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完結●断罪終了後に悪役令嬢・ヒロインだったと気づきました!詰んだ後から始まる逆転劇  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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13/47

13:まさか~マリー~

 ジェフは一晩よく考えるようにと言った。

 でも私の考えは変らない。

 嘘の証言でここから出るわけにはいかない。

 ジェフの求婚を受けるつもりもなかった。


 ゆっくり体を起こし、ベッドから起きた。

 当然だが、熟睡などできなかった。

 それは自分が置かれている今の状況のせいもあるが、それ以上に……。


 明かりが消えたこの部屋には、物音が絶えなかった。

 つまり、ネズミ、虫が徘徊する音が聞こえ、ぐっすり眠るなど無理な話。


 孤児院にいた時。

 同じだったと思う。古い建物だったし、床にも壁にも穴があった。

 でもその時は、子供だったから。

 日中、大騒ぎしている。消灯時間になり、ベッドに潜り込んでも騒ぎ、怒られ、そして眠りに落ちた。もう朝まで起きることはない。


 でも今はその時と違う。

 結局、明け方のほんのわずかな時間だけ、浅い眠りについた。


 ひとまず着替えを行う。

 寝間着もグレー、日中着るワンピースもグレー。

 味気ない。

 でも。

 格子がはめられた窓から見える季節は……。

 とても清々しい。

 ノートル塔の周囲は牧草地帯。

 周囲には緑が広がり、遠くに山並みが見え、ゆっくり昇る朝陽が差し込んでいる。鳥の鳴き声が聞こえ、遠くでニワトリの鳴き声も聞こえた。とても平和に思える。


 ガン、ガン、ガン。


 重い鉄の扉を荒々しく叩く音に、思わず飛び上がりそうになる。振り返ると、今まさに、濁った音を響かせ、厚い鉄の扉がゆっくり開くところだった。


 メイドが朝食をのせたトイレを手に、部屋へと入ってくる。

 その後ろに一人の騎士が見張りについていた。


 文机に置かれた朝食は、夕食と変わりない。

 具のない、でも味だけは濃いスープ。干からびて硬いパン。ドライフルーツのアプリコット。そして水。


 無表情なメイドはそのまま出て行くが、騎士がその場に残っている。


 夕食では食事中に騎士はいなかった。

 見張り……?

 昨晩、ほとんど手をつけず残したから、ちゃんと食べるのを確認するつもりなのだろうか。


 ため息をつき、文机の方へ向かうと。


「マリーさま」


 声に心臓が止まりそうになる。

 まさかと思い、振り返ると、部屋に残っていた騎士は、被っていた兜を脱いだ。兜の下から現れたのは……。


 デレク・コーツ。


 コネリー家に仕えるバトラーの息子で、年齢は私と同じ。孤児院から引き取られた私の話し相手であり、身の回りの世話をしてくれた従者だ。


 コネリー家は男爵という爵位こそがあるが、経済的に余裕があるわけではない。私の専属メイドはおらず、ドレスや入浴の時は、コネリー夫人のメイドが手伝ってくれた。それ以外はデレクが私をサポートしていたのだ。


 思わず抱きつきたくなっていた。

 でも。

 幽閉された身であっても。

 デレクは私の従者で、私は男爵令嬢。

 ぐっと手を握りしめ、衝動を抑え、声をかける。


「……デレク、来てくれたのね。でも騎士に変装って……」


「このような形での対面となり、申し訳ありません。正攻法で面会を頼んでも、断られてしまったので……。コネリー夫妻もとても心配しています。お体には問題はありませんか? 何かされていませんか?」


 コネリー夫妻が心配してくれている。

 その事実に胸が熱くなった。

 もし私が孤児のままでいたら。

 私が野垂れ死んでも悲しむ人は……いただろうか?


「そうだったのですね。私は大丈夫です。ここは牢獄ではないので、食事もありますし」


 デレクは翡翠のような澄んだ瞳を、文机に置かれた粗末な朝食に向けた。そしてため息をつく。


「……皇太子さまの元婚約者が口にする料理には思えませんが」


「仕方ないわ。私はリリアン様の殺人未遂容疑でここに幽閉されているのだから」


「コネリー夫妻も僕も、マリーさまがリリアンさまを害するようなことをしたとは思っていません。噂は聞いています。マリーさまがリリアンさまに散々嫌がらせをしていると。でもそれは事実ではないですよね? 心優しいマリーさまが、そんなことをするわけがないです」


 幼い頃から一緒にいるのだ。デレクは私のことをちゃんと分かってくれていた。


「ありがとう、デレク。私は……リリアン様に嫌がらせをしたつもりはないわ。偶然、ぶつかってリリアン様が突き飛ばされる形になったり、当たったはずみで紅茶がかかってしまったり。そんなことは幾度もあったけれど……。それが……嫌がらせをしていると捉えられ、リリアン様がスコット皇太子様に訴えていた……のかもしれないわ」


 私の言葉を聞いたデレクは、サラサラのダークシルバーの髪を無造作にかきあげ、深々と息をはく。そして探るように私を見つめた。


「やはり、あの女は信頼できないですか?」

「……信頼? どういうこと?」


 デレクは……手短に昨日、卒業舞踏会の会場となったフィルホールへ侵入したこと、そこでリリアンと話したことを私に聞かせた。


 まさかデレクがフィルホールへ侵入していたなんて。スコット皇太子を気絶させ、リリアンのことを……。その件についていろいろ問いたいと思った。でも話を聞いている最中に、扉が一度ノックされていた。時間がないと思ったので、そのこと以上に気になる件について、確認することにした。

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