真昼さんとお仕事
「真昼ちゃん、これが冷蔵庫だにゃん。このカフェで調理される食材がた~んまり入っているにゃん」
ミケは得意げな笑みを浮かべ業務用冷蔵庫を指差す。
「へぇ~そうなのね」
「うん、この中にお魚もお野菜もそれから牛乳やジュースに納豆とか何でも入っているんだにゃん。わたしのお腹を満たしてくれる魔法みたいな箱だにゃん」
「おい、ミケちゃん、真昼さんの担当は真歌さんって言ったよね。それと、この冷蔵庫はお客さんのお腹を満たす為のものだよ」
高男さんはふぅーと溜め息をつき、腰に手を当て得意満面な表情を浮かべているミケを見る。
「ん? そうだったかにゃん」
「そうだよ。で、ミケちゃんはここに立ってお皿でも洗うんだよ」
高男さんはそう言いながらミケに水を通さない素材のエプロンを頭からすっぽり被せる。
「わっ、高男さんってば何をするのだにゃん」
ミケはジタバタ暴れ文句を言う。
「もうミケちゃんってば困った子だね」
真昼さんは困ったように微笑みを浮かべそれから、わたし達三人の顔を順番に見て「ウチのミケちゃんがご迷惑をおかけしています」と言って頭を下げた。
わたし達は「いえいえ」と返事をしミケは渋々洗い物を始めた。
わたしと真昼さんは外に出て掃き掃除をすることにした。高尾山の空は青が濃くてとても綺麗だった。
「はい、箒をどうぞ~」
わたしが箒を差し出すと真昼さんはまだあどけなさの残る顔をこちらに向けにっこりと微笑みを浮かべ「ありがとうございます」と言って受け取った。
その表情はとても可愛らしくて真昼さんがおばあちゃんだということを忘れてしまいそうになる。
「高尾山の空気は澄んでいて美味しいですね」
真昼さんは箒で落ち葉を掃きながら鼻からすぅーと空気を吸い込み口から吐いた。
「はい、山の空気って本当に美味しくて元気をもらえるって感じですよね」
わたしも真昼さんと同じように鼻から澄んだ空気を吸い込み口から吐き出した。すると、身も心もみるみるうちに元気になる。
自然の空気に癒される。気づくと笑顔になっていた。
わたしと真昼さんはしばらくの間黙って庭の落ち葉を掃いた。
「やっぱりミケちゃんがご迷惑をかけていますよね?」
真昼さんがこちらに振り向き申し訳なさそうに眉間に皺を寄せて言った。
「そんなことないですよ。ミケちゃんは食いしん坊ですけど元気をもらっていますよ」
「そうですか。だったら良かった」
真昼さんがほっとした表情でにっこり笑った。その時。




