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困ったミケちゃん

「ねえ、真歌ちゃんどうして怒っているのにゃん?」


先程からリュックの中からミケの声が聞こえてくる。けれどわたしは無視してズンズン歩く。


だって、頭にくる。黙っていると約束したのに……。あのレジの店員さんはわたしが呟いたと思ったかな? それに半額だなんて酷すぎる。大人げないとは思うけれど返事もしたくない。


わたしは自宅に声を出さず向かっている。


ミケは何回も「ねえ、真歌ちゃんってば~」と話しかけてくるけれど無視している。


「真歌ちゃんごめんね……わたし反省するにゃん」


ミケのその声は泣き出しそうに潤んでいる。


「……ミケちゃん、今も大人しくしてないけどこれから人前で余計なことを言ったりしないって約束してくれるかな?」


わたしはミケがちょっと可哀想になり返事をしてしまう。


「うん、わたし約束するにゃん」


ミケのその声は打って変わり弾んでいる。なんだか現金なミケだと思うけれど。


「じゃあ、許してあげるよ」


いつまでもぷりぷり怒っていても仕方がないのでわたしは許すことにした。


それからミケはわたしとの約束を守り黙っていた。それはもちろんほっとしたのだけど、リュックの中でどうしているのかなとちょっと気にもなる。


「ミケちゃんもうすぐ家に着くからね」


わたしは思わず声に出してしまった。きっと、うるさい返事が返ってくるかなと思ったのにシーンとしたままで返事はなかった。


まさか、リュックの中が窮屈で苦しんでいないかなと不安がよぎる。わたしはリュックを揺らしミケちゃん待っててねと早足で家路に向かう。


そして、スーパーから徒歩七分ほどで自宅のマンションの前にたどり着いた。


「ミケちゃん、お待たせ着いたよ」とリュックの中にいるミケにわたしは声をかける。


だけど、返事はなかった。なんだか不安になりわたしは背中に背負っていたリュックを慌てて下ろしファスナーを開ける。


「ミケちゃん、大丈夫?」


え!? ミケちゃん……!! わたしはびっくりして目を大きく見開いた。だって、ミケは……。


ああ、ミケは信じられないよ。


  わたしはリュックの中にいるミケを食い入るように見てしまった。


「お~い、ミケちゃ~ん」とわたしはミケに呼びかける。けれど、ミケは……。


口をぽかんと開けてぐーすーぴーにゃん、ぐーすーぴーにゃんといびきをかき寝ているのだった。


「ミケちゃん家に着いたよ~ねえ、ミケちゃんってばどれだけ寛いでいるのよ」


いびきをかきまるで自宅で寛ぐかのような姿のミケにわたしは呼びかけその小さな体を揺する。だけど、ミケはにゃははと眠りながら笑っている。


「まったく呑気な猫さんだ。いや、つくも神さんだよ……」


わたしはもう呆れてしまいクスッと笑った。それにしても面白可愛い姿だ。ぬいぐるみなのか本物の猫なのか区別もつかないキュートさにほっこり頬が緩む。


「さあ、わたしの部屋に行こう」


ミケは返事をするかのようにグーグーにゃんにゃんといびきをかきそして鳴いた。


わたしは口元を緩め部屋に向かった。


ドアを猫のキーホルダーが付いている鍵で開け「ただいま~」と誰もいない玄関で挨拶をして部屋に入った。



電気をつけ下駄箱の所定の位置に猫のキーホルダーが付いている鍵を置く。


リュックを椅子にぽすんと置き洗面所で手を洗った。部屋着に着替えほっとする。


さて、夕飯でも食べよう。そう思ったその時、ぐーすーぴーにゃん、ぐーすーぴーにゃんといびきが聞こえてきた。


「あ、ミケちゃん忘れてた~えへへ、今さっきミケちゃんのいびきにほっこりしたばかりなのにね。わたしってば」


笑いながら自分に突っ込む。


わたしはリュックからいびきをかいているミケを取り出す。まったくいつになったら起きるのだろうか。


むにゃむにゃにゃんと寝ているその姿は可愛らしいので暫くの間そのままにしておこうかな。


わたしは台所に立ちトマト、レタスそれからキュウリのめちゃくちゃシンプルなサラダを二人分作る。


今日の夕飯はこのシンプルなサラダと半額のマカロニグラタンでいいかな。高男さんの料理をたらふく食べたのでそれほど空腹を感じていない。


野菜サラダにごまドレッシングをたっぷりかけ半額のマカロニグラタンをレンジでチンする。


「ミケちゃ~ん、ご飯が出来たよ」


わたしはぐーすーぴーにゃんといびきをかき寝ているミケに声をかけた。


どうせ起きないだろうと思っていたのに。


「あ、美味しそうな匂いだにゃん」


気がつくとミケはぬいぐるみの姿でちょこんとわたしの目の前に座っていた。


しかも。えっ!? 小さな三毛猫サイズのぬいぐるみだったはずが小さな女の子サイズの三毛猫のぬいぐるみになっていた。

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