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第12話 ファーリス村を救う欠落紋の英雄

 ファーリス村に着いた僕たちは愕然とした。


「ブライさん! アオイさん!」


 僕は苦しげにうずくまっているファーリス村の人たちの元へ駆け寄る。

 村長のブライさんや受付嬢のアオイさんを始めとして、皆が皆苦しそうな呻き声をあげていた。


 どうして……。これじゃまるでドゥーベと同じような……。


「くそっ。嫌な予感が当たっちまったか……」


 アンバスがその惨状を見て悪態をつく。


「アンバスさん、どういうことですか!?」


「そもそも、呪いってのは時間をかけて対象者に移すものなんだ。今重要なのは、どうしてかけられたか、じゃない。どこでかけられたか、だ」

「どこで呪いをかけられたか……」


 ドゥーベはファーリス村の人間だ。

 となると……。


 アンバスは僕を見てはっきりと頷く。


「その気になれば呪いってのは広範囲に撒き散らすことができる。それこそ、井戸水なんかに呪術を組み込めばな。ファーリス村の人間は全員呪いに侵されてるといっていいだろう」


 そんな……。


 ファーリス村の人は数十人はいるだろう。

 ヒーラーが見つからなければ大惨事になる。


「と、とにかくヒーラーを探さないと! ブライさん……、ブライさん!」

「……おお、リジルさん。戻られたのですか……」

「ブライさん、この村にヒーラーの紋章を持った人はいませんか!?」


 僕は村長のブライさんに事情を話し、この村にヒーラーがいないか尋ねる。


 しかし……、僕の問いかけを聞いて、絶望したブライさんの顔が答えだった。


「残念ながら、この村にヒーラーはおりませぬ……。いえ、過去にはそうした人間もいたのですが、今は……」


 ――くそっ! どうしたら……。


 この村の人たちは僕が欠落紋を持つ者だからと馬鹿にせず、暖かく接してくれた。

 そんな人たちを見殺しになんて、絶対にしたくない。


 何か、何か方法は無いのか?


「アンバスさん、薬草や回復薬で何とかならないでしょうか!?」


 もし回復用の道具で村の人たちの状態を改善できるなら、ルアの【収納魔法】に貯蔵している分がまだある。


 藁にもすがる思いで僕はそう言ったが、アンバスははっきりと首を横に降る。


「無理だ。呪いは体内に組み込まれた術式そのものをどうにかしなきゃならねえ。回復用のアイテムじゃ呪い自体への効き目は無い」


「術式……」


 アンバスのそれは現状を解決する手立てが無いという宣告だったのかもしれない。

 しかし、僕はアンバスが言った言葉に引っかかるものを感じて、考えを巡らす。


 そうして、その考えはある一つの疑問に結びついた。


「……アンバスさん。アンバスさんが召喚していた泥人形、あれも術式の一種なんですよね?」

「……ああ。そうだが、それが何か? …………っ、そうかっ!」


 そう――。


 僕は一度、アンバスの召喚した泥人形を【スキルブレイク】で破壊している。


 アンバスはそれを術式で組んだものだと言っていた。

 そして、呪いも体内に術式を組み込むもの。


 だったら――。


 僕は目の前に横たわっているブライさんの体の上に手をかざす。


 紋章の一部が欠けた、【欠落紋】が浮かぶ右手だ。


 ――頼む! この紋章を持つ僕を受け入れてくれた人たちを救うために!


「【スキルブレイク】!!」


 僕がかざした右手に全意識を集中させてスキルを発動させると、欠落紋の周りが光に包まれ、確かに何かを破壊する手応えを感じた。


「……お、おお! これは!」


 光が収まると、横たわっていたブライさんが体を起こす。


「ブライさん、無事ですか!?」

「え、ええ! 体を縛り付けていたものが無くなって、痛みが引いていく感じがします」


 すぐにアンバスがブライさんの体を確かめ、呪いの状態を確認する。


「驚いた。完璧に解呪されていやがる。まさかクリティカルの紋章の力を攻撃以外に使うとはな」

「良かった、それじゃあ!」


「ああ、この方法で解呪していけば村人たちは助かるだろう――」


   ***


「フェンリルの件に引き続き今回も村を救っていただくことになるとは……。本当に、本当になんとお礼申し上げていいか……!」


 無事、ファーリス村全員の解呪に成功した後、村の人たちから怒涛の勢いでお礼を言われた。

 あまりに勢いよく皆から頭を下げられるので、こちらが恐縮してしまうほどだった。


「そんな、ブライさん。顔を上げてください。僕は皆さんを救うためにできることをしただけで……」


「それでもッスよ、リジルさん。俺たちがリジルさんに救われたのは事実なんッスから! って、いてててて」

「このハゲ、じっとしてろって言っただろ。解呪は成功しても、呪いは一度かかったら後遺症が残るんだからよ」

「うっ、そうだったッス。大人しくしてるッス」


「ま、これでとりあえずの危機は脱したがな。……おい、リジル」


 と、アンバスが僕の方に向き直って頭を下げる。


「ア、アンバスさん?」

「ファーリス村の奴らは最近でこそ関わる機会も少なかったが、世話になったことのある連中だ。オレからも礼を言わせてもらう」

「そ、そんな。アンバスさんまで……」

「まだ呪いの後遺症もあるし、お前にやって欲しいことはある。が……、お前は大勢の命を救ったんだ。それは誇って良いことだよ」


 あの賢者アンバスに礼を言われるなんて、余計恐縮してしまう。


「くひひ。あの横暴賢者が頭を下げてるぜ。やったなリジル!」

「お前もよくやったぜ、おチビちゃん」

「わー、耳さわんな!」


 アンバスはニカッと笑いながら、ナルの頭をわしゃわしゃと撫で回していた。


 その姿を見て緊張が解けたのか、僕まで頬が緩んでくる。


「本当にお疲れ様です、リジル様」

「ああ。ありがとう、ルア」


 とにかく、ファーリス村の人たちを助けられて良かった。



 今日は色んなことがあった日だった。


 欠落紋の真相を賢者アンバスに教えてもらい、自分の紋章が過去には強者の紋章だとされていたことに驚き、そして、その紋章の力でファーリス村の人たちを救うことができた。


 そうだ。

 せっかく授かった力なら、こういう風に使っていきたい。


 僕はそう考えて、笑顔の戻ったファーリス村の人たちを眺めるのだった。


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