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元社畜ドラゴンに遭遇


 王都の北には王家の庭と呼ばれる森がある。

 

 しかし入ったらいつの間にか外へ出ているらしい。


 薬草の類が豊富と言われているが奥に行く事が出来ない。

 

 森の奥には聖獣が守っている霊廟がある。

 

 霊廟の奥を目指す訳だが聖獣は何とかするとヒロ君は言っていた。

 

 だから大丈夫。

 

 だが何とかとは何なのか聞いておくべきだった。




 王家の森はかなりの大きさでファンタジー世界でのお約束な特殊な病気に効く貴重な花とか取れそうだ。


 森の中は意外に日が差し込んで明るく見通しも良い。

 

 しかし道など無く足元の草を掻き分けながら進んでいるが方向はあってるのだろうか。


「ここの奥に霊廟があります」


「霊廟ってなんだい」


「本来は霊とかを奉っている場所なんですけど、そこに月のジャンが封じられてます。ずっと昔に聖女が封じたらしいです」


「つまり、未来でその封印が破られるって事か」


「そうです」


 今現在封じられていてそれが数年後解き放たれる。


 しかしこれは良く考えたらまずいのではなかろうか。


「もしかして俺達が行くから後から封印が解けるとか無いよね」


 封印が解けたからヒロ君が来た。


 しかし俺達が向かう事で封印が解ける原因になるとか、よくSFなんかであるパターンだ。


「いえ、それは無いです。封印を解いたのは魔王だったんです」


 その名を口にした時、ヒロ君の雰囲気一瞬変わった。


「魔王が直接来たのか」


「そうです。そしてそのまま月のジャンと一緒に王都へ来たんです。直ぐに引き上げましたけど酷い物でした」


「君は魔王に会ったのか」


「はい」


「どんな奴だった」


 杖を持った老人だったり巨大な獣など色々あるがこの世界ではどうなんだろう。


「アイツは・・・どんなだったかな」


 少し考えるそぶりを見せた後、大きなため息をついた。


「思い出せません。時間移動を使うと記憶を落とすんですよ」


「記憶を落とす・・・落とす?」


「聖剣も普通に使う分は問題ないんですが時間移動は別格らしくて、力の代償と言う奴ですね」


 つまり帰るために使えばまた過去を失うと。 


「二回使っただけですがかなり落としたと思います。もう日本にいたころの事は殆ど憶えていません。アレですよ。よくある奴です」


「それでも月のジャンってのは倒さないといけないのか」


「そうです。その辺の事は憶えています。あれは存在が害悪です」


 かなり重大な事だと思う。


 記憶を無くしていくと自分が何を無くしたかさえ分からないはずだ。


 結構軽く言っているがどれほど恐ろしい事か分からないはずが無い。

 

 だがそうなる事が分かっていて、それでもやらなければならないと過去に来たんだ。

 

「それでですね、霊廟には聖獣と呼ばれるレッドドラゴンがいます。いわゆる封印の守護者って奴です。戦う必要なないのでやりすごしましょう」


「ドラゴンか」


 ファンタジーの代名詞だな。


「見えてきました。アレが霊廟です」


 森の中で開けた場所にあるそれは石造りの大きな神殿のようだ。


 そしてその正面には大きな赤い竜がいてじっとこちらを見ていた。

 

「見られてるけど」


「そうですね。森に入ってからずっと視線を感じてました。奴がこの森にいる限り女神の力で瘴気を纏った存在はこの森に入れないようになってます。つまりこの森全体が奴のテリトリーだって事です」


 ヒロ君は臆せずに真っ直ぐにドラゴンに向かうので俺も着いて行く。 


 でかい。


 近くで見るとなおそう感じる。


「何用だ」


 しゃべった。 


「女神から加護を得ている者達。もう一度問う。何用か」


 女神の加護って俺はともかくヒロ君は貰ってないはずだ。


 なら嘘を言っていたのか。 


 彼は嘘をつく様な少年ではないと思っていたんだが。

 

「ここに封じられている月のジャンを滅ぼすように女神から言われたんだよ」


 嘘ついた。


 真顔で大嘘をついた。


「アレは滅ぼせない。大気に漂う煙のような物」


「普通は無理だろうけど、この人なら出来る」


 二人の視線が俺に集まった。


「この人はカーナではなくローの使徒だ。強力な加護がある」


「ローだと」


「そうだ。女神ローがこのままではまずいから始末しろと言った」


 言ってない。


 ローさんはそんな事言ってない。


「そうか・・・ローが」


 おや、なにやら様子が。


「あの女神の使徒がいるとはな!」


 ドラゴンは大きく息を吸った。


 不味い。


 アレは絶対ブレス攻撃だ。


「死ぬが良い!」


 そして俺に向けて炎のブレスを吐いた。

 

 問答無用とは正にこの事で視界が真っ赤に染まる。

 

 あっ死んだなこれは。


「・・・あれ?」


 思わず閉じた目を恐る恐る開いて見ると予想に反して炎は俺を避けて左右から後ろへ流れていく。


 熱も感じない。

 

「身の安全は保障すると言いました」


 いつの間にか俺の前にヒロ君が剣を交差させて立っていて見えないドームの様なものが俺達を覆っていた。


 魔法の類だろうか。


 その様は非常にカッコイイと言わざるを得ない。


 炎が収まるとヒロ君はヒュッと剣を振り片方をドラゴンのほうへ向けた。


 それも実に様になっている。


 しかしあんな物を吐いたら森が火事になるかと思いきや、全く燃えていない。


 どういう事だ。


 あれは脅しとは思えない。


 間違いなく本物の炎だった。


「何の真似だ」


「ローはカーナ様の造られた世界を壊す。封印を開放するつもりだろうがそうはいかぬ」


「お前俺の話聞いてたか。奴を滅ぼしに来たんだよ。それに神が世界を滅ぼすってのにそんな面倒な事はしない。ただ消せば良いだけだ」


 どうしてそんな事を知っているんだと聞きたいがここは黙っていよう。


「戯言を。ローの使徒の言葉など信じられるものか」


 ドラゴンの表情なんか分からないがアレはこっちを馬鹿にしている。


「やっぱりトカゲに言葉は通じないか。ああ、何となく憶えてるぞ。お前のせいだってな」


 ヒロ君もハッと鼻で笑ってあっちを馬鹿にした。  


 空気が固まった。


「人間風情が!」 


「吼えるなよ色ボケトカゲが!」


 どうしてこうなった。


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