挿話:むかしむかし
また主人公がいません。
むかしむかしあるところに一人の少年がいました。
少年の家族は国の戦争に巻き込まれて死んでしまいました。
お金のない少年は悪いことをして生活するしかありませんでした。
あるときぼろぼろの体を引きずりながら歩いていると、まっくろなローブをまとった男が少年の前に現れて言いました。
なあ、憎くないか?
何が?
この国のすべてだ。
…憎いと思っても俺には何の力もないからどうしようもない。
あきらめたような少年の言葉に、そうか、とローブの男は笑いました。
力を与えようか、少年。誰もがひれ伏すような力を。
…あるならほしいよ。つまらない戦争なんかで人が死ぬような国、滅ぼしてやりたい。
ならわたしと契約しないか。
きみは膨大な力を手に入れる。今のお前が欲しいものをすべて手に入れるんだ。
わたしはそれをそばで支えてあげよう。
ローブの男は少年に語りかけました。
光の粒が風に吹かれ少年の周りできらきらと舞っています。
男の言葉に少年は眉をひそめます。
そう疑い深くなるな。必ずお前の力になるよ。
それとも対価のない契約が不審ならきちんともらうことにしようか。
だが、わたしはいつも契約を結ぶときは契約者の家族を代わりに預かることにしているんだ。
お前にはそれがないだろう?だから今のお前が失うものはない。
さらに不審になったかもしれないがお前には都合がいいだろう?
…意味がわからない。
俺に手を貸してどうするの。だいたいお前に何の力があるんだ。
君を助けたいだけだ、とローブの男は少年に手をさしのべました。
少年はぼうっとその目を見つめまます。
この国を滅ぼす力と新しい世界を生み出す力をきみにあげる。
さあ、わたしとー。
少年が吸い寄せられるようにその手を重ねたとき、あたりは一瞬にしてほのうにつつまれたのです。
その後少年の姿を見た人はいませんでした。
それから間もなく、少年の住んでいた国は魔法使いによって滅ぼされてしまいました。
魔法使いを新たな王に作られた国はそれは豊かで平和な場所になっていくのでした。
おつきあいありがとうございます。
今回は会話にかぎ括弧なくて読みにくいかもですが、そもそも論かなと思ってそのままです。