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元社畜は聖女の語りを聞く


 何から話そうか。


 最初から。


 分った。


 アタシには小さい頃からずっと一緒の男の子がいるんだ。


 たっくんって言って、幼稚園の頃からずっと一緒で、家もお隣さんでよく一緒に遊んでた。


 大きくなっても普通に一緒いた。


 それが当たり前だった。


 そんな私達だけど中学卒業する時にたっくんが私に言ったんだ。


 俺はお前が好きだって。


 ああああぁぁ素敵!


かっこいい!


 何その顔。


 まあいいや。


 けど別に何かが変わったわけじゃなかった。


 一緒に遊んで、ご飯食べて、買い物行ったりそんな感じだった。


 一緒の高校に入ってもそれは変わらなかった。


 だだゲーム好きだったたっくんが電研ってクラブの連中の悪い影響を少し受けちゃたけど。


 ほんとにあいつらおかしいの。


 ゲームやるために学校休むんだよ。


 修羅の行とか言って何日も徹夜でやるの。


 たっくんはちょっとエッチなゲームを借りたりしてたけど、そのくらいなら許したわ。


 とにかくアタシ達は普通に高校生をやってたの。


 あれは夏休みの初めのころ。


 アタシの両親は山登りが好きでちょくちょく二人で出かけるの。


 週末に二泊三日で富士山を登りに行くってなってね。


 アタシはもっとたっくんに触れたかったしイチャイチャしたかった。


 だから覚悟を決めたの。


 前の日にたっくんに一緒に宿題をしようって言ったんだ。


 たっくんてば中々奥手で夏休み前にキスしたけどそれから何もなくて。


 だからアタシがガバッと行こうって。


 両親が出かけた後おっきなフランクフルトとケチャップを使って練習したの。


 マヨネーズの方が良かったんだけど油っぽくて。


 何をって。


 な、なめたり、とか。そ、その、挟んだり、とか。


 けど予想以上に興が乗っちゃってケチャップ使いすぎたの。


 いざお昼ご飯を作ろうとしたら足りない事に気づいてね。


 オムライスにケチャップでハートを書く予定だったのに。


 仕方ないからコンビニに行くことになって、ついでに何かお菓子も買おうって。


 ところがコンビニでケチャップ買おうとしたら物凄い音がして、訳が分からないのに胸の辺りが痛くて、気が付いたら目の前にカーナ様がいた。


 何でもジジイがアクセル全開でコンビニに突っ込んできてアタシは車と柱に挟まれて死んじゃったって言われた。


 本当に最悪。


 泣いても叫んでも無駄だって何となく分かった。


 そんなアタシにカーナ様は言ったの。


 聖女として異世界に行ってほしい。

 

 その世界には魔王がいてそいつをやっつけたらどんな願いもかなえてあげるって。


 元の世界に、何の問題もなく生き返る事が出来るって。


 アタシは聞きたい事は全部聞いた。


 異世界の事。聖女の事、魔王の事。


 それから聖女としての能力として三つの内一つを選ばせてくれたの。


 盾と笛と翼。


 だからよく考えて笛を選んだ。


 どうしてって。


 魔王を倒すんだよ。


 アタシ一人じゃ無理。


 まして聖女なんだから後方からの支援じゃない。


 だったら自分を守るだけの盾なんかとってどうすんの。 


 翼とどっちにしようかよったけど仲間と一緒ってのを考えたらね。


 そんで最後に一つだけお願いしたの。


 魔王を倒すのに一年やそこらで済むとは思えない。 


 だから年を取らなりたくないって。


 何年かかっても必ず魔王を倒すけど年を取ると衰える。


 そうお願いしたら偉いって褒められて、いいよって言われた。


 そういうのを待ってたって。 


 で、カキガハラに召喚って形になったの。


 ガチで行ったわ。


 とにかくレベル上げ。


 王様にお願いして騎士の人達と迷宮にもぐった。


 毎日毎日ね。


 寝る前には限界まで魔法を使って魔力回復薬を飲んで寝て起きてまた戦った。


 一年くらいそれをやった。


 そしたら段々王様とかその辺の連中に魔王軍と戦ってるからそっちを助けてほしいって言われたの。


 正直嫌だった。


 だってそっちは怪我した人達の治療とか兵士達の補助だったしね。


 魔法を使うのはうまくなるけどレベルは上がらないし。


 どうしてって。


 その辺はカーナ様に聞いてたよ。


 仲間と一緒に戦わないとレベルは上がらないって。


 だからアタシは断ることにした。


 そしたら聖女様は我々を見捨てるのかって言いやがった。


 馬鹿じゃないの。


 アタシは魔王を倒すためにいるってのに。


 そしたら勇者を召喚するまでは待ってほしいとか言って来たんだ。


 召喚の儀式をしたからって勇者とか聖女が来るわけじゃない。


 それに見合う人をカーナ様が見つけられてたらで、なおかつ世界のルールに反しない事が条件。


 けど必要な魔力を貯めるのに一年以内だしその時は必ず勇者か聖女を呼べるって。


 だからそれまで助けて欲しいって。


 本当に嫌だったけど仕方なかった。


 ゲームとかと違って国からの支援を受けられるってのは大きいからね。


 それまでは魔法を使いまくって熟練度的な奴をとことんまで上げておこうって。


 でも問題があって、召喚されてからずっと同い年で王子のネクスがちょっかいかけてきてた。


 気にいっただの、お前は俺のものだとかちょっと顔が良くて権力持ってるからって馬鹿王子が。


 アタシには好きな人がいるって何度言って自分の方が良いとか向こうの事なんか忘れろとか。


 もちろん相手なんかしなかった。


 そんで向こうに行ってしばらくしてから特殊な魔力回復薬を作る錬金術師と知り合って結構会うようになってた。 


 ザイードって二十歳くらいの人。


 魔力回復薬は結構必要だったしあの人のは特に効果が高かったんだ。


 その材料がちょっと特殊なのがあって穢れを払わないといけないってのがね。


 だから時間がある時は一緒に採取したりしてたんだ。


 簡単な調合とか教えてもらったりして、それが結構使えるからありがたかったんだ。


 そしたら君は才能あるから一緒に錬金術師をやろうとか言ってきて。


 ちょっと迷ったけど断った。


 残念だとかせっかくの後継者がとか言ってたよ。


 うん。ザイードはね、本当に弟子が出来て嬉しかったんだよ。


 隠せてなかったけど。


 そんな折、魔王軍が本腰入れtれ攻めてきたの。


 魔王七魔人セブンデイズの一人、木のヤン


 ウッドゴールムやらトレントなんかの植物系の魔物が群雲のようだった。


 兵士達も必死で戦ったしアタシも限界まで頑張ったけど、倒れた奴から芽が出てまた立ち上がってくるんだ。 


 とくに穢れを受けてる奴は火の魔法にある程度の耐性があって外の壁が破られて、内側で何とか持ちこたえてたけどそれも時間の問題になった。


 だから逃げようと思ってたんだ。


 何、リッシュ。


 何かおかしいかな。


 そうだよねカイさん。


 勝てないなら逃げて強くなってやり返せばいい。


 負けたら終わりだし。


 準備してたらネクスがやって来て聖女の力を一気に高める方法があるって言ってきた。

 

 胡散臭いよね。


 うん誓約だよ。


 今思えばアタシは考えが甘かった。


 守れる内容なら問題ないってね。


 三つ誓った。


 一つ。困っている人を助ける。


 二つ。人を傷つけない。 


 三つ。聖女としての役割を果たす。


 教会でカーナ様に誓ったよ。


 そしたらアタシの力はそれこそ比較にならないほどに高まった。


 木のヤンの軍の穢れもまとめて払えた。


 向こうもそれで引いて行った、


 国の人達も聖女様万歳ってね。


 けどそれからが問題でね。


 うん、そうだよ。


 誓約が強すぎて行動が縛られた。


 またレベル上げに戻ろうとしても、助けて欲しいと言われたら断れない。


 ネクスがアタシに触っても力ずくで振り払えない。

 

 物理的に傷つけてしまうから。


 だから会わないようにしようとしても困ったから助けて欲しいって言われたら逃げられなかった。


 アイツ最初からそのつもりだったんだ。


 しかも何代か前の王子は聖女と結婚したから自分と一緒になるのも聖女の仕事だと言いやがった。


 王様に事の次第を話してあのバカを何とかしてくださいってお願いした。


 けど聖女の役割を果たして欲しいとしか言わなかったの。


 アタシ達異世界人の血を引いた子供は特別な力を持ってる事が多いらしいからそれが欲しいかったんだ。


 どうしたのリッシュ。、


 聖女を害して女神様が怒ったりしないのかって。


 ああ、神罰の事だね。 


 それは本当に聖女を理不尽に傷つけた場合だね。


 そっかリッシュも知らなかったの。 、 


 神罰は聖女に決定的なことした場合にくだされる。


 それこそ聖女を殺したり何年も理不尽に扱ったりしない限りカーナ様は直接手出しをなさらないよ。


 だからどうしようもなくてザイードに相談した。


 そしたらマジックアイテムを作ってくれた。


 これ、消音のピアス。


 魔力をこめるとアタシの周り2メートルくらいの音を遮断するんだ。


 助けを求める声が聞こえなければましになるだろうってね。


 町を歩けばどいつもこいつも聖女様お助けくださいばっかり言いやがる。 


 怪我しただの病気だのってアタシは医者じゃないっての。

 

 ある日我慢できなくなって、たまたま国にやって来た大司教様に聞いたんだ。


 何とかならないかって。 


 誓約の内容を知らなかったらしくひどく驚いてた。


 そして教えてくれた。


 聖女の本来の役割は勇者と共に魔王と戦う事。


 勇者と一緒に戦うようになればそれが最優先になるから今みたいに助けを求められても無視できるよって。


 そんで王様に文句言ってくれてたんだ。


 お前達は聖女様を何だと思ってるんだって。


 勇者様を呼び出すまで教会で保護するって。


 本当に嬉しかった。


 一年以内に勇者を召喚する。


 それは王様がアタシにはっきり言ったからね。


 例え王様だって聖女に誓ったからには覆せない。


 勇者は魔王を倒すために召喚される。


 そしたらアタシは魔王の戦いに戻れる。


 そう信じて毎日魔法の練習をして過ごした。


 そんなある日。


 西からかなりの数の穢れに侵された魔物が出たって事でアタシが行くことになった。


 止められたんだけどお世話になってたシスターの実家がそっちにあってね。


 で、魔物は蹴散らした。


 何その顔。


 誓約のおかげでメッチャ強くなったんだから仕方ないじゃない。


 その帰りに小さな村があってね。


 その村の外れに小屋があってそこに子供が一人で住んでたの。 


 ケイズってガキ。


 村の連中が言うには忌み子だって。


 何その顔。


 はいはい忌み子忌み子って。


 女主人公の時に結構な確率で登場するって何。


 男だろうって何で分かったの。


 村の連中がそう呼んでるだけで本当は逆で恩恵があるんだろうって、そうだよ。


 何で分かるの。


 ワンパターンって、確かにそうだけど。

 

 どうせ実は精霊の愛し子どか言うんだろって、そうだけど。


 とにかくそいつがアタシと一緒に行きたいとかぬかしやがって、村の連中も厄介払いが出来るって喜びやがった。


 ゴミ共が。 


 もちろんアタシは断りたかったけど断れなかった。


 水の恩恵を授かってやがったかし教会の人達はみんな良い人だったから、今までつらかっただろうって言って普通に孤児院に居座りやがった。


 その子嫌いなのかって。

  

 ええ、大っ嫌い。


 いちいち仕草がわざとらしいって言うか、なんか昔近所にいた変態親父と同じ感じがしたんだ。


 その後の村は当たり前だけど二か月ほどで干上がったらしいよ。


 それからはケイズはアタシの後を引っ付いてきた。 


 周りの連中は精霊の愛し子が聖女様を慕ってるって嬉しそうに言ってたけど冗談じゃい。


 あいつ見た目は子供だけど中身は違った。


 何度か独り言が聞こえたけど日本で三十過ぎたクソニートだったらしいよ。 


 村の連中に殴られて死んだケイズとして生き返ったって。 

 

 精霊もどこ見てんだか。

 

 中身別人なのに。

 

 アタシの事をやらしい目で見てるような気がしてたんだけど納得だった。


 すぐにぶん殴ってやろうと思ったんだけど出来なかったしそれどころか悪口も言えなかった。


 アタシの事をおねえちゃんとか言って来るんだよ。


 三十過ぎたクソニートが子供のふりして。


 でも我慢した。


 全てはカーナ様に願いを叶えてもらうため。


 そんでようやく勇者召喚をするって事になって、お城から使いがやって来た。


 馬車に乗ってる最中にザイードが馬車の前に飛び出して来て、行っちゃダメだ、君を呼び出すためのワナだって言ったんだ。


 すぐに取り押さえられたんだけど、逃げろ、教会に戻れって叫んだんだ。


 何かわからなかったけどすごく嫌な予感がした。


 でも勇者召喚には聖女がいた方が良いって言われてたから誓約のせいで戻れなかった。


 お城についたらさっそくネスクがやって来た。


 用意してるから少し待てってそれまでお茶でも飲もうって。

   

 ザイードはどうなったのか聞いたけど教えてくれなかった。


 そしたら緑茶と羊羹が出されてね。


 驚いたけど毒とかは入ってなかったから食べたんだ。


 しばらくしたら頭がぼんやりしてきてね。


 魔法を使おうって事も考えられなくなって、気が付いたら血だらけのザイードが倒れてて、そばには何度も見たザイード印の薬瓶が転がってて、口の中は中和剤の味がした 


 中和剤ってのは状態異常を回復するんじゃなくて中和するっていうザイード特性の薬。


 あらゆるものに効果があるんだって自慢してたよ。


 お茶と一緒に飲まされたのは毒じゃなくて水の精霊の一部だったんだ。


 そんでケイズとネクスが言い合ってた。

  

 どっちもお互いを出し抜いてアタシを手に入れるつもりだったらしいよ。

 

 ケイズは教会では周りに人がいたから妙な真似は出来なかったし、ネクスは教会に来る事が禁止されてたから互いが互いを利用しようとしたってわけ。


 それをザイードが助けてくれた。


 血まみれで、ボロボロで、斬られた跡がいっぱいで死んでたよ。、


 アタシは切れたよ。


 もう何にも考えられなかった。 


 誓約が体を縛ってたけど関係ない。

 

 無理やり動かした。


 骨が軋むような音がしたし、血を吐いたけどそれでも止まらなかった。


 ネクスを全力でぶん殴った。


 骨が折れる音がして吹っ飛んだ。


 そんでアタシを見ておねえちゃんなんて呼んで媚び売ろうとしたケイズを全力で蹴り飛ばした。


 誓約を強引に破ったんだ。


 痛いなんてもんじゃなかった。


 ところがネクスをやりそこなったらしくて、誓約がアタシの意思に反してネクスを回復させようとした。  


 体が勝手にネクスに回復魔法をかけようとしたんだ。


 そしたら後ろからケイズに刺された。


 僕を裏切ったとか言ってさ。


 それがとどめになった、と思う。


 気が付いたあのコンビニにいたんだ。


 ゾンビがうようよいたけど、何故か魔法が使えたから問題なかった。


 で、家に帰る途中に通ってた高校があったから寄ってみたらあいつらがいて誓約のせいで捕まったってわけ。


 

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