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君に会えて良かった


 照れているミケの頭を撫でながらおばあちゃんは、わたし達の方に顔を向け、「美味しい料理を作って頂きありがとうございます」と言った。


「いえいえお口に合って良かったです」


高男さんが代表して答えた。


「美味しかったしそれにミケちゃんと再会ができました」


おばあちゃんはニコッと笑いそれからミケの顔を見て「ねっ、ミケちゃん」と言いそして、「ミケちゃんのことを思い出したわよ」と言いながら頬を緩める。


君に会えたら嬉しいなセットにもの凄い力があったのかそれともおばあちゃんとミケの強い想いがこのムササビカフェ食堂へと導いたのだろうか。


その両方のように感じる。


高男さんの人の思いを読む力とそれからミケが目覚めたことや、おばあちゃんがここを偶然見つけたことなど人の思いや出来事などが絡み合った結果みんなでこのテーブルを囲むことに繋がったのかな。


そんなことを考えながらわたしはミケとおばあちゃんを微笑ましくそして、ちょっと不思議な気持ちで眺めた。



その時。


ムササビが「おばあちゃんはどうして大切なミケちゃんを手放したんですか」と尋ねた。


これは、わたしも感じていたことだ。


「え! あ、それは……」


おばあちゃんは振り向きムササビを見る。そんなおばあちゃんをムササビはじっと見ている。わたしや高男さんも視線をおばあちゃんに向ける。ミケの瞳もおばあちゃんを見ている。


「手放したわけじゃないのよ」

「ミケちゃんをこんなに大切にしていたんですもんね」

「そうよ、ミケちゃんは娘に譲ったのよ」


おばあちゃんはそう答えわたし達の顔を順番に見てそれから視線をミケに戻し愛おしそうに眺めた。


そうだよね。おばあちゃんのミケを見る目や言葉を聞いていると手放したなんてとても考えられない。でも、どうしてミケはこのムササビカフェ食堂の棚に飾られていたのかな? と疑問は残るけれど……。


高男さんも知らないらしいしな。


おばあちゃんの娘さんがミケを手放したのだろうか。ミケは娘さんのことは忘れたのかな?



「おばあちゃんの娘さんに?」


わたしとムササビがほぼ同時に言った。


「はい、そうなんですよ。わたしが大切にしていたミケちゃんだから気に入ってくれるかなと思ってね」


「そうだったんですね」


なるほどねとわたしとムササビにそれから高男さんが大きく頷く。一方ミケは、


「真昼ちゃんの娘さん? 誰だったかにゃん?」首を横に傾げ考えを巡らせているようだ。


「う~ん、ちょっと思い出せないにゃん。でも、ふわふわとあたたかい空気がこの胸にぽわんと漂っているような気がするにゃん」


ミケは肉球のある可愛らしい手を胸にそっと当てる。


「ミケちゃんはとっても大切にされていたはずなんだけどね」


おばあちゃんは切なげな微笑みを浮かべた。


「わたしのことを大切に……にゃん?」

「そうよ、あの子ミケちゃんをいつも持ち歩いたり寝る時はミケちゃんを抱きしめていたわよ」


おばあちゃんはうふふと笑い目を細める。


「わたしのことを大切にしてくれていたんだね。嬉しいにゃん。なんかぽわぽわが増してきたにゃん。でも、思い出せないにゃん……」


ミケはの表情は嬉しさと悲しさが混ざりあったようになっている。



「ミケちゃん、慌てずゆっくり思い出していいのよ」


喜びと悲しみが混ざりあった表情をうかべ肉球のある可愛らしい手を胸に当てているミケにおばあちゃんは包み込むような声で言った。


「ゆっくりにゃん」

「そうよ、ミケちゃんゆっくりね」

「わかったにゃん」

「うふふ、ミケちゃんはやっぱり可愛らしいわね」


おばあちゃんはミケの頭を優しく撫でた。ちょっと巨大化した人間サイズのミケが撫でられているその姿がなんだか可笑しくてそしてほっこりした。


「ミケちゃん娘さんのことも思い出すといいですね」


わたしは高男さんとムササビに視線を向け言った。


「そうですね。きっと、思い出せるはずですよ」


「そうだよ、ミケちゃんも高男さんの料理を食べたんだもんね」


ムササビは空っぽになったお皿とミケを見てニヒヒと笑った。


やはり高男さんの料理には何かパワーがあるのだろう。チラッと高男さんに目を向けると涼しげな微笑みを浮かべていた。

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