ハーフ&ハーフ
「う〜ん、じゃあこの豚肉としめじの炊き込みご飯とたけのこの炊き込みご飯のハーフアンドハーフにしてみるのはどうかな?」
わたしは、メニュー表にある半分が豚肉としめじの炊き込みご飯、もう半分がたけのこの炊き込みご飯の写真を指差し言った。
「あら、それは嬉しいわね。両方食べたいものね」
おばあちゃんは嬉しそうに笑う 。
「じゃあ、おばあちゃん炊き込みご飯のハーフアンドハーフね。飲み物とサラダも付くよ」
「わっ、嬉しいわ。では、飲み物は紅茶にしようかしら」
「うん、では、『豚肉としめじの炊き込みご飯とたけのこの炊き込みご飯のハーフアンドハーフ』にサラダと紅茶ね」
わたしは笑みを浮かべながら言った。
「ではちょっと待っていてね」
「はい、待っているわよ」
「高男さ~ん、『豚肉としめじの炊き込みご飯とたけのこの炊き込みご飯ハーフアンドハーフセット』サラダ付き、飲み物は紅茶をお願いします」とわたしは厨房で料理の仕込みをしている高男さんに声をかけた。
「おっ、『豚肉としめじの炊き込みご飯とたけのこの炊き込みご飯ハーフアンドハーフセット』ですね。飲み物は紅茶。なるほど」
高男さんは仕込みをしている手を止めニヤリと笑った。なんだか妖しげな表情だ。
「真歌さん、豚肉としめじの炊き込みご飯とたけのこの炊き込みご飯今、出来上がったところですよ。グットタイミングですね」
「え? 今、出来上がったんですか?」
「はい、出来上がりました。それとアボカドサラダも今作っているところですよ。あ、ミケちゃんゆで卵食べるなよ」
「ん? にゃん」
「にゃんじゃないだろう」
ミケに視線を向けると手掴みで大きな口を開けゆで卵を頬張っていた。
「だって、ゆで卵美味しそうだったんだもんにゃん」
「はいはい、では、盛り付けるよ。ミケちゃんサラダ皿を棚から出して。ムササビは炊き込みご飯をたっぷり盛り付けられるお椀を出して、真歌さんはムササビが出したお椀に炊き込みご飯を盛り付けてください」
高男さんはわたし達にテキパキと指示を出す。
「は~い、了解」
「はい、了解しました」
「了解だにゃん」
わたし達は元気よく返事をした。
「あの~すみません」
わたしがムササビからお椀を受け取ったその時、真昼さんの声が聞こえてきた。
振り返ると真昼さんが高男さんを見上げ尋ねている。
「わたしは何をしたら良いのでしょうか?」
「あ、すみません。真昼さんのことすっかり忘れていました」
「え! それって酷いではないですか」
「あはは、申し訳ありません。では、真歌さんのお手伝いをよろしくお願いします」
「え~!!」とわたしは声を上げてしまう。
「真歌さんは真昼さんの指導係りですよね」
「……そうでしたね」
「では、お願いしますね」
高男さんはそう言ったかと思うと自身の作業に戻り包丁でアボカドを切る。
「真歌さんよろしくお願いします」
「あ、はい、こちらこそよろしくお願いします。えーっとでは、このお椀に豚肉としめじの炊き込みご飯とたけのこの炊き込みご飯をハーフアンドハーフに盛り付けてもらえますか? すみません」
ハーフアンドハーフになんてわたしは綺麗に盛り付ける自信がない。それを真昼さんに押し付けているみたいで悪いなと思いながら真昼さんにお椀を差し出した。
「はい、了解しました」
真昼さんは笑顔でわたしからお椀を受け取る。
そして、炊飯器の蓋を開けしゃもじで先ずは豚肉としめじの炊き込みご飯を盛り付けそれから、もう一つの炊飯器を開け鮮やかな手つきでたけのこの炊き込みご飯を盛り付ける。
「うわぁ~凄い! 見事にハーフアンドハーフな盛り付けになっていますね」
真昼さんは魔法を使ったのかと思うほど綺麗に右半分が豚肉としめじの炊き込みご飯、左半分がたけのこの炊き込みご飯になっていた。
きっと、わたしが盛り付けるとぐちゃぐちゃになっていただろうな。
お客さんがわたしのおばあちゃんだから笑って許されるとは思うけれど、なんだかな……。
「なんとかハーフアンドハーフになりました」
真昼さんは満面の笑みを浮かべている。
「素晴らしいですね」




