第1話 俺はただ普通の高校生活を送りたいだけなのに
都内のある場所に東京とは思えないような光景の広がる家がある。
800坪もある土地の中には日本庭園かと見間違えるような庭がありいろいろな種類の鯉が泳いでる、それに留まらず東西南北の四箇所には当主の座とは別の大きな部屋が存在するのだ。
そこの家主の名前は玄月麻耶だ
玄月家は今の日本を牛耳っているほどの権力を備えた一族である。
玄月家は様々な企業を支配下に置き日本全国各地に100以上から連なる分家とさらにそれに仕える家系と幅広い人脈を持つ。
さらには海外にも進出をしつつある日本のみならず海外までも支配下に置こうとするとは我が叔母上ながら恐ろしい…
何故、いまその話をしているかと言うと俺ーー玄月黎斗は当主に呼ばれてその家に向かっているからだ。
「はぁ‥‥あの叔母上のことだから絶対に面倒なことなことなんだろうな」
俺はただ普通の高校生活を送りたいだけなのに
なんてことを考えている間に家に到着した。
門をくぐり脇にある日本庭園を抜け暫く歩いてると当主の間に辿り着く
襖を開け中に入ると七畳ほどの広さの和室にテーブルが置かれており着物服の女性がお茶を飲みながら座っていた。
「お久しぶりです。お元気そうで何よりです…黎斗さん」
「いえいえ…そちらこそお元気そうで何よりですよ。当主殿」
俺も向き合うようにして座る…勿論正座で
「いまは、二人だけなので叔母上で構わないですよ」
「では、そうさせてもらいます…いやそうさせてもらうよ叔母上」
叔母上から叔母上と呼ぶことを許可されたのでそう呼ぶことにする。
正座から胡座に座り方も変える
「それで、俺を呼んだ理由というのは?」
まさか、ただお喋りをしたいから呼んだとかそんなわけではないですよねと付け加えて話す
「えぇ…勿論『仕事』のお話ですわ」
口調は変わらないが纏う雰囲気が厳かなそれに変わる
「最近、組織の中で不穏な動きをしてる輩がいるのは存じ上げてますね?」
「えぇ…勿論ですよ。なんでも反社会勢力の方々とつるんでいる者がいるとか」
多くの人から連なる組織のため中にはそういった黒い輩もちらほらと存在する
「その通りですわ…さすがは黎斗さんです」
なぜか褒められた…やったぜ
「そして、その輩が最近政界とも繋がりが出来たようですの」
反社会勢力だけではなく政界ともか…いよいよキナ臭い話になってきたな
「そんな人間が繋がるとなったらただの政治家ではないですね?」
「とある政治家が最近のことですが政治資金を私的流用をした事件がありましたよね?」
そういえばそんなのがあったな…政治家が起こした不祥事だ。どこのテレビ局もそればかりで飽き飽きしてたのを思い出した
「まさか…その政治家が組織の人間と反社会勢力の方々と繋がりがあると」
とことん、ヤバイ奴らが出てきてやがる。まともなやついないのかよ
「その政治家が最近排除したい政治家がいると話をされているのです」
排除って穏やかじゃねえな…
「その排除とは政界からという意味合いだけではなくこの世からという意味も含まれてるのです」
出た、この世からも排除するとかいうパワーワード
「その排除対象となっている政治家が私が支持している政治家なのです」
うげぇ…ややこしなってきた
「そこであなたにその政治家を護衛して欲しいのです」
ですよねぇ…たぶんそうなると思ってた
「なるほど…たしかにそれは叔母上だけでは対象しきれないですね」
政治家や反社会勢力だけなら叔母上の権力でなんとかなるが組織の人間が絡んでくるとなると俺の出番だな
めんどくさいけど断ったらもっとめんどくさいことになるしな…仕方ない
「わかりました…謹んでお受けさせていただきます!」
「貴方ならそう言ってくれると信じていましたわ」
ーーーこうして、政治家護衛の依頼が始まった。