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それはミケのこと


 おばあちゃんとミケはお互いの顔をじっと見ている。わたしはそんな二人のことがとても気になった。


「おばあちゃん、その君って誰のことですかにゃん?」


ミケが先に口を開き尋ねた。


「その君が誰なのかさっきまでわからなかったけどミケちゃんあなたのことだと思うのよ」


おばあちゃんのその声は優しくて力強くて心に響く真っ直ぐな声だった。


「わたしのことにゃん?」


ミケは目を大きく見開き驚いている。


「うん、そうよ。ミケちゃんのことよ」


おばあちゃんはふわっとした柔らかい笑みを浮かべ返事をした。そして、「ミケちゃんはこちらのムササビカフェ食堂さんにいた三毛猫のぬいぐるみでしょ?」と尋ねる。


「え、え~っ!? どうしてそれを知っているにゃん?」


ミケはそれはもう驚きを隠せない声を出した。二人の会話を聞いていたわたしも驚き叫びそうになってしまう。


「う~ん、どうしてなのかしらね? 直感的にピンっときたのよ」


「そ、そうにゃんだね……わたしは三毛猫のぬいぐるみだよ」


「やっぱりミケちゃんは三毛猫のぬいぐるみだったのね。会いたかったわ」


嬉しそうに微笑みを浮かべたおばあちゃんの瞳から涙がぽろりと零れる。


「おばあちゃんのことまだちゃんと思い出せないけど、わたしの大切な人だったような気がするにゃん。あ、おばあちゃん泣かないでにゃん」


「うふふ、ありがとう。今、思い出したわ。ミケちゃんはねわたしの大事にしていた三毛猫のぬいぐるみよ」


おばあちゃんはカバンからハンカチを取り出し涙を拭う。


「わたしはおばあちゃんのぬいぐるみ!」


ミケは大きな目を見開き叫んだ。


「そうよ、ずっと、幼い頃からミケちゃんのことを大切にしていたのよ」


おばあちゃんはうふふと笑いミケを柔らかくて包み込むような目で見る。


「そうだったんだにゃん。そう言えばおばあちゃんのその目を知っているような気がするにゃん」


「だって、わたしミケちゃんにずっと話しかけたりしていたんですもん。それにね、三毛猫のぬいぐるみのミケちゃんにご飯を食べさせた事もあったわ」


おばあちゃんはそう言って可笑しそうにクスクスと笑った。


「ご飯にゃん!」


ミケは『ご飯』と言う言葉に目をキラキラ輝かせ飛びつくように反応した。もう、笑う場面じゃなかったのにミケらしくて笑いそうになるじゃない。


「そうご飯よ。幼かったわたしはミケちゃんに悩みを聞いてもらってね、お礼にご飯よ~ってあげたこともあるのよ。今、考えると可笑しいわね」


おばあちゃんはミケを見てコロコロ笑う。


「おばあちゃんがわたしにご飯をくれたことがあるんだね。そっか、だからわたしご飯が好きにゃんだね」


ミケは納得したように首を縦にうんうんと振りにゃぱーと笑った。そして、気がつくとミケは……。


人間の女の子の姿からぬいぐるみの三毛猫の姿に戻っていた。


「あ、ミケちゃん!!」


わたし達四人はほぼ同時に驚きの声を上げた。


三毛猫のぬいぐるみに戻ったミケはちょこんとテーブルの上に座っている。


「にゃはは、小さなぬいぐるみに戻ってしまったにゃん」


ミケは頭を搔き搔き笑った。


「ああ、わたしのミケちゃんだわ」


おばあちゃんはテーブルの上に座るミケに手を伸ばしそっと頭を撫でた。


そして、「間違いない」と言っておばあちゃんは懐かしそうに顔をほころばせた。


「おばあちゃん……ううん、真昼ちゃんだよね。会いたかったよ。思い出したにゃん」


おばあちゃんに頭を撫でられているミケは幸せそうに目を細めている。その姿を気持ちよさそうで幸せそうだなそう思いわたしはじっと眺めた。

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