懐かしき日々とカレーライスとミケ
当たり前のようにテーブルに並べられた夕飯。笑顔で食べるわたしをニコニコ笑顔で見つめる両親。それから時々、家にも遊びにやって来たおばあちゃん。
何だろう? ただ、カレーライスを食べているだけなのに懐かしさがじわじわと胸に込み上がってくる。幸せで不思議な感覚だ。
わたしとミケが協力し合い作ったカレーライスはお母さんが作ってくれた味に似ているからかな。
スプーンですくいもう一口食べる。うん、じゃがいももほくほくしていてやっぱり美味しい。
幸せな気持ちでカレーライスを食べ顔を上げたその時。おばあちゃんと目が合った。おばあちゃんはニコニコと笑っている。わたしもニコニコと笑い返す。
このおばあちゃんはほわほわと包み込むようなあたたかい雰囲気を持っている。なんか良いな。
わたしとおばあちゃんの間にほわほわぽかぽかな空気が流れた。
その時。ミケの声がした。
「美味しいにゃ~ん」
ミケはスプーンでカレーライスを口に運び感嘆の声を上げた。
「わたしとミケちゃんが力を合わせて作ったカレーライスだもんね」
「うん、わたし達頑張ったにゃんね。わたしアクをお玉で取り除くの楽しかったにゃん」
ミケはそう言ってにゃぱーと笑ったかと思うと突然涙をポロポロと零す。
「え! ミケちゃんどうしたの?」
「あ、えっ!? わたし……泣いてるにゃん!」
ミケは自分の涙にびっくりしたようだ。美味しいカレーライスの上にミケの涙がぽたぽたと零れ落ちた。
「ミケちゃんどうしたの?」
わたし達の視線がミケに集まる。ミケは一体どうしたの? ミケ自身わかっていないようだけど。
「わ、わかんにゃい? カレーライスを食べて美味しいにゃ~と喜んでいたんだけど……」
ミケは首を傾げながら手の甲で流れ落ちている涙を拭う。
「なんかね、懐かしくてにゃん……昔懐かしくてレトロで素朴な味がしたんだよ」
ミケはそう返事をし視線をカレーライスに落とす。
わたしもミケほどではないけれど、このカレーライスを食べると幼き日を思い出していたな。そんなことを考えながらカレーライスとミケを交互な眺めた。
「にゃはは、みんな驚かせてごめんね。さあ、食べようにゃん」
ミケはにゃぱーと笑い再びカレーライスを食べ始めた。
「そうだな。食べましょう」
高男さんがそう言ってわたし達の顔をぐるりと見回しスプーンを手に取る。
わたしもムササビもそれからおばあちゃんも頷きスプーンを手に取りカレーライスを口に運んだ。
うん、やっぱりほくほくほわほわで懐かしい味がした。みんなの顔をこっそり見ると幸せそうにカレーライスを食べていた。
「ねえ、ミケちゃん。あ、ミケちゃんって呼ばせてもらうわね。わたしもねこのカレーライスを食べると懐かしくてそして……」
おばあちゃんはそこまで話すと一呼吸置き緑茶を一口飲んだ。そして。
「君に会えて良かったと思ったのよ」と言った。
「え? 君に会えて良かった?」
ミケはおばあちゃんの顔を見て首を横に傾げた。わたしもこのおばあちゃんが言った言葉の意味がとても気になった。
『君に会えて良かったと思ったのよ』
それは果たしてどういう意味なのだろうか。




