高技術細工師
今日の更新です。
「なんだと?」
渋いオッサンが視線だけでこちらを向く。
「これで三度目だぞ……あなたに依頼をしたいってのはさっき言った。素材として板状にしたミスリルを提供するからそこに指定するものを彫り込んで欲しい」
もう説明がいい加減になりながらも三回目の説明を目の前にいるこの街一番の細工師にする。
彼はデューク。この中間都市アールムに寂れた店を構える細工師だ。
この街のギルド長……いや、恐らくだがこの街の領主だろうが彼が推薦してくれた細工師だ。領主だと思う理由は後々だな。
この店は見た目は寂れているが腕は確かという知る人ぞ知る名細工師を《《目指している》》らしい。しかし本当に腕があるのだから面白い。
と言ってもこの街でミスリルの加工が可能な細工師が少ないというのもあるのだが、聞いたところによると彼は細工師の中でも一級工芸細工師という国からの勲章を得ているらしい。実績として今の国王の被っている王冠の細工の一部を担当したことがあるほどの実力だと聞いている。
それほどの実力があるのだから頼んでみようということで店を訪れ、説明している所で今に至るのである。
しかし……
「ミスリルを提供?そんな馬鹿な」
この一言で終わらせる。それも毎度毎度目を見開くおまけ付きでだ。
そもそも俺は彼がミスリルを扱えると聞いて依頼しに来たのになんでそんな「ミスリルを扱えるなんてありえない」みたいな顔をするんだよ。
「ほら、これが現物。この板数枚に今から出す紙に書いてあるものを写し彫って欲しい」
俺は肩に下げた魔法袋から魔砲の中にある魔法陣の原本を取り出す。
なんかもうこの人呆然としてるから強気の方がいい気がしてきた。
なんか今も俺の出したミスリル板と魔法陣の原本を交互に見てる。
ちなみにミスリル板程度ならこの街の鉱山にある簡易加工場で作れるらしいからそこで作ってもらった。寸法は縦十セール、横三セールの縦長なものだ。それを何枚も作り、試作の魔砲と同じような感じで繋げる予定なのだ。
「あー、えーっと聞きたいんだが、つまりお前は俺にこのミスリル板にこの模様を彫っていって欲しいってことで良いんだな?」
さっきからそう言ってるのになぜそんなことを聞くのだろうか。
「俺は確かにミスリルを扱える。しかし、それはあくまでも少量だ。こんなポンと出されたことは初めてでな……」
渋いオッサンが唸りながら悩んでる様子は傍から見ればカッコイイのだが、汗をめちゃくちゃかいてるのを見るとなんか違う気がするのだ。
「なあ少年。少し、話をしてもいいかな?」
さっきまでの渋くてカッコイイイメージは完全に崩れ、もはやオロオロするただのオッサンに評価が下がりかけていたところで彼が話しかけてきた。
「俺はな、確かにこの街じゃ腕のいい細工師として認識されてるだろう。実績もあるしな。だけどな、その実績のほとんどは……俺が親父について回って得たものなんだよ」
彼は神妙な表情で続ける。
「俺の親父はさ、まさにこの国の細工師の中で一番とも呼べる腕を持ってた。国王陛下が持ってるあの王冠だって細工を彫ったのは親父がほとんどで俺はその手伝いだった。でもどこで何を間違えたのか、何故か俺が親父の補佐として細工を行ったことになっていてな。俺は親父の手伝いはしても補佐と呼べるほどのことはしていないし、当時は親父にはちゃんとした補佐がいたからな。でもそいつが俺に言ったんだ。『お前は親父さんの跡を継ぐ男だ。それに隠れちまってるがお前は十分な腕を持っている。胸を張れ』ってな。それから俺は親父の故郷のこの街に店を開いてあとはさっき言った通りだ。お前の依頼は受ける。任せておけ。二週間で仕上げてやる」
「…………」
彼は言うだけ言って俺の出した魔法陣の原本とミスリル板を持って裏に入っていった。俺はその場に取り残された状態だ。
さっきまで散々聞き返したりしておいて全く……。
ま、まあ……ちゃんとやってくれるみたいだし結果オーライかな?
俺は無理矢理そう納得することにして彼の店を去るのだった。
余裕があればもう一話投稿します。
ブクマ等よろしくお願いします。テンションが上がります




