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完結●断罪終了後に悪役令嬢・ヒロインだったと気づきました!詰んだ後から始まる逆転劇  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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35:最後に話をしたい~マリー~

リリアンとスコット皇太子の抱擁が落ち着くと、一斉にみんな動き出す。


まさかここにスコット皇太子が来ていると思わなかったノートル塔の管理責任者は、慌てて彼に駆け寄り、挨拶をしつつ、しきりにいろいろと謝罪していたのだが。


それを途中で制し、スコット皇太子が彼に伝えたことは一つ。


「マリーはノートル塔から出る。彼女がここに来た時に身に着けていたドレスや宝石を、持ってきてほしい」


すると。

ノートル塔の管理責任者は青ざめた。

そんなことではないだろうかと思ったが。

私の着ていたドレスも宝石も売り払われていた。

スコット皇太子はそれを聞き、絶句していたが冷静に「では今の服よりましなものを用意してほしい」と命じると、管理責任者は心底困り切った顔になりつつも部屋を出て行った。


可哀そうだがあの管理責任者は、後日更迭間違いなしだろう。


ひとまず彼がなんらかの服を持ってくるまでの時間を使い、私はデレクが何者であるか、スコット皇太子に正直に伝えた。デレクはここに身分を偽り、忍び込んでいる。お咎めを受けるかと思ったが、それはない。むしろ従者であるデレクが、ジェフの手から剣を奪う見事な動きをしたことに、スコット皇太子はとても感動している。


「マリーの一番そばにいたのはわたしなのに。すぐに動くことができず、本当に申し訳なかった。デレク、君が動いてくれて助かったよ。わたしでは……マリーを救うことはできなかったと思う。君のような従者がそばにいれば、マリーの身は安全だろう」


この言葉からデレクが騎士に扮し、この場にいたことを咎めるつもりはないこともハッキリ分かり、心から安堵した。


その後はリリアンをベッドに座らせ、地下の迷宮でどんな状態だったかを聞くことになった。


私とリリアンが話している間、デレクは周囲を警戒し、スコット皇太子は宮殿から来ていた騎士達に、いろいろと指示を出していた。こんな時のスコット皇太子はさすがだと思う。皇太子教育の賜物ので、指揮官として能力を遺憾なく発揮している。


隣に座ったリリアンに私は尋ねる。


「地下の迷宮に閉じ込められて、とても大変な状態だったのでしょうね。暗闇に一人ぼっち。よく心が折れませんでしたね」


「それはマリーさまがいてくれたからです」


「私、ですか?」


リリアンは元気よく頷く。


「私がくたばったら、マリーさまがジェフに脅され、意に染まぬ関係を迫られると思い、居ても立っても居られない気持ちになりました。なんとしてでもここから出ようと決意し、扉と格闘しちゃって……」


そう、リリアンは笑いながら言うのだが……。


ベッドに座ることで、少しだけ見えた足首にも包帯がある。本当に、体の使えるあちこちを使い、扉と格闘したことが伝わってきた。それが私のために頑張ったことだと思うと、さらに胸が熱くなる。


「リリアン様。金平糖はお好きですか?」


突然、金平糖を好きかと尋ねられ、リリアンはキョトンした。そんな時のリリアンは本当に幼く見える。でもすぐに「はい!」と頷く。


隠していた金平糖の瓶を取り出した。


「これはデレクが私のために届けてくれたものです。子供の頃から、私はこの金平糖を食べているのですが、緊張を和らげたいなら、この黄緑色。元気になりたい時はイエロー。寂しくなったらピンク。お腹がすいたら白。一粒食べれば、効果があるのですよ」


「へえ、そうなのですね!」


リリアンの顔が輝く。


「今のリリアン様は……。全部。今は全色一粒ずつ食べていいと思いますよ」


そう言ってその可愛らしい手の平に金平糖をのせると、リリアンは嬉しそうに一粒ずつ、口に運ぶ。


そこへドレスを手にした管理責任者が戻ってきた。

そのドレスは……確かに上質なシルクが使われているし、色も落ち着いたシャンパンゴールドなのだが……。これまた夜会向きの、胸元も背中も深くV字に開いたもので、日中に着るようなものとは思えない。


驚く私にリリアンが耳元で囁き教えてくれる。どうやらねんごろの女性がこの管理責任者にはいるらしく、その人に贈る予定のドレスをあてがってくれているようなのだと。リリアンが着ているのも、まさにそうなんだとか。


どうしてこのドレスなのかという理由は分かった。だからといってこれを着る気持ちにはなれない。代わりに黒のフード付きのマントをもらい、それを羽織って良しとすることにした。


「馬車の手配も済んだ。出発でいいかな?」


スコット皇太子に言われ、リリアンと私は立ち上がり、デレクが私のそばにきた。


「あの、スコット皇太子様。最後にジェフ様にお会いしてもいいですか?」


この言葉に、その場にいた全員が驚いている。

それは……そうだろう。

私はジェフに殺されかけたのだ。

それなのに牢屋につながれたジェフに、わざわざ会いに行きたいなんて。

おかしいと思うだろう。

自分自身でも不思議だと思ってしまうが。


スコット皇太子は優しいから、ジェフを死刑にすることはないと思う。死刑にしたい気持ちは、さっき平手打ちをしたことで収めたと思うからだ。だからきっとジェフはここにずっと幽閉されるか、国外追放……。


ジェフとはこの先もう、二度と会うことがないと思うのだ。だから最後に話をしたいと思った。


それをスコット皇太子に伝えると。


「……分かりましたよ、マリー。あなたは……優しい人だ。地下の牢屋まで、案内させましょう。ただ、長居は無用。ジェフは……彼はもはや咎人ですから」


「分かりました」


こうしてスコット皇太子、リリアンは先にエントランスへ向かい、デレク、私は、護衛のための騎士を連れ、地下牢へ向かった。

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