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完結●断罪終了後に悪役令嬢・ヒロインだったと気づきました!詰んだ後から始まる逆転劇  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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18:ナンカ使命感に燃える~リリアン~

マリーがいる部屋に入るには、重い鉄の扉を開ける必要がある。


鍵が開けられると、スコット皇太子の近衛騎士であるジェフが、全身の力を使い、扉を開けた。軋むような苦しい音をたてながら開いた鉄の扉の脇にジェフは立つと、中へ入るよう、あたしを促す。従者には目配せで待機を命じ、あたしは中に足を踏み入れた。


「……!」


部屋のみすぼらしさより何よりも。

目に飛び込んできたマリーの姿に驚く。


昨日の卒業舞踏会で、彼女はラベンダー色の美しいドレスを着ていた。ホワイトブロンドの髪には珍しい紫の薔薇が飾られ、とても気品があり、上品で洗練されていたのに。今は……グレーのなんの装飾もないワンピースを着ている。しかも髪は後ろで一本に束ねられただけだ。


だが。


マリーはワンピースの裾をつかみ、きちんとあたしにお辞儀をした。


「リリアン様。おはようございます。こんなところまでご訪問いただき、ありがとうございます」


その動作、声は、普段と変わらず、凛として優雅で洗練されている。粗末なグレーのワンピース姿なのに。ちゃんとしたドレスを着ているようにさえ思えてしまうのだ。


育ちの良さ。

いや、違う。

彼女は……孤児院出身。

だからこれは……彼女自身の美しさなのだ。

どんなゴミ溜めにいようと、彼女の品格は変らない。

そんな風に思えた。


あまりにも圧倒され、挨拶が遅れたが、あたしも慌てて「おはようございます、マリーさま。突然訪問してしまい、失礼しました」と声に出す。するとマリーはとても優雅に微笑む。


ああ、こんなに美しい人が。

なぜこのような場所にいるのか。

早く助け出してあげないといけない。

ナンカ使命感に燃えてしまう。


「リリアン様、こちらの椅子にお座りください」


声に振り返ると、ジェフが私のそばに椅子を置いた。

プチポワンというお花の刺繍がついたその椅子は、明らかに来客用のもの。対してこの部屋にあるのは……。文机のそばに置かれた、板を組み合わせたような年季の入った椅子のみ。まさかマリーはあれに座るわけ?


座った。


なんのためらいもなく。


「ジェフさま」

「何でしょうか、リリアンさま?」

「この椅子は一脚しかない――そんなことはないですよね? もう一脚、用意いただけますか?」

「え……?」


ジェフは困惑し、ハッとする。


「リリアンさま、自分はすぐ動けるよう、立っていますので、お気遣いなく」


思わず心の中で「バカめ」と思っちゃう。

だって、分からないかな? 近衛騎士であるアナタに、椅子は勧めないでしょうが!


「いえ、ジェフさまではなく、マリーさまのためにお持ちください」


この言葉にジェフは「!」となり、マリーも驚いて私を見ている。そんな、驚くことじゃないと思う。ここに収監されているけど、マリーは男爵令嬢で皇太子の元カノなわけだし。というか、事の次第によっては、今カノにだって返り咲けるわけだから。


一瞬、絶句したジェフだったが、すぐに重い鉄の扉をノックし、外にいる騎士に椅子をとってくれるよう伝えてくれる。


「もし良ければ、喉も乾いたので。紅茶をマリーさまと私の分、いただけますと嬉しいのですが」


あたしの言葉にジェフは目を白黒させながらも「分かりました」と応じ、すぐに紅茶を持ってくるようにと伝える。慌てるジェフと、腰に手を当て仁王立ち状態のあたしを見て、マリーの顔に微笑が浮かぶ。


その微笑は……とっても素敵なんだけど。

よく見ると、目の下にはうっすらとクマがある。

きっと昨晩は眠れなかったんだ。

可哀そうに……。


そうこうしているうちにも椅子がすぐに到着し、そこに座ると、テーブルと共に紅茶も運ばれてきた。テーブルは私が指定したわけではない。ジェフが気を遣ったのだと理解する。そこは……褒めて進ぜる、だ。


運ばれてきたテーブルはそこそこ立派で、ティーカップやティーポットもまあまあなものに見える。メイドが若干雑な手付きながら紅茶をカップに注ぎ出て行くと、ようやく一息つけた。


そこであたしは改めてマリーにここへ来た理由を明かす。


「私がここに来た理由。それは二つあります」


マリーはその輝くようなアメシスト色の瞳を真っ直ぐ私に向けている。


「一つ目。それはマリーさまに聞きたいことがあるからです。昨日の卒業舞踏会で、マリーさまはスコット皇太子さまに……その、断罪をされました。何か一言ぐらい発してもいいのに、何も言わずにあの場から連行されたのです。なぜですか? あの場で無言を貫き通せば、あなたが散々嫌がらせをしたこと、庭園での出来事、それはすべて間違いないと認めたも同然になるのに」


こちらへ向けられているマリーの視線に、問うように見つめ返すと。


「そうですね……。それについては……ちゃんとお話したいと思っています」


……! なんだ、話してくれるんだ!

思わず嬉しくなりながら、話を続ける。


「ありがとうございます、マリーさま。それはぜひお聞かせください。ただそれを聞く前に、二つ目の理由を話しておきます。私がここに来たもう一つの理由、それは昨日、庭園で何が起きたのか、それをマリーさまに話したいからです。話した上で、私は、マリーさまの無実を証明する証人になりたいと思うのです」


これはビックリサプライズでしょ。

と思ったが、マリーよりジェフが「えっ」と大声を上げた。


ジェフがここにいるのは不測の事態に備えるため。話に割ってはいる必要はない。……まあ、驚く気持ちは分かるけどね。何せ世の中では、あたしはマリーに嫌がらせを受け、マリーを嫌っていると思われているわけで。でも、ここでジェフに話の腰を折られたくないから、ジロッと睨むと。


ジェフはハッとして詫びるように頭を下げ、視線を床に落とした。

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