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女神に報連相

 

 寝る前にローさんに会いたいと願ってみた。

 

 聞きたい事が沢山出来てしまったからだ。

 

 全部を答えてはくれないと思うがそれでもいくつは教えてはくれるだろう。

 

 ベッドに横になって目を閉じてどれくらい経ったのか、気がつけば面接を受けた会議室にいた。


「さっそく呼びましたね。では何が聞きたいですか」


 そして正面にはやはりローさんが座っていた。


 とりあえずあった事を順に話すとしよう。


 社会人として上司に報告は基本なのだ。


「向こうに行って直ぐに日本人の少年に会いました。彼はヒロ・ミヤマと名乗りました」


「え・・・。ヒロ・ミヤマと言いましたか」


「ええ、高校生で向こうに来て二年半と言ってました」


「えええええ!!」


 何をそんなに物凄く驚いてるだろうか。

 

「何で・・・いや二年半。なら気付いていない。でも・・・なら姉さん貴方って人は」 


「あの」


 何やらブツブツと言い出して俺の声も聞こえていないようだ。

 

「何て事・・・でも私が干渉するわけには」


「あの、よろしいですか」


「えっ、は、はい! 失礼しました」


 ビクッと肩を震わせてローさんはこっちに戻って来た。

 

 何やら思案するそぶりを見えた後真っ直ぐに俺を見た。

 

「ヒロ・ミヤマさんとは敵対しないでください。これは絶対です」


「まあ、それは構いません。悪い少年では無いようですし」

 

 人を見る目はあるつもりだし俺から見て彼は善良だ。


 言われるまでもない。


 だがローさんはバンッと机に手をついて前のめりで真剣な表情で念を押してきた。


「絶対ですよ! いいですか! 何があってもです!」


「あっはい」


 勢いに押され思わず返事をしてしまった。


 有無も言わせないとはこの事だろう。

 

「彼が何か。もしかしてどう戦っても勝てないとかですか」


 実は魔王とか何かだろうか。


「そう言った話ではありません。しかし・・・申し訳ありませんが彼に関しては語れません」


 彼には特別な何かがあると見て良いだろう。


 そしてこれ以上は突っ込んではいけない話題。


「分かりました」


「お願いしますよ。それで彼の事は置いておいて、何か聞きたい事があったのでしょう」


 そうだ。


 そもそもこっちが本題なのだ。


「はい、実は・・・」


 宿に行ってからの事を全て話した。


 ヒロ君が訪ねて来た事。


 彼が未来から来た事。


 明日俺が襲われて片腕を失う事、


 一緒に過去へ行き、魔王の配下を倒して欲しいと言われた事などだ。


 話を聞いたローさんは最初あっけに取られてような顔をして次に難しい顔をして、最後に腕を組んでうんうんと何やら悩みだした。


 こう言っては何だがやはり中学生くらいに見えて仕方が無い。


「過去ですか。それは予想外ですね」


「断るべきでしょうか」


 だがヒロ君は全力で頭を下げた。


 過去へ行く事が出来る程の能力を持った彼がどうする事も出来ないから俺の所に来たのだ。


 手伝えるなら手伝ってあげたい。


 しかし雇い主の意向は重要である。 

 

「いいえ、貴方の望むようになさってください。そもそも私が貴方に望むのものはまだありません」


「そうですか。しかし私が過去で何かしてしまえば歴史が変わってしまいませんか。ヒロ君は大丈夫と言ってましがどうなんですか」


 タイムパラドクスと言う奴だ。

 

 つまりヒロ君が倒して欲しいと言った相手が未来で生きているなら俺達が過去に行って戦っても勝てなかった事を意味しているとか。

 

 あるいは俺達が過去に行った瞬間から新しい世界が木の枝のように派生するとか。

 

 そんな話は諸説色々あるがどうなんだろうか。


「貴方方が過去に行ってしまえばその時点から歴史が変わります。貴方方がこの時間から過去へ移動した瞬間に世界は過去を認識して今が変化します」


 時間移動に関してはそっちの方か。

 

 だがそれではローさんが困らないか。


「折角召還した俺がいなくなってしまいますよ」


「う~んそうですね」


 ローさんはちょっと困った顔をして笑った。


「本来ならそうなんですが・・・この世界は姉さんが造った物なので」


 嫌な予感がした。


「貴方が過去に戻って相手を倒した後にこの時間に戻ったら世界が変わっているでしょう。貴方をギルドで担当した人が違っているかもしれませんし、宿も違う場所になっているかもしれません。それでも貴方は今の記憶を持っていますが、過去に行った事により変化した世界に来てからの記憶は無いでしょう」


「ちょっと待ってください」


 どういう事だ。

  

「えっと、つまりですね」 


 何時からあったのか、机の上に置かれていた紙に何やら数字と矢印を書き始めた。


「まず今の位置を10とします」


 紙の端に1と書きそこから矢印を引いて2また矢印を引いて順に10まで書いた。


「そして貴方がこの世界に来た時間を8とすると9を経て今の10に至ります。貴方がこれから時間を遡って到着する時間を2としますそこから世界が派生します」


 2から斜め下に矢印を引いて③と書くとそこからまた矢印を引いて順に⑩まで書き込んだ。  


「そして貴方が目的を果たして時を越え戻る場所は⑩です。その時貴方には8.9.10の記憶がありますが⑧.⑨の記憶がありません。そして2から10は無くなります」


「ちょっと待ってください。それはおかしいでしょう」


「おかしいですがおかしくありません」

 

 その声は静かだが力があった。


「車を改造したタイムマシンの映画があったでしょう。それと同じです。タイムトラベルした人間が変化した世界に移動すると思ってください。その世界でも私は貴方を召還しているでしょう。そして貴方は⑧からそこに居たことになります。そこにタイムパラドクス等の難しい話は存在しません」


「いや・・・いいんですかそんなんで。 それに結局はこの世界の俺はいなくなるわけでしょ」


「いえ違います。貴方達が過去へ行ったその瞬間にこの世界は新しい世界へとシフトします」


 適当に作って深く考えてませんと言わんばかりだ。


 女神がそんなんいい加減で良いのだろうか。


「はい。ですから貴方は貴方の信じるように行動してください」


 そう言って全てを許容するよにニッコリと笑う姿は確かに女神だった。


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