1 あの日
稚拙な文章、わかりにくい表現が多いと思います。
いまいち改行がうまくできていない気が…。
しばしおつきあいお願いします。
「―どうか、どうか、彼を”助けて”はくださいませんか。」
美しい白銀の髪をたなびかせ、月明かりによりその白さを際立たせる頬に大粒の涙をこぼしながら、少女、ルーナは目の前の美しい男に懇願した。
「己の力量に見合わないことをしたのはこいつだ。
契約もなく上級精霊を呼び出す礼儀知らず、禁忌を犯してまで助けるに値しない。」
息を荒くし、脂汗を浮かべてもがき苦しむ少年を前にしても、その美しい男の目には何の感情もないようだった。
少年の内側から何か黒いものがわき上がり、それが少しずつ彼を蝕んでいくのがルーナには分かる。
早くしなければ、彼はこのまま精霊によってすべてを食われてしまう。
しかし、ルーナは上級精霊の力に抗うだけの魔力はまだ持っていない。
習いたての治癒魔法なんて意味をなさない。
―どうすればいいの。他に助けを呼んでいる場合ではないわ。
王宮から少し離れた丘の上。こっそりでてきたこともあり護衛もいない。
ここには目の前の男にしかいないというのに。この男は少年なんて気にもとめていない。
じっとルーナのことを見つめている。
金の瞳はその言葉を待っている。
そう、男の望む言葉をいえば、言ってしまいさえすれば。最愛の人を救えるのだ。苦しいくらいに分かっている。
しかし、正しいとは言いがたい結果になるかもしれない。国を傾けるようなことが起こり、多くの民が犠牲になるかもしれない。
窮地に陥ったとき、大切な人の命と多くの人の命を天秤にかけてはいけません。どちらの命に傾いてもいけない、あなたは国のことを第一に考えなければならない。
ときに愛する一つの命、名も知らない多くの命を贄に選ばなければならない世が訪れるかもしれません。命同士を天秤にかけるのは迷いを生むだけ、必ず国に重きを置きなさい、そう教わってきた。
しかし、まだデビュタントも迎えていない、まだ13歳の少女には即断できない。
大好きな人の死を選ぶなどおそろしい。
なんとか他に手はないか必死に頭を動かした。
ー何年も側にいたのに、”彼ら”に向き合う覚悟はまだ足りていなかったのね。
ルーナは自分自身を恨めしく思った。
「―いいのか。なんの傷もなくその魂を助けるにはもう時間がないぞ。」
その言葉にルーナははっとする。
うつろに男の方に向けていた紫の瞳を少年に向けると、呼吸に先ほどまでの荒々しさはなく、細い穴をわずかな空気が通っているような、掠れた音しかしていなかった。
二度と戻ってこられない、深い闇に潜り込んでいっている様に感じられた。
―もう迷っている場合ではないのよ。私にとっての最善を。心を決めなければ。
それにこの人はきっとー。
月がより強くルーナを照らしたとき、彼女は心を決めた。
「…私に王太子妃の器はなかったみたい。ごめんなさい。
レオ、あなたのことが大事なの。」
少年の手に己の手を重ねてそう呟くと、ルーナはこぼれる涙はそのままに強い意志を持って男を見上げた。
「私と”契約”してください、精霊王。あなたの力を貸して。」
月光に照らされその存在を主張する深紅の髪を持つ美しい男は、白銀の少女にほほえむ。
まだ若い恋人たちが描いた、暖かく平和な未来はこの瞬間終わりを告げたのだった。
未来が大きく変わったきっかけになった日。
少しずつ背景が分かっていく予定です。
初めての第1章はなかなか書きづらかったです…。