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優しい雰囲気のおばあちゃん

「あの席やっぱり人気あるね」

「菜っ葉のお客さんもモモコちゃんもそれから真歌ちゃんも座ったんだよね」


ミケは大きな窓があり眺めの良い席に目を向けて言った。


「そうだよ。大人気の席だね」


わたしは返事をしながら大きな窓がある眺めの良い席とふわふわと優しい雰囲気が漂うおばあちゃんを眺めた。


「そっかにゃん、なんかぽかぽかしてそうな席だもんね。わたしあの席で丸くなって寝たいな~」


ミケは猫らしいことを言って羨ましげに席とおばあちゃんを交互に見た。


「もうミケちゃんは……寝てばっかりじゃない」


わたしは笑ってしまった。だって、あのぐーすーぴーにゃんから始まりミケは寝まくりなんだもんね。 これはもう猫ちゃん以上じゃないか。


「にゃはは、わたしは猫だもん(ぬいぐるみだけど……)あ、でもちゃんとお仕事するよ。おばあちゃんにお冷や持って行こうかにゃ~ん」


ミケはそう言ったかと思うとピッチャーからグラスに水を注いだ。


「では、行ってきますにゃ~ん」


ミケはお盆にグラスを載せ「おばあちゃ~ん」と言いながらパタパタとおばあちゃんの席へと向かった。


そんなミケの可愛らしい後ろ姿をわたしは微笑ましく眺めた。あ、そう言えばミケが先にお仕事をしているではないか。なんか負けた気がしてちょっと悔しい。


「真歌さんどうしたんですか?」


いつの間にか戻って来た高男さんがわたしの顔を見て尋ねた。


「え?」

「なんか顔に悔しさが溢れているように見えたので」

「え! 悔しさが……顔に……」


わたしは頬に両手を当てて「そ、そんなことありません」と言った。うわあー顔に出ていたなんて……。


「あはは、真歌さん慌ててる。ほら、見てください、ミケちゃんおばあちゃんから注文を取ってるみたいですよ」


高男さんが笑いながら視線を向けている方向に目をやるとミケがにこやかな表情でおばあちゃんから注文を取っているようだ。


そんなミケの姿を見ると悔しさなんか何処かへ吹き飛びミケちゃん頑張っているなと思った。


「ミケちゃんも寝てばっかりじゃないんですね」


「そうみたいですね。あの子もこのムササビカフェ食堂の一員になりましたからね」


高男さんは目を細めながらミケを見ている。


「ミケちゃんも頑張っているんだからわたしも気合いを入れなきゃですね」


わたしは腕まくりをした。そんなわたしを高男さんが微笑みを浮かべ見ている。


「わたしも頑張りますよ」


そう返事をしたその時ミケがこちらに戻って来た。



「にゃはは、おばあちゃんから注文を取って来たにゃんよ」


ミケは満足げな笑みを浮かべている。


「よし、よい子だ。おばあちゃんの注文は何かな?」


「え~とね、『君に会えたら嬉しいなセット』だにゃん」


ミケは得意げに答え胸を張る。


「おっ、『君に会えたら嬉しいなセット』だね」


ミケから注文内容を聞いた高男さんニマッと笑った。


「『君に会えたら嬉しいなセット』ですか?

変わったメニュー名ですね」


「真歌さん、あのおばあちゃんのお客さんの想いかもしれませんよ」


「おばあちゃんの想いですか。あ、そう言えば高男さんは人の食べたいものを感じ取る能力があるんでしたよね?」


「そうだよ、高男さんの感じ取る能力はピカ一だからね」


高男さんの代わりにムササビがまるで自分のことのように得意げに胸を張り答えた。


「高男さんは凄いな~」


わたしは高男さんの整った横顔をチラリと見ながらあのおばあちゃんの想いとは果たしてどんなものだろうかと考えた。

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