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ミケと真昼さん


 高男さんやムササビに目を向けると、わたしと同じように頬を緩めほっこり顔でじっとミケとおばあちゃんを眺めていた。


「なんかほっこりしますね」


わたしと目が合った高男さんが言った。


「はい、見ているとなんとも言えない温かくてほっこりした気持ちになりますね」


今もミケの頭を愛おしそうに撫でているおばあちゃんと、そして幸せそうに撫でられているミケに目を向けわたしは返事をした。


「わたしも仲間入りしたいくらいだよ~」


ムササビはミケとおばあちゃんに優しい目差しを向けている。


「ミケちゃん思い出してくれたのね」


「うん、思い出したにゃん。真昼ちゃんはぬいぐるみのわたしを可愛がってくれたにゃんね」


「ミケちゃんをぎゅっとすると安心できたのよ。それに笑いたい時も悲しくて泣きたい時もいつもミケちゃんに聞いてもらっていたのよ。ありがとうね」


おばあちゃんはうふふと笑いミケをもう一度撫でた。


「こちらこそだにゃん」


ミケはにゃぱーと笑う。


きっと、ミケとおばあちゃんはずっと、一緒に過ごしてきたのだろう。わたしもぬいぐるみが好きだからおばあちゃんの気持ちもわかる。


そこまで考えたところで、でもどうしてミケはこのムササビカフェ食堂の棚の上に飾られていたのかな? とふと思った。


「真昼ちゃんまだ、ご飯が残っているから食べながら話をしようにゃん」


小さな三毛猫のぬいぐるみのミケはそう言ったかと思うといつの間にか巨大な三毛猫のぬいぐるみの姿になっていて椅子に座っているではないか。


信じられない早業だ。


「あら、ミケちゃんってば巨大な三毛猫さんのぬいぐるみになったのね」


おばあちゃんは目を丸くしびっくりしている。


「にゃはは、やっぱりご飯は小さい体だと食べにくいからにゃん」


そう答えたミケは得意げに胸を張った。


「では、みなさん食事を再開しましょうか」


高男さんがみんなの顔を見回し言った。


わたし達は頷き「いただきます」と手を合わせる。


カレーライスも海鮮巻き寿司も本当に美味しくて、わたしまで君に会えて良かったと感じた。


そう、このムササビカフェ食堂でここにいるみんなと奇跡的に出会えて良かったなと心から思った。


ムササビに高男さん。それからミケ。そして、このムササビカフェ食堂に来店してくれたおばあちゃんに様々なお客様。


みんなの笑顔に出会えてわたしは幸せだ。



脂ののったとろとろなサーモン入りの海鮮巻き寿司に、素朴ではあるけれど母の味を思い出すカレーライスをみんなで食べた。


うん、大満足だ。仕事中だということを忘れてしまいそうだ。


ミケもおばあちゃんも笑顔だ。もちろんムササビと高男さんも。美味しい料理とみんなの溢れる笑顔に癒され、


「ごちそうさまでした~」と完食した。


「美味しかったにゃんね」


とびっきりの笑顔を浮かべるミケの口の周りにべったりカレールウとご飯粒がくっついている。


「あらあらミケちゃんお口の周りが汚れているわよ」


おばあちゃんはクスクスと笑い手元にあるおしぼりを手に取りミケの口の周りを拭く。


「あ、真昼ちゃんありがとうにゃん」


三毛猫のぬいぐるみ姿のミケはちょっと照れた様子で頬を赤らめている。ぬいぐるみなのに表情豊かでもう可愛らしくてたまらない。


「うふふ、遠い昔を思い出すわね」


おばあちゃんはミケの口の周りをおしぼりで拭きながらどこか遠くを見つめている。


「遠い昔にゃん?」

「そうよ、ずっと、ず~と遠い昔よ」


おばあちゃんの心は今、ミケと出会った頃にいるのかもしれない。そんな表情と声なのだ。


「そうにゃんだね。遠い~遠い~昔にゃんね」


ミケもまたおばあちゃんに出会った頃を思い出しているようだ。このおばあちゃんとミケの過去にはどんなことがあったのだろう? わたしはそれが気になる。


若き日のおばあちゃんとちょっとレトロな姿になる前のミケを想像してみる。


三毛猫のぬいぐるみのミケをじっと見つめている少女時代のおばあちゃん。


ミケにその日あった嬉しいことや悲しい出来事を話すおばあちゃん、声を発することはないけれど、ミケは黙っておばあちゃんの話を聞いている。


わたしは、そんな想像をしてみた。


その頃のミケに感情はあったのか定かではないけれど……。


きっと、おばあちゃんがずっと、ずっとミケに話しかけていたから今、ミケはおばあちゃんが大切にしていたぬいぐるみにつくも神として宿っているのかな?


わたしは、ミケとおばあちゃんに目を向ける。ミケとおばあちゃんは見つめ合っていた。



そんなおばあちゃんとミケを見ていると胸に温かいものが込み上げる。


「また、会えて嬉しいわ」

「わたしもだにゃん」


おばあちゃんの笑顔が少女時代の真昼ちゃんと重なって見えた。


わたしは、おばあちゃんのことなんて知らないのになぜだか真昼ちゃんが笑っている光景が目に浮かぶ。


そして、同時にまだ真新しいミケの姿もだ。


「ずっと、ミケちゃんのことが気になっていたのよ」


「わたしは、真昼ちゃんとまた、会いたいな、どうしているのかなと思っていたにゃん」


おばあちゃんはミケの口の周りを拭き終えたおしぼりをテーブルに置き巨大化しているミケの頭を撫でた。


そして、「ミケちゃんは大きなぬいぐるみになっても可愛らしいわね」と言って微笑みを浮かべた。


「にゃはは、やっぱり可愛いかな」


なんて答えミケはにゃぱにゃぱ笑う。


「うふふ、ミケちゃんはどんな姿でも可愛らしいわよ~それとお口の周りを汚してもね」


「にゃはは、それは照れるな~」


ミケは頬を赤く染め笑った。可愛らしいぬいぐるみさんだよ。

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