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食いしん坊なわたし達

さて、トマトスープは完成しましたよ」


高男さんが言いながらスープ皿に具沢山のトマトスープを盛り付ける。トマトの爽やかな香りがふわふわと漂う。


「わっ、美味しそうだにゃん」


ミケが鼻をくんくんさせる。その隣でムササビも鼻をくんくんさせている。そして、わたしも……。思わず鼻をくんくんさせてしまったのだ。


「君達、鼻をくんくんさせている場合ではありませんよ」


高男さんが呆れたようにわたし達の顔を順番に見る。


わたし達は「あはは」と笑って誤魔化す。


「デザートは出来上がっているのかな~?」


笑うわたし達の顔を高男さんがギロッと睨む。


その顔はちょっと怖いけれど高男さんはイケメンなので漫画や映画の主人公みたいで絵になるなと思わず眺めてしまった。


「真歌さん、俺の顔に何かついてますか?」

「いえ、何も……」

「早くイチゴのヘタを取ってください!」

「はい、お待ちください~」


わたしは慌ててイチゴを水でザーザーっと洗い包丁の刃元をイチゴの葉の下に刺し入れ取った。


「まったく困った人達だ。ムササビはキウイの皮を剥いてくれよ。ミケちゃんは冷蔵庫からヨーグルトを出して」


高男さんはテキパキと指示を出す。流石だなと感心するわたしだった。


「はい、フルーツたっぷりなヨーグルトの完成でーす」


高男さんはフルーツヨーグルトにハチミツをかけながら言った。


「わ~い! 美味しそう」、「わ~い! 美味しそう食べた~い」、「もうヨダレがじゅるじっと出そうにゃん」とわたし達は目をキラキラ輝かせパチパチと拍手をした。


「……これはモモコちゃんのフルーツたっぷりなヨーグルトだぞ」


高男さんはふーっと大きな溜め息をつく。


「じゃあその小さな小皿に盛られている四つのフルーツヨーグルトは何だろう?」


ムササビが小皿に盛られている美味しそうなフルーツヨーグルトに視線を向け尋ねた。


「はぁ、食いしん坊な奴だな。これは、俺達の分だよ……」


高男さんはさらにふーっと大きな溜め息をつく。


「やった~! フルーツヨーグルト食べられるんだ~」


「嬉しいで~す! フルーツヨーグルト食べたい」


「やった~にゃん! フルーツヨーグルト食べるのだにゃん」


わたし達は飛び跳ねて喜んだ。


「やれやれ食いしん坊な君達には困ったものですよ」


高男さんは呆れたように笑っている。だけど、わたし達はもうフルーツヨーグルトが食べられると思うと嬉しくて頬がゆるゆると緩んでしまった。


それにカウンターに小皿に盛り付けられたトマトスープが四皿置かれていることにわたしは気づいたのだから。


これはニヤニヤが止まりませんよ。



「では、ムササビお客さんのモモコちゃんの元へ料理を運んでね」


そう言って高男さんはにんまりと笑う。


「え! わたしが運ぶの?」

「そうだよ。きっと、モモコちゃんは喜ぶぞ」

「嫌だよ、それにモモコが喜ぶわけないよ」


ムササビは嫌そうに口を尖らせる。


「さあさあ、文句を言わずにモモコちゃんに料理を運んであげるんだぞ」


高男さんは言いながらお盆にトマトスープとフルーツヨーグルトにそれから山盛りご飯を載せた。


「あ、山盛りご飯いいな」


ムササビは山盛りご飯をじっと見て言った。


「ちゃんとモモコちゃんの元へ運んだら夕飯は山盛りご飯を食べさせてあげるぞ。どうするムササビ~?」


高男さんはニヤリと笑いムササビの顔を見る。


「うっ、ううっ! 高男さんってばスルイよ~」


ムササビは悔しそうに顔を歪める。


そんなムササビを高男さんはじっと眺めている。「さあ、ムササビどうするんだい?

山盛りご飯だぞ」と言ってニヤリと笑った。


「わ、わたし…てば山盛りご飯に負けた~」

「ってことはムササビ」

「わかったよ。山盛りご飯の為にモモコの元へ料理を運ぶよ」


ムササビは唇をギュッと噛んだ。


「さあ、行けムササビ」


高男さんは今度はにっこりと笑い手を振る。


「仕方ない、山盛りご飯の為にわたし頑張る」


ムササビは料理を載せたお盆を持ちモモコのテーブルへと歩きだした。


頑張れムササビとわたしも心の中で応援した。わたしの隣でミケも「頑張れムササビちゃん」と声を出して応援している。

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