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高尾山の夜はムササビタイム

「では、そろそろ夜のお出かけに行こうかな」


ムササビがそう言ってニマッと笑ったかと思うといつの間にか人間の女の子の姿からムササビの姿になっていた。


「わっ、ムササビちゃんがムササビになった~!」

「わっ、これこそムササビちゃんの真の姿だにゃん!」


わたしとミケはもふもふな姿になっているムササビをじっと見て興奮した。


「ふふん、ムササビな姿のわたしも可愛いでしょ。さあ、行くよ」


動物の姿のムササビは尻尾をリスのように背負ったポーズでもふっと二本足で立った。そして、可愛らしい手で引き戸をガラガラと開け外に出る。わたしとミケもそれに続く。これから夜の散歩だなと思うとめちゃくちゃワクワクする。


高尾山の外は周りを遮る建物が何もなく空を見上げると星がキラキラと輝き驚くほど美しかった。


「綺麗な夜空だね」


わたしは、空を見上げながら言った。


「うふふ、高尾山は素敵なところだよ」

「本当にそうだね。それでいて山から見下ろすキラキラ輝く街並みも綺麗だね」


「あれは八王子市の中心街の灯りだね。なんかイルミネーションみたい~」


「ほんとだにゃん、綺麗だね~」


わたし達は夜の高尾山の澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込みキラキラと輝く美しい夜景を眺めた。遠くには新宿のビル街やそれから東京タワーやスカイツリーも見えた。


「さてさて、そろそろわたしの華麗なる姿をお見せしようかな~」


ムササビがにぱーっと笑いわたしとミケの顔を交互に見る。


「見せて、ムササビちゃんが華麗に夜空を舞う姿が楽しみだよ」


「わたしも見たいにゃん。楽しみにゃん」


わたしとミケは得意げに胸を張るムササビに言った。


「ふふん、そんなに言うなら見せてあげるよ~」


ムササビはニョキニョキニョキと木に登った。


「では、わたしムササビのムササビタイムで~す!」


ムササビは木の上からわたし達を見下ろす。


「待っていました」

「待っていましたにゃん」


わたしとミケは下から木の上のムササビを見上げパチパチと拍手をした。


「盛大な拍手をありがとう~では、わたし飛びま~す!」


そう言ったムササビは身体にあるマントのような飛膜を使ってびゅーんと飛んだ。(正確にはこの飛膜とやらを広げ木の高いところから飛び降りてグライダーのように滑空をしているらしい)


「きゃあ~めちゃくちゃ可愛らしいよ~」

「めちゃくちゃカッコいいにゃん」


わたしとミケは空飛ぶムササビを見上げ歓声を上げた。


ムササビはびゅーんと木から木へ飛び移る。その姿は空を飛ぶ座布団のようだ。わたしは、初めて見るその姿に感動した。


隣に立っているミケに目をやるとわたしと同じように感動しているようだった。



 暗闇の中を気持ち良さそうに木から木ヘ飛び移るムササビの姿に癒されわたしは自然を感じる。


「うふふ、気持ちいいよ~」


空をびゅーんと飛ぶムササビが言った。


「いいな~わたしも空を飛んでみたいな」

「わたしもムササビちゃんみたいに空を飛べたら気持ちいいだろうにゃん~」


わたしとミケは空を舞うムササビを見上げながら言った。


ムササビはどんな想いを胸に抱えているのだろうか。そして、わたしの隣に立っているミケもまた……。


わたしは空飛ぶムササビやぬいぐるみだったつくも神のミケと何か繋がるものがあるのかもしれないなと感じた。今はそれが何なのか良くわからないけれど。


「わたしを目覚めさせてくれてありがとう」


隣にに立っているミケがぽつりと呟いた。


「あ、それはたまたまだよ」


ミケに何度か言われた『わたしを目覚めさせてくれてありがとう』と言う言葉にたまたまだよと答えながらも心のどこかで何か大事なことが隠されているのかもと感じているわたしがいる。


そんなことを考えていると、「真歌ちゃんどうしたにゃん」とミケがわたしの顔を覗き込み尋ねた。


「うん、なんかわたし今、不思議な空間にいるな~って思ったんだよ」


そう、上空には人間の女の子に化けるムササビがいてそして、目の前にはわたしの顔を覗き込むつくも神のミケがいるんだもん。


これは、不思議な世界を通り越しファンタジーだ。けれど、非日常な世界でありながら日常的な世界にも感じられるのだった。



「うふふ、わたしのムササビショーはいかがだったかな~?」


気がつくといつの間にかもふもふ姿のムササビがわたし達の目の前に二本足で立っていた。


「あれ? ムササビちゃんいつの間に? もうめちゃくちゃカッコよかったよ」


「めちゃくちゃ素敵だったにゃ~ん!」


わたしとミケは感嘆の声を上げた。


「えへへ、やっぱり~わたしってばカッコいいよね」


ムササビは可愛らしい手で頭をぽりぽり搔きニコニコ笑顔だ。照れながらもその笑顔には自信が満ち溢れている。


「ムササビちゃんってば自分を褒めるんだから。でも、そんなムササビちゃんが羨ましいな」


だって、わたしは自分に自信なんて持てないからムササビのように自信を持ち胸を張れる生き方がちょっと羨ましい。


「わたしもムササビちゃんが羨ましいにゃん」


  ミケもムササビを羨ましそうに見つめている。


「なんか褒められちゃった~」


 星空の下ムササビは満面の笑みを浮かべた。もうめちゃくちゃ可愛いではないか。


「さて、ムササビカフェ食堂に戻ろうか」


ムササビはいつの間にか女の子の姿に戻り歩きだした。

真歌は高尾山で不思議や世界に出会いました。


読んで頂きありがとうございます。

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