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非モテ女子シリーズ

女装キャラ~非モテ女子の苦悩~

作者: まきお

 その違和感に気付いたのは、高校3年の終わりだった――。


「おーい! まきお(私の名)、ちょっといいか?」


 午後のホームルームが終わった後、担任に呼ばれた私(性別・女)は教壇へ向かう。


「何ですか? 先生」


 クラスの担任は40代英語教師(妻子あり)。教育熱心で愚直な性格の為か、多くの生徒と信頼関係を築いている。


「いやぁ、文系の生徒2人に頼まれたんだが……お前の写真が欲しいそうだ」 


「えっ? 私のですか?」


「まあ、そうだ。どうかな?」


 気まずそうに顔を掻く担任。

 私の脳内では小躍りが開始される。


 やっとこの時が来た……。


 今まで友人や家族には散々「色気がマイナス」だと馬鹿にされてきたが、私の魅力が分かる男子がついに現れた! それも一気に2人! もう一度言う、2人だ!


 でも、文系か……。


 私の高校は共学で一学年7クラスもあり、文系男子の正確な人数でさえも、普通科に身を置く私は把握をしていなかった。


 でも、名前くらいは聞いておきたい!


「ふーん、そうですか……で、名前は?」


 脳内の小躍りは躍り狂うを通り越して、もはや祭り囃子(ばやし)をBGMに、御輿みこしまで登場している。

 そんな感情を押し殺して、私はあくまでクールにモテる女を演じて見せた。


「それが『恥ずかしいから言うな』と念を押されてな……まあ2人とも()()だし、理解してやってくれ」


 ん? 今何て? 「女子」って聞こえたような……。


「先生……『写真が欲しい』と言うのは、()()なんですか?」


「ああ、実はそうなんだ」


 担任よ、どうしてそんな依頼を受けた……。


 世界最短であろう祭りを終えた私は「無理です、すみません」と、虚無の感情で注文を断った。



 冷静に考えてみれば、私が殿方にモテるなど現実的ではない。


 顔は奥二重の男顔。髪は常に短く、胸は下着を装着せずとも問題なしの「まな」もつかない、透ける程に極薄な「ベニヤ板」だ。


 当時の卒アルや写真を見れば、女子の制服を借りて身に纏っている、ふざけた男子にさえ思える始末……。


()()()女性になろう……」 


 高校卒業と同時に、私は何とも情けない目標を心に掲げた。


 

 悲しき目標……それでもやる気だけは十分にある!


 ファッションはスカートを優先、メイクは常に流行を取り入れ、マツゲは長く! 唇は艶やかに! 

 胸をパットで偽装し、毛量に悩まされた髪も死ぬほどすいて、どうにか肩まで伸ばした。



 こうして7年も努力をした結果――それはあまりに虚しく、報酬(殿方からのまともなお誘い)は1つも得られなかった。

 一方でそんな私を嘲笑うかのように、同性からのアプローチは増えていく。


 会社帰りを狙った待ち伏せや、食事のお誘い、ケータイ番号とメアドが書かれたカードを渡された覚えもある。


 勿論、全て女性からだ……。

 友人や会社の同僚達には「付き合ってみれば?」等とからかわれたが、私は全てお断りをしていた。


 それでも一度だけ、しつこく懇願する女性を回避できずに、ランチデートを余儀なくされる。


 しかも誘ってきた筈の彼女が、まあ喋らない。

 会話は一向に弾まず、9割私が喋っていた記憶しかない、悪夢のような時間だった。


 その後どういう訳か、彼女からの連絡は一切無し。 

 割り勘がマズかったのか? 

 喋りすぎたのか?

 超絶美人だったこともあり、少し残念な気もした。



 そんな経験を繰返しながら悩み続けた私は、ある日とうとう髪を切り、胸パットと濃い化粧を封印――。


 別に()()を諦めた訳ではない。

 単純に「女装が似合わない」と自覚をしたからだ。


 その事実を私に教えてくれたのは、図々しい女装の男性と、上品な年配女性だった……。



「アンタ後輩でしょ? 牛丼奢ってよ」


 これは居酒屋帰りの始発も出でいない早朝の駅前で、見知らぬ女装姿の男性が(だけ)に発した台詞。


「えっ……?」


 何の後輩? 何故に牛丼? 言葉の意味が理解できずに困惑している私を見て「あら……違うのね」と、男性は謝罪もなく去って行った。


「……いや、仲間じゃねぇーしっ!」


 帰宅後――酔いが冷めた頭脳で導きだされた解釈に、私は早朝から深く落ち込んだ。



 それから2年。

「牛丼の衝撃」から自問自答をしながらも、まだめげずに自分磨きをしていた私。暫く女性からのお誘いもなかったので「ゴールは目前だ!」と確信していた。


 しかし現実と言う悪魔に、容赦は無い。



 ある日、上品で優しそうな年配女性に道を聞かれた。


 親切丁寧に対応を終えた私に、女性は「ありがとう、お兄……」の先から、まさかのフリーズ。困り顔でこちらを見つめた――。


 いつまでも()()が出せない女性。

 私は笑顔で軽く頷いて、その場を後にした。


「もうやめよう……」 


 私は挫折ではなく、ようやく理解ができた。

 そもそものポテンシャルが皆無なのに、努力が報われるなんて幻想に過ぎなかったのだ。


 ならば無理に飾らず、潔く中身で勝負をしようじゃないか! 


 こうして中身もまあまあ男性寄りな私は、殿方からモテない人生にさらなる磨きをかけた……。

気が向いたら、次は『非モテ女子~暴走編~(仮)』

でも、書こうかと思います。


連載小説も2作品投稿しています!

現代社会を皮肉る目的で書いているので異世界には転生しませんが、お時間があれば是非読んでみて下さい!

『わがまま戦隊、棚上げレンジャー』【完結】

『魂再生機構』【連載中】


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― 新着の感想 ―
[気になる点] >>超絶美人だったこともあり、少し残念な気もした。 ( ゜Д゜)
[良い点] 男性も女性も、中身で勝負じゃ! [気になる点] 『非モテ女子~暴走編~(仮)』が気になります! いつかお願いします!
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