1.命懸けの出会い
地上に連れ出されてからもう3日になる。
レウルカ・ハイルシア、通称リュカの家に居候のような形で住み着いて彼女の家事を担当している。リュカは日中はパーティーで活動しているため、一人だと特にやることもなく暇を持て余している。
空き部屋を貸してもらい自分の寝床としているが藁を包んだだけの毛布だと落ち着かずに入られない。部屋を与えられているだけありがたいのだが早くもストレスが溜まってきた。
何でこんなことになっているのだろうとふと初めて彼らとの出会いを思い出した。
3人が自分を囲んで警戒している。出方を伺っているのかもしれないがこちらはどうしようもない。動き方を知らないのだから。
緊張の糸が張り詰めたまましばらくの時間が過ぎる。
「もういいんじゃないか?こいつ動かねぇし。ビビるだけ損だよ。」
オーグが疲れたのか武器を下ろして警戒解除を促す。それも見てシーザーも膠着した現状に「ふぅ...」と一息吐き、
「そうだな。これ以上何かが変わる気がしないし落ち着くとするか。休憩もとれたしこのまま帰るとしよう」
異論はないのかリュカとオーグも頷いて帰る支度を整える。リュカは度々こちらに視線を向けては思い詰めたような表情を浮かべる。
オーグがその様子を不思議に思い声をかける。
「大丈夫だよ。焦らなくてもこれが手に入れば俺たちの目標は近いうちに実現するって。」
「...わかってるわよ。でも...」
自分を見つけた時とは全然違う雰囲気になったリュカに何か事情でもあるのだろうかと色々感じ取りながらもまた来てくれるなら、と彼らの帰りを大人しく受け入れることにした。
リュカがゆっくりと近づいてきて目の前でた立ち止まる。
「行くぞ。あまりそれに近づくなよ。何があるか分からないんだ。ユニオンの調査を待とう。」
シーザーがリュカに注意するがリュカは聞こえていないのか手を伸ばし、自分が入っているカプセルのようなものに触れようとする。表面に右手が触れ、それに左手も続く。
静電気が発生したのかと思うようなバチッとした音が一瞬鳴り、リュカは思わず手を離そうとするが手のひらが張り付いたかのように引き離すことができない。
「えっイヤッ、なんで!」
取り乱すリュカに2人が急いで近づく。異常事態への素早い反応から2人の経験値が伺える。
「クソッ、トラップか!」
「今助けるよ!」
2人ががりでリュカをカプセルから引き離そうとするがびくともしない。
「イったいもうやめて!...んっ、ゔぁあああああ!」
体を無理に引っ張られるあまりの痛みに思わず声を荒げる。そして追い討ちをかけるように張り付いた手のひらから蒼黒い痣のようなものが腕に伸びてくる。激痛を伴うのかリュカは呼吸を荒くしながら叫ぶのを繰り返す。
「...ッカッ...ヒューッ、ヒュー、んあ゛ぁぁあああ!!」
「クソッどうなってやがる!リュカ!」
「侵食系の毒かもしれない、耐毒アイテムを使う!」
ポーチからアイテムを取り出すシーザーに対しオーグは取り乱し状況を打破しようと自らの武器である握り拳大の鉄球を取り出し、カプセルに向かって投げつける。
「やめろオーグ!」
「オルぁあ!!!」
シーザーの静止も間に合わずオーグは渾身の一撃を放つ。
投擲の瞬間、鉄球を黒い雷が纏う。一閃...
ドゴォ!!と空気を震わせる激しい音が遅れて鳴り響く。
しかし鉄球はカプセルの前にグニャっと赤く高熱を帯びながら落ちているだけでカプセルは何事もなかったかのようにリュカを苦しめていた。