名探偵の主人公
「久竜さんを殺害し、瀬良さんに罪を着せた真犯人、それはあなただ。
良子さん」
「・・・ご冗談が過ぎますわ、円城寺様」
フッ、と息が漏れる音が聞こえた
「【皆を驚かせるため悲鳴をあげて死んだふりをして】
可愛い一人娘から頼まれれば、何の疑いもせず引き受けますよ、九竜氏は」
黙って聞く良子さん
「悲鳴を聞き向かった我々の中で、一番最初に駆け寄ったあなたは、大胆にも我々の目の前で九竜氏を刺し、毒殺。この注射器でね」
注射器らしきものを掲げる
「・・・・・・瀬良さんの部屋のクローゼットの中にありましたよ」
「 」
良子さんから音にならないため息が漏れる
「動機は・・・お父上が瀬良さんとの結婚を認めなかったから?」
「そうよ」
ガタン、と椅子から立ち上がり
「お父様、世間体しか考えられない人だった」
ゆらゆらと亡霊のように
「そして、私のモノにならないなら」
瀬良さんに近づき
「ひっ!?」
左ポケットに隠し持っていたナイフを振り下ろ
「そこまで」
す前に、【俺は】良子さんの右手首を掴んで止めた
「あ?」
今まで隣に座っていた俺に、そこで初めて意識を向けたのだろう。
「離せ!」
左拳で殴りかかってくるが、掴んだままの手首ごと自ら地に倒れる
「ぐはっ!?」
地面に叩き付け暴れる良子さんを抑え込む
「離せこの糞が!!!」
「天野君、ぐっじょぶ」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「あの・・・天野さん、本当に、有り難うございました」
到着した警察に良子さんを引き渡した後
「円城寺の推理後はいつこんな感じですから、お気になさらず」
「でも、あなたが守ってくれなかったら今頃」
顔を真っ赤にしてもじもじしだす瀬良さん
「?」
「良ければ、連絡先・・・」
「さ!帰ろうか!天野君!」
突然俺と瀬良氏に割り込んでくる円城寺
「・・・そう言えば、なんで良子さんは瀬良さんに罪を着せようと?」
「たぶん相手にその気が無いことを、良子さんは感じたんだろうね。だから、犯罪者にして弱り切った後で…」
「…そうか」
私はそう呟いて、後ろを振り返る
「?」
きょとん、とする瀬良さんに
「これ連絡先です。俺の」
「!?」
「すぐかけつけますから」
「あの…」
事件関係者のアフターフォローも俺の役目。吹けば飛ぶような支えでも、何も無いよりはいいだろう
「それじゃあお元気で」
そう言って俺たちはその場を後にする
「やっぱり主人公みたいだよねえ、君は」
そう言って、名探偵・円城寺菜々美はクスリと笑った
完