タイトル未定2025/04/28 22:29
洗い物や散らかった食材などの片付けが終わるとまた暇な時間がやって来た。
このムササビカフェ食堂は果たして一日何組くらいのお客さんが来店するのかなと素朴な疑問が浮かぶ。
「ふわふわぁ~暇だね。もうすぐ閉店時間かな?」
ムササビが壁に掛かっている時計に目をやり言った。時計の針は夕方の五時を指していた。
「そういえばそろそろ登山客は下山する時間だね。って言うかだいたい登山客は午後三時とか四時頃に下山するよね?」
ここまで言ったところで、わたしも登山客だったことを思い出した。
「うん、もう少ししたらムササビタイムかな~」
「ムササビタイム?」
「うん、わたしの活動時間だよ~」
「それってもしかしたらムササビちゃんがムササビの姿に戻って飛膜を使って滑空する時間なのかな?」
わたしが尋ねると「ピンポン正解だよ~」とムササビはニンマリと笑い答えた。
「わっ、それは是非見たいよ」
ムササビの空飛ぶ座布団みたいな姿を想像するとそれはもめちゃくちゃワクワクするよ。
「わたしも見たいにゃん」
ミケも瞳をキラキラ輝かせ興奮しているようだ。
「うふふ、では、後程お見せしようかな~」
ムササビは胸を張り得意げだ。
高男さんはムササビの空飛ぶ姿を何回も見ているのか興味がない様子だ。一人だけすまし顔だ。
「夜になると楽しい時間が待っているんだにゃん」
ミケがまだかまだかと窓の外を眺めている。
「あはは、ミケちゃんてばそんなに窓の外を眺めなくてももう真っ暗だよ~」
なんて言っているわたしもムササビが空を飛ぶ姿を見てみたくてワクワクしているのだ。
「ニヒヒ、わたしってば人気ものだな~」
ムササビはふふんと得意げに胸を張る。
「おいおい、そんなことより店を閉める手伝いをしてくれよな」
呆れたように笑う高男さんが言った。
「閉店作業って何をするんだろう?」
わたしは疑問に思ったことを呟いた。
「明日のためにお店全体を綺麗にしておくんですよ。テーブルや床を拭いたり食材の補充や仕込みなどをね」
「大変なんですね……」
「まあ、大変と言ってもうちの店は他店よりず~っと楽ですけどね。なんたって暇な店だから……」
「高男さんってば暇って自分で言うんだから」
ムササビが肩を震わせ笑う。
「こらこらムササビ笑うんじゃないよ」
高男さんはギロッとムササビを睨んだ。
「だって、暇をアピールしているみたいなんだもんね」
ムササビは先程よりも肩を震わせている。
「ふん、勝手に笑っていなさい!」
高男さんはちょっとムッとした感じではあるけれどこの高ムサコンビは最強だなと思う。
「ねえ、今高ムサって聞こえたんだけど~」
「聞こえたな」
ムササビと高男さんがほぼ同時に言ってわたしの顔をチラリと見た。
あらま、どうやら声に出てしまっていたらしい。
「高男さんとムササビちゃんはやっぱりこのカフェ食堂を二人で切り盛りしていたから息が合ってるな~って思ったんですよ。だから、高ムサってコンビ名を付けてしまいました」
わたしは高男さんとムササビの顔を交互に見てニコッと笑い言った。
「そっか、それだったらなんか嬉しいな~高ムサコンビを受け入れようっと」
「おいおい受け入れるのかよ……まあ、それもいいか」
高男さんも嫌そうな顔をしながらも結局受け入れた。
「ねえ、高男さんとムササビちゃんが高ムサコンビだったらわたしと真歌ちゃんはミケマカコンビだにゃんね」
ミケがにゃぱーと笑いわたしの顔を見た。
「え? ミケマカコンビ~」
「うにゃん、ミケマカコンビだにゃん。だって、真歌ちゃんがわたしミケをお目覚めさせてくれたんだもん」
ミケは「ねっ」と言ってにゃぱにゃぱと笑う。
「あはは、では、わたし達はミケマカコンビといきましょう」
わたしもミケの顔を見返しにっこりと笑ってみせた。
こうして高ムサコンビとミケマカコンビが誕生しましたとさ。




