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ムササビカフェ食堂からの電話

お風呂は温かくて気持ち良かった。湯船に浸かるとぽかぽかとあたたかさと幸せを感じ、今日一日の疲れがどんどん取れていくようだ。


わたしは、ルンルン♪ ランラン♪ ルンルン♪ ランラン♪ と思わず鼻歌を歌ってしまった。


体全体がぽかぽかほかほかになりお風呂から上がる。脱衣場でバスタオルで髪の毛と体を拭きパジャマに着替える。


「さて、髪の毛を乾かし早めに寝ようかな?」


わたしは独り言を呟きベッドで寝るミケに視線を向ける。今も、ぐーすーぴーにゃん、ぐーすーぴーにゃんと可愛らしい寝息を立てて寝ている。


まるで、我が家に猫さんがやって来たようだ。ぬいぐるみだけど……。


なんて笑っていたその時、テーブルの上に置いてあるスマホがブルブルと振動した。何だろう? と思いスマホを手に取る。


スマホの画面を見ると『ムササビカフェ食堂』と表示されていた。


電話に出て「もしもし」と言い終わるのとほぼ同時にけたたましい声が聞こえてきた。この声は高男さんだ。


「真歌さん、ミケが、ミケちゃんがいなくなりました!!」


「あ、ミケちゃんですか?」


「そうですよ。あ、夜分にすみません。ミケちゃんがどこにもいないんですよ」


高男さんのその声はとても心配そうだった。そんな高男さんの声を電話越しに聞きながらミケならここにいるけどなと、ぐーすーぴーにゃんといびきをかきながら眠るミケにわたしは視線を向けた。


「真歌さん、聞いていますか?」

「あ、はい、ミケちゃんならうちに居ますよ」

「そう、ミケちゃんが行方不明なんですよ! ってちょっと真歌さん! 今なんて言いましたか?」

「はい、ですからミケちゃんは家に居ますよって言いました」


わたしはミケのしまりのないちょっと笑える顔を眺めながら返事をした。


「な、何ですって!? 今、何て言いましたか~!」


高男さんのバカでかい声がキーンと耳に響く。


「ミケちゃんはわたしの家に居ますよと……」


「よ、良かった。何処へ行ったのか迷子になったのではと心配しましたよ。ああ、良かった~」


高男さんは心底ほっとしたようだ。


「ミケちゃんのこと心配していたんですね?」


「それゃもちろん。だって、今までミケちゃんは猫のぬいぐるみだったんだからね」


「そうですよね。ごめんなさい、わたしの家に居るって連絡すれば良かったですね」


わたしは高男さんが心配していることなんて想像もしていなかった。そんな自分が情けなく感じた。


「あ、いえ、真歌さんの家に居るってわかって一安心ですよ」


高男さんのその声をはとても柔らかくなっている。そんな声を聞きわたしはほっとしたのだけど。高男さんは、「あ!」と大きな声を上げた。


「今度はどうしたんですか?」


まだ、何か不安なことがあるのかなと考えていると、


「今、ぐーすーぴーにゃん、ぐーすーぴーにゃんっていびきが聞こえてきました~このお馬鹿っぽいいびきはミケですよね」と言って高男さんは笑った。


「そうそうこのぐーすーぴーにゃんはミケちゃんのいびきですよ。笑っちゃいますね」


わたしもあははとミケをチラッと見て笑った。ミケは呑気な寝顔でいびきをかいているけれど、ミケ自身はこんな会話がなされていることなんて露知らずだと思うと可笑しくなる。


「これでほっとしましたよ。ムササビも安心しますよ」


「あ、やっぱりムササビちゃんも心配してましたよね」


「今、ミケは何処だって言ってムササビは空飛ぶ座布団になり夜空を滑空してますよ。では、ムササビにミケちゃんは真歌さんの家に居たって伝えて来ますね。じゃあ、真歌さんおやすみなさい」


「は~い、おやすみなさい。ムササビちゃんによろしく伝えてくださいね」


そう言って電話を切った。


ミケは可愛らしい呑気なつくも神さんだ。かく言うわたしもだけど……。

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