プロローグ
身体を包み込む温かさをどれだけ長い間感じてきたのだろう...
意識はあるのに永遠に目が覚めない感覚。覚めるとはどういうことなのかすらわからない。この意思がどのようにして生まれ、自らの存在すら正しく認識できない...
なのに自らが人であるということはなぜかわかる。
檻に閉じ込められ封印されてるかのようだ。でもこの温かさが希望を与えてくれる。そんな気がしてならない。
ガシャガシャと金属が擦れる音が近づいてくる。初めて知覚した騒がしい音に意識は興味を抱く。カチッと小さく音が鳴ったかと思えば唐突に世界が眩しくなった。この数秒だけで2つもの感覚を刺激され落ち着かずにはいられない、なのにそれを表現するすべがない。
気づけば音には複数の足音や誰かが話してる声が混じっている。
「これは新しい古代遺跡の発見で間違い無いわね!」
「この地域に国があったという話は聞いたことないけどなぁ」
自信ありげな少女と疑念ありげな青年が話しているような声だ。古代遺跡...?何を言っているのかわからない。
「おい...これ人が入ってるぞ!にーちゃん見てみろよ!」
少年の声がする。目の前で叫ばれているかのようだ。
「マジじゃねぇか...生きてんのかこれ?」
「これって古代のオートマタじゃない?東の帝国の遺跡で何十年か前に見つかったやつと似てる気がするわ。私もしかしてマスター権限手に入れられるの?」
どうやら3人組のようだが興奮気味だ。オートマタ?マスター権限?さっぱり話が入ってこない。どうやらこの意識に伴う知識は乏しいらしい。少女の口調からするととんでもないものを見つけたようだ。
「なんでリュカのものになる前提なんだよ!俺が最初に見つけたんだからこれは俺のものだろ!」
「落ち着けオーグ。これは俺たちだけで対処できそうな問題じゃない。まずは帰ってユニオンに報告だな。俺たちのパーティーが見つけたのは間違いないから所有権は俺たちにある。慌てることじゃないさ」
「そうやって本当はシーザーが自分のものにしたいだけなんじゃないの?」
「......それは後で考えよう。とりあえず休憩しようか。」
この空間で一人だけ蚊帳の外にいる気分だ。とりあえずシーザーと呼ばれる青年が指揮をとっているようだ。今は休憩しているようだがもうすぐ帰るらしい。このまま帰られるとまた孤独になってしまう...
「イ...ァ......ダ...」
3人が一斉に立ち上がり武器を手に警戒する。敵意、いや、恐怖?が向けられているのが見えてないのにわかる。今の声はどこから出たのだろう?自分が発したものなのかいまいちわからない。
ただ、彼ら発見した人が自分という存在なのではないかと思い始めた。