えろ!」
「いや、でも……」
「まさか僕が見切れないなんて……先入観、思い込み……いや、僕のエロ力が足りなかった」
今までの“京”との出来事が、脳裏をよぎって離れない。というか――これ、状況的にとんでもなくないか?
全裸の女の子に、ほぼ全裸の俺たち。
「んぐぅ……ねぇ、流石にきらら、限界……かも」
「ちっ、ちょっと待ってろ!」
京がきららのもとへ駆け出す。
「【ヒール】!」
そうだ。今は戦闘中だ。細かいことは後回し。
全員の服を剥がしたからか、ブラジャーの群れは一時的に傍観している。その一方で、きららは細い身体を晒しながら、身の丈に合わぬ盾でブラジャイアントの攻撃を受け止めている。鎧がない分、消耗は激しい。
「ごめん……もう、無理」
きらら、一時離脱。俺がタンクをやるしかない――。
「【ヒール】きらら、よく頑張った。あとは俺に任せやがれ」
「いや、盾持ちの俺の方が。それに……京は全裸だ。掠っただけでも――」
「んなこと言ったらお前も同じだ。お前の機動力じゃ半端なんだよ。それに、すぐ直せる俺の方がいい。お前は一秒でも早く、こいつを倒すことだけ考えろ」
「【プロテクト】……全身全霊のバフをかけたわァ。でも分かってるわねェ?直撃は耐えられないわよ」
「上等!かかってこいやぁ!」
京がリスクを背負うなら、俺はその時間を一秒でも縮めるために攻撃を重ねるべきだ。
だが――集中できない。目の前に、生乳がある。避けた拍子に揺れるそれを、無意識に目で追ってしまう。
……くそ、意外と大きい。
駄目だ。一度、玄宗さんを見て冷静になろう。
――その時、発狂していたブラジャイアントが、なぜか落ち着きを見せた。
いや、何故かとは言ったが俺にはその原因がわかる、男だから。
『ブラジャジャジャ?……ピー……サイソクテイヲカイシシマス』
「うぉ!」
再び京がブラジャーに囲まれ、散っていく。
そして、俺の目に映ったのは、黒でスケスケタイプのブラジャーを付けた京だった。
『ソクテイ……カンリョウ……ハンエイ……』
「なっ?!ブラが……っ!」
京の着けていた黒いブラジャーが巨大化し、谷間に京を挟んだまま、ブラジャイアントのもとへ飛んでいく。
「【ファイヤーバースト】!京!!だめだ、ウィンドにしておけば!」
「京ちゃん!莉奈人ちゃんブラジャーに総攻撃!」
「だめだ、もう届かない!」
飛んでいったブラジャーは、ブラジャイアントの“胸部”と思しき場所に装着された。
『ハンエイ……カンリョウ。ブラ!ブラブラ!【ヒール】』
「なっ?!回復だと!?ボスがやっちゃいけない行動ランキング一位を!」
「京の能力コピー……みんな、これやばい」
「分かってるわァ……でも、解決策が……ない」
「てめぇら!俺はいい!早く逃げろ!このダンジョンじゃ、死なねぇ!」
「でも……きらら、仲間を見捨てられない!」
「そうだ。全滅するなら、皆でだ」
「そうねェ……気張っていくわよ!」
だが――気張ったところで、どうにもならない。
防具はなく、ヒールもない。きららは消耗しきっている。
極めつけに、ブラジャイアントは京の戦闘センスまでコピーしていた。力任せだった動きに、フェイントと戦術が加わる。
……勝てるわけがなかった。
俺たちは、全滅した。
そして幾星霜。正確には、えろトラップダンジョンでのお仕置きが終わり、全員が揃った酒場で、反省会がてらにあの日を振り返っていた。
「まぁ、こんなところだよね」
「そうねェ……正直、この先は思い出したくもないわァ」
「それにしても、京が女の子だったのは驚いたよねぇ。きららも全然気付かなかった」
「隠してたわけじゃねぇ。戦うために潜ってたし、色々めんどくさいだろ?」
「まぁ、そうよねェ」
……おい、なんで俺を見る。
「確かに、女性だと分かってたら、ちょっと気まずかったかもな」
「だろ?だから勘違いしてくれてる分には良かった。でも、隠してたのは事実だ。悪かった」
「いいのよン」
むしろ、俺的にはいいことづくめだったし。
「でも、全員戻ってこられてよかったよ。僕は何されても平気だったけど」
「きらら的には、あそこまでハードなのはNGかな。あ、でも莉奈人くんは別♡」
「え?!いや、俺はそっちの趣味は……普通の女の子が……ねぇ、京」
「僕は莉奈人ときらら、お似合いだと思うよ?二人で潜ってきなよ。僕は京と行くから」
「いや、俺は……」
「はぁ、京ちゃん、もっとガツンと言いなさいよォ」
「京!俺とダンジョンに!」
「いいや、僕とだね」
「あ、じゃあ、きららと莉奈人で行こ!」
「俺は別に……」
「うふふ。まぁ、これでよかったのかもねェ。莉奈人ちゃん、私とダンジョン行く約束、してたでしょ?」
「いや……まぁ、うん」
「「「え?!」」」
これは――俺、莉奈人が主人公のラブコメが始まるまでの物語である。
これにて本作品は最終回となります。
ここまで付き合ってくださった方ありがとうございます!
いつかこの続きもエピローグのような形で書くことが出来ればと思いますので、モチベ向上のため感想等頂けると嬉しいです(*- -)(*_ _)




