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第34話 ルギウスからの書状

「なるほど、確かにそれはクロが関係している可能性が高いな」


 水晶玉の向こうにいる賢者アンバスが三角帽子の奥で眉間にシワを寄せている。


 ハダル商会から情報を入手した後、僕たちはリラが長を務めるミダス商会に戻ることになった。

 ファーリス村にいるアンバスにも確認を取りたいと言ったところ、リラが遠方と交信するための水晶玉を貸してくれて、今はアンバスを含めた作戦会議が行われている。


「でも、クロって奴ならファーリス村でリジルが倒したでしょ? おい賢者、そこのところどうなのさ?」

「おチビは相変わらず口が悪いねぇ。こっち来たら覚えとけよ」


 ナルは慌てて獣耳を抑えていて、ルアがナルの頭を撫でながらアンバスに問いかける。


「でも、アンバス様。ナルちゃんの言う通り、あの呪術師はリジル様が確かに倒したはずですよね?」

「ああ。リジルには言ったかもしれねえが、かつて初代の勇者と戦った時にもアイツは倒したはずなんだよ。もっとも、リジルほど簡単にじゃねえがな」

「なるほど。それが生きていたということは今回も……」

「その可能性は、ある……。そもそも、あのクロって男は呪術を操るネクロマンサーだからな。何かしらの方法で生き延びていたとしてもおかしくはない」


「それじゃあ、そのクロって男は今どこにいるッスか?」

「そんなことまで分かるかよ。とりあえずは相手の動きがあるまで警戒しつつ、王都周辺を探すしかねぇだろうな」


 ドゥーベの問いにアンバスが水晶玉の中で小さくため息をつく。


 やはり大狩猟祭でのデュラハンの一件はクロが関係している可能性が高いと思うが、アンバスの言う通り現状ではこちらから手が出せない。

 クロがまだ生きており、かつ王都の周辺に留まっていると仮定して【索敵】のスキルでしらみ潰しに探知していくなどが取れる手段だろう。


 と、そこでこれまで黙っていたリラが身を乗り出し、水晶玉に向けて話しかける。


「アンバス殿。クロという男と関わりがあったハダル商会の者によれば、奴は『器』を探しているそうなのだが、心当たりはあるだろうか?」

「分からん。分からんが、クロは魔王を復活させるために器が必要だと言っていた。単なる絵空事かもしれねえが、奴の動きには注意する必要があるな」

「そうか……」


 魔王はかつて世界を混乱に陥れた存在だ。

 初代勇者が仲間たちと力を合わせて勝利したと書物などには記されているが、アンバスによれば本当に紙一重の戦いだったらしい。


 ――オレもあんな奴とは二度と戦いたくねえからな。

 あのアンバスがそこまで言う存在が魔王だ。


 そんな存在を蘇らせる方法があるのかは分からないが、クロが「器」にとなる人間を探しているのは事実だ。


 ひとまずは王都を中心として警戒にあたるということになり、その日の話は終了した。


   ***


 ハダル商会の殲滅から数日が経ったある日、それは起きた。


「リジル、君宛に文が届いている」


 みんなが集まっている場でリラが一枚の書状を渡してきた。

 見覚えがある、というかファーリス村で大狩猟祭の誘いを受けた時と同じ書状だ。


「何これ? また喧嘩売ってるの、コイツ」


 我先にと手紙を開いたナルがそんな声をあげる。

 差出人はルギウスだろう。


 中身に目を通すと、そこには決闘を申し込む旨が書かれている。

 明日、陽が最も高くなる時間に王都の広場で雌雄を決する、という内容を可能な限り挑発的に綴った文面だった。


「この前の大狩猟祭の件があったのに、まだ懲りてないんッスかねぇ。こんなの真に受けなくていいんじゃないッスか、リジルさん」

「ツルツルの言うとーり! あんなヤツと戦わなくてもいいでしょ」


 ナルとドゥーベがお決まりの言い合いを繰り広げているのを尻目に、僕は再度手紙に目を落とす。


「リジル様、どうかなさいましたか?」


 僕の様子を横で見ていたルアが覗き込んできた。

 僕は近くなったルアの顔にびっくりして距離を取る。


「あ、ああ。いや……、何でルギウスはここまで僕を目の敵にしてるのかなと思って」

「リジル様にシリング王からの依頼を取られたような気がして悔しかったのでは? 元々、子供のようなプライドをお持ちの方ですし」


 ひどく辛辣な評価だった。

 あながち間違ってはないかもしれないが。


「どうなさいます? リジル様」

「ああ。僕としてはこの決闘を受けようと思う」


 僕の言葉にドゥーベとナルが少し驚いた表情で見てきた。


「リジルさんってば真面目ッスねぇ。リジルさんが勝ってもまた負け惜しみ言ってくるんじゃないッスか?」

「そーだよ! それに今はクロのことを探さなきゃいけないんじゃないの?」

「ああ。だから、僕が勝ったらクロの捜索に協力するよう促してみようと思う」


「なるほど。クラフト家は仮にも勇者一族ですし、独自の情報網も持っていますからね。良いお考えかもしれません」

「もちろん、そう簡単に従ってくれるかはわからないけどね」


 僕は苦笑交じりにルギウスから送られた書状を机の上に置く。


 今はクロに繋がる情報が少しでも欲しい。

 もしクロが生きていて魔王を復活させようとしているのであれば、それは僕たちだけではなく世界に関わる問題なのだ。


 今は王都周辺の警戒を続けているが、特段有益な情報を入手できているわけじゃない。


 とにかく、明日のルギウスとの決闘で何か進展させることができれば良いと、この時の僕はそう思っていた――。


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