えろトラップダンジョンに冒険を求めるのは間違っているだろうか
全9話毎日更新になりますので、隙間時間に是非最後まで読んでみてください。
『ダンジョン』
100年ほど前、突如として秋葉原に巨大な大穴が出現した。
調査に入った国の発表によると、内部にはスライムなど、現代の科学体系では説明のつかない生物が生息しているという。さらに、それらの生物を倒すと生物は消滅し、代わりに何かしらの物体――いわゆるドロップが出現すること、そしてスキルやステータスといった概念が存在することも公表された。
「リアルファンタジーの到来か?!」
世界中で話題になったダンジョンだったが、その熱はすぐに冷めることとなる。
そう、そのダンジョンは――えろトラップダンジョンだったのだ。
一時は世界を揺るがすほどの衝撃だったにもかかわらず、現代においては学校ですらその存在を教えてくれない。テレビで扱われることなど、もってのほかだ。
僕が初めてその存在を知ったのは、小学生の頃だった。
友達に「なぁ、えろトラップダンジョンって知ってるか?」と言われたのがきっかけだ。
家に帰ってから母に「えろトラップダンジョンって何?」と聞いてみたが、「まだ早いわよ」とはぐらかされるばかりで、何も教えてもらえなかった。
仕方なく、僕はその友達に教えを請い、一緒にETUBEを見ることになった。
そのときの記憶は、20歳になった今でも覚えている。
地下にある太陽。
遺跡然とした建物。
剣を手に戦うお姉さんたちの姿。
そして20歳。
ダンジョン探索ができる年齢になった瞬間、僕、陸奥莉奈人は――えろ本ハンターになることを決めた。
……あとは、みんなも知っての通りだ。
(姫)騎士でタンクの男の娘比鍾叙万斉。
戦闘狂ヒーラー・せんとう千灯京。
イケメンナンパ野郎の魔法使い只野江口。
オネェバッファー・河飯玄宗。
そして僕。
この5人でパーティを組んで1ヶ月。
現在に至る。
「まぁ、俺がハンターになると決めた理由は、そんなところかな。だから、俺は別に江口みたいに、そういうえろが目的でなったわけじゃないし?」
「え? 違うの? 僕たち、パーティを組んだ日に誓ったじゃん。
5Pするんだ! って!」
「違う! 俺はラノベ世界みたいに、純粋に冒険を楽しみたくて……」
敵はスライム、ローパー、ゴブリン。
ドロップはローションにエログッズ、エロ本。
それでも――。
スキルを得て、ポイントを割り振り、戦えるなら。
それが例ええろトラップダンジョンであっても、男だらけのパーティであっても……いい。
「いや、ぜってぇお姉さんがすべてだろうが」
「ごほん。そういう京は、どうしてエロ本ハンターになったの?」
「あ? んなもん決まってんだろ。戦うためよ」
「だよねぇ」
ヒーラーのくせに、前線でアタッカーみたいに殴ってるんだもんな。
「ねぇねぇ、さっき心の中できららのこと、名前で呼んでたでしょ~?僕、言ったよね? そんな変な名前じゃなくて、きららちゃんって呼んでって?」
「なんでバレたの!?ほら、その手に持ってる赤いロウソク下ろそ?い、いや……今は導入パートだし、細かく説明した方がいいかなぁって……」
「も~、それならしょうがないな~。今回だけだ、ぞ? ぞ?」
……圧がすごい。
きららね、きらら。
比鍾叙万斉もかっこいい名前だと思うんだけどな。
和風で……確かに、かわいい名前ではないけどさ。
「ほーら、雑談はそこまでよォ?1時方向、プルプル! 雷攻撃に注意!江口ちゃんは火魔法の準備、お願いねェ?」
全長はだいたい3メートルほど。
ヤツメウナギを思わせる、口なのか頭なのかわからない部位を左右に振りながら、白い身体に付着したぬめぬめの体液を撒き散らし、こちらへと走ってくる。
「ほぉ、プルプルか。ひっひっひ……いいねぇ。いいサンドバッグになりそうだ」
「さ、サンドバッグ……ハァハァ。【マウント】みーんな、きららにむ・ちゅ・う!」
「よっしゃ! 殴る! 殴る! 殴る!……あ? あんまダメージ入ってねぇな。だが、殴ってりゃいつかは倒せらぁ!」
きららがヘイトを稼いでいる間に、尻尾の振り払いに巻き込まれないよう注意しながら斬る。
だが、もちろんプルプルも、やられてばかりではない。
「プルプルは物理耐性、全般高めッ!電撃、来るわよォ!」
「ハァ、ハァ……ピリッとして……さいっこ……あばばばばっ」
「莉奈人ちゃん!」
「分かってる!【マウント】!きらら、電撃麻痺があるの知ってるでしょ?ちょっとは避けてもらわないと。ほら、京も殴ってないで、麻痺治してあげて!」
きららが麻痺してはいるものの、いつもの流れだ。
中層とはいえ、プルプルはサブタンクがいれば安定する。相性もいいし、あとはこのまま少しずつ削っていけば――。
「みんな、散開よォ! 江口ちゃん!」
「お待たせ……プルプル先輩、すまない。いつもお世話になっております。【ファイヤーボール】!!」
散開する4人と、きららを追いかけるプルプル。
そこへ、洞窟の天井すれすれを飛ぶファイヤーボールがゆっくりと迫り――直撃。
体内に蓄えたエネルギーを放出するかのようなまぶしい光とともに、プルプルの身体は霧散した。
「よし、ナイスコントロール。……ドロップ、出た?」
「サイズ特大の、ただのオナホねェ。需要は低いし、あんまり高く売れそうにないわねェ」
特大サイズ……。
これ、プルプルの頭じゃん。そんなドロップもあるのか。
このサイズじゃ誰も使えないな。
電気系の道具だったら当たりだったんだけど……仕方ない。
「ま、気ぃ取り直して次行こうぜ。あと、ボス部屋までどんくらいあるんだ?」
「そうねェ……どうかしら?」
「だいたい半分くらいじゃない?中層の情報、もう少し出てほしいんだけどね。こう、どびゅっと……」
「そればっかりはしょうがないって。中層まで潜ってる、文字通りの変態なんてごく一部だろ?」
「あれ~?その理論で行くと、きららたちも変態さんってことになっちゃうよ~?」
「ちげぇねぇだろ。特にてめぇな?」
それな。敵の攻撃を受けて喜ぶドMで女装趣味。しかも、そんな自分に興奮してるんだからな。
大抵の人は、日帰りで帰れる上層だけを回っている。
大変な目に遭うこともなく、ねちょねちょした液体や、キノコみたいな形の道具を拾って売り、適当に金を稼ぐだけだ。
中層、ましてや下層に挑もうとしている俺たちが、変態側の人間であることは間違いない。
いくらこのえろトラップダンジョンで死んでも、現実で本当に死ぬことはないとはいえ――そう、とはいえだ。
言っていなかったかもしれないが、このダンジョンでは人は死なない。大事なことだって? 今、言っただろ。
どうして死なないのか。理由は単純だ。えろトラップダンジョンで、人が死ぬところなんて見たくないからだろう。このダンジョンを作った人間も、きっとそう思ったはずだ。
……まあ、めちゃくちゃひどい目には遭わされるらしいが。人によっては「死ぬ方がマシ」と言うくらいには。
それでも、実際に死なないという事実はありがたい。
死なないということは、つまり即死するような攻撃は存在しないということだから。
だからこそ、多少の緊張感を保ちつつも、どこか気の抜けた雑談を交わしながら、俺たちはダンジョンを進んでいく。
おすすめのプルプル本があれば教えてください




