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ムササビとモモコとミケ

「やれやれ困った食いしん坊さんだ」


 モモコの元へと料理を運ぶムササビのポニーテールを揺らす後ろ姿を眺めながら高男さんが言った。


「そうですよね、素直に料理をお届けしたらいいのに」


「そっくりな外見なので対抗意識を燃やしているんでしょうね」


高男さんは目を細めて笑う。


「似てるとそういうものなのかな。今は人間の姿だけど」


「以前ムササビがモモンガの小さい体に憧れているようなことを言ってたな」


「ああ、確かモモンガはハンカチサイズでムササビは座布団サイズなんですよね」


「そうそう小さい体が可愛らしくてすばしっこい奴めと言ってましたよ」


高男さんはお皿をモモコのテーブルに並べているムササビの姿に視線を向けながらククッと笑った。


「なんだかムササビちゃんって可愛らしいですね」


「そうですね。可愛い奴めですよ」


わたしと高男さんがムササビのことを話題にしていると、


「わたしが輪切りにしたバナナと皮を剥いたキウイだよ有り難く食べるんだよ」


なんて言っている声が聞こえてきた。


「美味しそう。え! ムササビはバナナを輪切りにしてキウイの皮を剥いただけなの?」


モモコがムササビを見上げ言った。


これはちょっと……。マズイのではないかな。


「モモコちょっとそれって酷くない」


わたしと高男さんはムササビとモモコの会話を聞きマズイと思い顔を見合わせた。また、バトルに発展しないといいのだけど。


どうしたものかなと思っていたその時、それまで黙っていたミケが、「リスの仲間どうし仲良くしてもらいたいにゃん」と言ったかと思うと、パタパタとモモコの席へと向かった。


「高男さん、わたし達も行きましょう」

「はい、真歌さん」


わたし達もミケの後を追いかけた。


大きな窓がある窓際のモモコの席の前に行くと、 ムササビとモモコはギロギロと睨み合っていた。


「お客さんこのフルーツヨーグルト美味しいですよ。取りあえず食べてくださいにゃん」


ミケは睨み合っているムササビとモモコの間に入りニコニコと笑いモモコの顔を見た。


「えっ! にゃん? フルーツヨーグルトは美味しそうだけど……」


「ムササビちゃんがバナナの輪切りを頑張ってましたにゃん。味の保証はわたしがしますにゃん」


「ふ~ん、味の保証ね……。にゃん語を使う店員さんはこのフルーツヨーグルトは食べたのかな?」


モモコはミケを見上げ尋ねた。


「にゃはは、それはもちろんにゃん」


ミケは自信ありげに腰に手を当てて答えた。まだ、味見していないのになと思いミケの顔に視線を向けたわたしはあることに気がついた。


そのミケの顔を良く見ると口の周りにヨーグルトがべったりとくっついていたのだった。高男さんもそんなミケの姿に気がついたようだ。目を大きく見開いている。

「ふ~ん、にゃん語の店員さんがそこまで言うのなら食べてみるよ」


モモコはそう言ってスプーンを手に取る。そんなモモコの様子をわたし達はじっと見つめ見守る。


「では、いただきま~す」


モモコはヨーグルトと輪切りバナナをスプーンですくい口に運んだ。


しばらく味わっているのかモモコは黙っている。美味しいと感じてくれたかな? わたしはドキドキしながらモモコを見る。


「このフルーツヨーグルト……」と言葉を発しモモコは少し間を置きそれから、「爽やかなヨーグルトの酸味とほんのりと甘いバナナが良く合っていてなんか癒されるな~」と言った。


そのモモコの言葉を聞いたわたしはほっとした。良かったと心から思う。ムササビに視線を向けると微かに口元が緩んでいるように見えた。


「ねっ、美味しかったでしょうにゃん?」

「う、うん、まあね……」


モモコはそう返事をしたかと思うと今度はスプーンでキウイとヨーグルトをすくい口に運んだ。そして、イチゴ、マンゴーと次々に食べた。


「お、美味しかった~!」


フルーツヨーグルトを完食したモモコは満足そうな声を上げた。



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