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04見えてくる陰

柚月は今日もいつも通り、明るい笑顔を振りまいていた。教室の中央に座り、楽しそうに友達との会話に花を咲かせるその姿は、まさにクラスの中心的存在だ。友達、葵と優香も一緒に、テーブルを囲んで話しながらランチを楽しんでいる。


「ねえ、柚月ってさ、本当に忙しそうだよね。」

葵が口を開くと、優香も頷きながら続ける。

「うん、なんかいつも大変そうな気がする。」


柚月は軽く笑いながら、いつものように明るく返す。

「うーん、別に大丈夫だよ!ちょっとバタバタしてるけど、元気だから!」


その言葉に、葵が少し心配そうな顔を見せた。

「でも、家事とか手伝ってるんじゃないの?なんか大変じゃない?」

柚月は少し考える素振りを見せたが、すぐに笑顔を作って言った。

「うん、ちょっとは手伝ってるけど、全然平気だよ!たまに忙しいけど、その分やりがいがあるから。」


優香がその後、少し戸惑いながらも話題を変える。

「でも、柚月っていつも元気で、楽しそうだよね。どんなことしてるの?」

「え?うーん、なんだろうね。」柚月は少し考えながらも軽く答える。「ただ、学校に来て、友達と話すのが楽しいから、それだけで十分かな。」


優香と葵は、その答えに一瞬納得したような顔をしたが、どこかすっきりしない気持ちも感じている様子だった。柚月の笑顔が、まるで何かを隠しているような、ほんの少し違和感を感じさせたからだ。


葵が手を広げ、冗談交じりに言う。

「柚月がそんなに頑張ってるって知らなかった!やっぱり、みんな忙しいんだね。」

「そうそう、でもそれが大人になるってことだよね!」

柚月は、さらに大きな笑顔で答える。


その後も軽い会話が続き、葵と優香は柚月の明るさに引き込まれた。しかし、心のどこかで、柚月の背後に何かが隠されているような気がしていた。それは、柚月自身も感じていることで、彼女の明るさがどこか遠くにあるもののように感じることがあった。


そしてその日、柚月の「大丈夫だよ」という言葉が、友達には通じても、心の中では彼女自身に響いていないことに気づいていないのだった。


ーーー


昼休み、教室はいつも通り賑やかだった。柚月は明るく元気に、クラスの中心的存在として友達と楽しそうに話している。しかし、神谷の視線はふと彼女に向かう。その様子を見ていると、柚月の顔色が少し悪いように見えた。普段通り元気にしているものの、目元には疲れが滲んでいる。


その時、彼女の近くに座っている清水翔太が、気づいたように彼女に声をかける。


「柚月、大丈夫か?顔色がちょっと悪いぞ。」


柚月は笑顔で「うん、大丈夫だよ!」と答えるが、その笑顔にはどこか無理が感じられた。


翔太は少し心配そうに眉をひそめる。「無理してないか?最近、ちょっと忙しそうだよね。体調、気をつけないと。」


柚月はすぐに軽く笑って、「ありがとう、でも大丈夫だってば!ちょっと寝不足なだけだから。」と言い、翔太の心配を軽く流そうとする。


そのやり取りを横目に見ていた神谷は、彼女の様子が気になり始める。彼女の元気さには隠れた疲れがあるように見え、少しだけ心配だった。だが、クラスの空気を壊すわけにはいかないと思い、黙っていることにした。


しばらくして、昼食の時間が過ぎ、掃除の時間がやってきた。掃除当番の神谷は、柚月と同じ場所を掃除することになった。


「神谷くん、こっち手伝って!」と、柚月が明るく声をかけてきた。その顔には相変わらず笑顔が浮かんでいたが、彼女の足取りが少し重く見える。


「うん。」と答えながら、神谷はその足取りを見て心の中で何かを感じる。


掃除が始まると、翔太が別の場所で忙しそうに掃除をしているのを見て、神谷はふと柚月に話しかける。


「無理してないか?本当に大丈夫?」


柚月はまた微笑んで「大丈夫だよ、神谷君は心配しすぎだよ。」と言ったが、その声には少し力がなく、彼女が完全に無理をしていることを神谷は感じ取った。


その時、翔太がこちらに戻ってきた。彼は再び柚月に気づき、今度は少し真剣な表情で言った。


「柚月、ほんとに無理すんなよ。気になるなら、少し休んだ方がいいぞ。」と言うと、柚月は一瞬黙り込んだ。


その瞬間、神谷がすぐに言葉を続ける。「清水の言う通りだよ。休むのも大事だ。もし辛いなら、少し休んでもいいかもしれない。」


その言葉に柚月は微笑みを浮かべ、再び笑顔を作った。「ありがとう、でも大丈夫だよ。少し休んで、また元気に動くから。」


神谷と翔太は顔を見合わせたが、どこか彼女の無理している様子が気になっていた。柚月が気を使って明るく振舞う姿が、逆に二人の心配を深めていく。



掃除が終わり、放課後の時間が訪れる。教室は次第に静かになり、残った生徒たちはそれぞれの用事に向かう。柚月は、今日もまた友達と一緒に帰ろうとしているが、神谷は気になって足を止めた。


「高瀬、少し話さないか?」と、突然声をかける。


「え?」と柚月は一瞬驚いたように振り向いたが、すぐに軽く笑顔を見せて、「うん、いいよ。」と答える。


二人は教室の隅の方に移動する。周囲には他のクラスメイトがいるが、神谷は柚月を気遣いながら、できるだけ人目を避けて静かに話を続ける。


「最近、ちょっと疲れてるんじゃないか?」と、神谷が尋ねる。


柚月は少し驚いたような顔をしてから、少しだけ表情を崩して答える。「うん、少しだけ…無理してるかもしれない。」


神谷は、彼女が笑顔を絶やさずに周囲に元気を与えている一方で、その裏に疲れを抱えていることに気づいていた。神谷は以前、放課後の街で柚月が保育補助のバイトをしているところを見かけていた。彼女があんなに真剣に子どもたちと接している姿を目にして、それが無理に自分を頑張らせている証拠だと感じていた。


「バイトって、あの保育園のことか?」と神谷は尋ねた。


「うん、そうだよ。」柚月は少しだけ顔を伏せる。「子どもたちと遊んだり、お世話したりしてるんだけど、結構忙しいんだ。」


「そんなに無理してるのか?」と神谷が心配そうに尋ねる。


柚月は少し考えてから、「家のこともあるし、弟の面倒も見なきゃいけないから…でも、バイトは楽しいんだ。だから、頑張ってる。」と答える。


神谷は、柚月が本当に周囲のために必死に頑張っていることを理解した。そして、彼女が無理をしている様子を見て、少し心配になった。「でも、無理はしないほうがいい。身体が一番大事だから。」


「うん…ありがとう。」柚月は微笑んだが、その笑顔の裏には疲れが見え隠れしていた。


「もし、何か手伝えることがあったら、言ってくれ。」神谷は真剣な眼差しで言った。


「大丈夫だよ。心配かけたくないから。」と、柚月は少し強がったように言ったが、神谷はその言葉が本心ではないことを感じ取った。


「でも、無理しないようにね。」神谷はやわらかく言った。


柚月は軽く笑い、「うん、ありがとう。気にかけてくれて嬉しいよ。」と答える。彼女はその後、少しだけ元気を取り戻し、明るく「じゃあ、そろそろ帰ろうか。」と言った。


二人は一緒に教室を出て、帰路についた。神谷は柚月の明るさの裏にある疲れを少しずつ感じ取り、彼女がこれ以上無理をしないようにできるだけサポートしたいという思いを強くしていた。


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