9)収穫祭
収穫祭当日。
リディアは、泉に映る自分の姿を確認した。
――うん、まぁ、いいかな。
今日は、朝から、頑張ってお洒落をした。
髪は編み込みにして結い上げ、リボンを結んだ。
祭りで人が混み合うのだから、少しくらい目立ってもいいだろうと、黒髪を解禁することにした。
服は、2歳児の服は、思うような服がなかなかなかったのだが、ようやく見つけたワンピース。
10歳児に拡大したときに、お洒落に見えるようなデザインの服。
いつもは、ごくシンプルな幼児の遊び着ばかりだったが、今日は、勿忘草色のワンピースに、レースの飾り襟が付いている。
ウエストは白いリボンベルトで縛った。
昨日のうちに、学園の前でジェイに今週分のブラウの束も渡してある。
――いざ、出陣!
リディアが大通りの待ち合わせの店に着くと、すでに、ガルハ一家が来ていた。
エリは紺色の上品なワンピース。リサのおしゃれ着は桃色の地にレース編みの小花が散らしてある。
ガルハとイゴルも、畏まった上着とズボン姿。ジェイは、リディアが選んだ服を着ている。ベルジュも綺麗な赤ん坊の服で、布に包まってガルハの腕の中で眠っていた。
「あら、アニス、可愛いわ」
エリが頬笑んだ。
「本当だ。まるでお姫様だね」
とイゴル。
「ありがとう、イゴルお祖父さん。
エリお母さんとリサも素敵です」
「ほら行こう」
ジェイが手を差し出した。
「うん」
――やった! 手、繋げた。
特訓したかいがあった。
リディアが嬉しくて頬笑んでいると、なぜかジェイが顔を赤らめた。
遠巻きにガルハ一家とリディアの様子を見守るリヌスたち3人は、魔道具の結界で魔力波動を隠していた。
「頬笑ましく祭りを楽しむ民を見ながら、どうして、そんなに不愉快そうな顔をしているのかな」
ジュードがリヌスに尋ねた。
「別に、不愉快ではないよ」
「見るからに不機嫌だが?」
とジュリアン。
「アニスは、リディアの行方不明に関わっている。
放って置くわけにはいかない。
彼らと過ごす時は、長くはない」
「リディアが戻ってくれば、アニスは町に戻してあげて良いのだろう?」
ジュリアンが呟く。
「ディアナにうり二つの少女をか?
ユギタリアの黒い髪を持つ魔導師。
この町もシュールデルやヴェルデスの間者と無縁ではない。
それに、彼女の正体がわからない」
とリヌス。
「まぁな」
ジュリアンは吐息を付いた。
リディアとガルハ一家は、出店で昼食を買い込んだ。
串焼きに野菜炒めの入った丸いパン、肉団子と青菜のスープ。
リディアは、椅子の上に正座をして座る。座高が高くなり、幻惑で作られた10歳のリディアと同じくらいになる。
エリはショールで胸を隠しながら、ベルジュに母乳をやっていた。
――いいなぁ、私も、こういう風に育てられたかった・・でも6ヶ月までは、母が育ててくれたんだよね。
ふたり、どこに向かったのかな。
私を迎えに来てくれるはずだったんだよね、きっと。
考え事をしていると、
「どうした? アニス」
ジェイが心配そうにしている。
「ううん。串焼きが食べ切れそうにないから、ジェイにあげようかと思って」
「相変わらず小食だね」
――2歳児の標準だと思うけどね。
ふいに、
「リヌスっ!」
と甲高い声が通りに響き渡った。
リディアに気を取られていたリヌスが、ミライアに見つかり、大声で名を呼ばれ、ジュードとジュリアンは速やかに側から離脱し、目立たないよう人混みに紛れた。
尾行を台無しにされたリヌスは平静を装うのに苦労したが、眉間のしわがどうにも消せなかった。
「なぁによぉ、祭りの日は用事があるって言ってたくせに。
遊びに来てるじゃないのぉ」
とミライア。
「なにか用か」
「ウフフ。
遊びに行きましょ!
射撃するでしょ?
得意よね」
「断る」
「あなたね。
『断る』以外に、返事が出来ないの?」
「君にはそうだな」
「あらまぁ・・。
そういうこと言っていいの?
婚約者に向かって」
「いつから君が私の婚約者になった?」
「2歳のころから決まってると、お父様は言ってたわ」
「君の父の決定は、我が家とは関係ない!」
――相変わらずだなぁ。
と、リディアは、公衆の面前で言い合うふたりを眺めながら思った。
「若様だね」
とジェイがひそひそと言う。
「あのひと、若様の婚約者なの?」
とリサ。
「知らなかったわ」
とエリ。
ガルハ家のみなが小声で話していると、ミライアがリディアに目を留め、
「あらぁ、あなた、こんなところに居たのぉ。
オーホホホホ、かーわいい恋人と一緒ね」
と、ジェイを見て言った。
かーわいい、と言われたジェイは嫌そうに眉をひそめ、リヌスの眉間のしわも深くなった。
「かっわいらしい二人の恋人と、一緒に射撃しましょうよ、リヌス!」
とミライア。
――あ、このひと、お酒臭い。
ちょっと酔ってる。
だからよけいにハイテンションなのか。
リディアはミライアの声がやけに甲高いわけを知った。
ジェイは、ミライアに可愛いと連呼されながらも、断り切れず、リヌスも一緒に引き摺られるように射撃ゲームのところに連れてこられた。
――祭りの定番だ。
射撃の景品当て。
ミライアは、両手に花・・ならぬ、両手にジェイとリヌスの状態で、射撃に並んでいる列に割り込みをかけようとして、「ちゃんと並べよ」とリヌスに怒られた。
「あら、いいじゃなぁい、可愛い私たちが、先にやらせてって言ってるんだから」
とミライア。
「辞めろっ」
とリヌス。
「可愛い私たちって、なに・・?」
ジェイが力なくうなだれた。
「3人とも、可愛いもんね」
リサがひそひそと、エリに話している。
――酔っ払い、最強だな・・。
ガルハ家は、そろそろ二手に分かれることになっていた。
エリは、ベルジュがまだ2ヶ月くらいで小さいので、イゴルに付き添われて、赤ん坊の服をバザーで買ってから帰る。
リサとジェイ、リディアは、ガルハに付き添われて、祭りを楽しむ予定だった。
そこに、ミライアとリヌスが闖入した形になった。
リヌスは、リディアを捕まえようとしていたはずだが、今回は、どう見ても、酔っ払いに引きずり込まれた被害者だった。
ようやく、ジェイたちの番になった。
射撃代は、リヌスが払ってくれた。
リヌスが射撃で的を当てるたびに、ミライアは甲高い歓声をあげ、おかげで、射撃の屋台はやたら目立っていた。
リヌスは、本気で嫌な顔をしていた。
ジェイは、けっこう上手かった。
リヌスが撃ち取った景品はリサに。ジェイはリディアにくれた。紙包みを開けると、可愛いレースの髪飾りだった。
ミライアも挑戦したのだが、ひとつも当たらなかった。
一行は、「どこかで美味しいお茶を飲みたいわ、ねぇ、飲みましょう」と言い張るミライアに引き摺られ、お茶の屋台に向かう。
席を取り、リヌスとガルハが飲み物を買いに行かされている間に、ミライアは、お側付きの侍女に命じて、カクテルを買ってこさせた。
リヌスとガルハが飲み物を持って帰って来た時には、ミライアは、カクテルを何杯もあおり、さらに出来上がっていた。
「また飲んだのか」
リヌスが呆れると、
「オホホホ、喉が渇いてたのよぉ、これ美味しいわよ、飲みなさいよ! リヌス!」
とミライア。
「明るいひとだね」
ガルハがこっそりと言い、
「うん、祭りが盛り上がるね」
リサが応えた。
それからも、ご機嫌のミライアに引きずり回された後、ガルハ家の一行は、夕方になる前に引き上げることにした。
「あらぁ、もう帰るのぉ、またねぇ、可愛い坊や」
とミライアがジェイに頬笑んだ。
リサとリディア、ガルハは無視された。
「私も帰る。
もう、十分、楽しんだ」
と、じゃっかん、不機嫌なリヌス。
「なに言ってるのよ、祭りはこれからよ!
まだ、美人コンテストが残ってるわよ!」
とミライア。
「美人コンテスト?」
リディアが小声で尋ねると、
「キルバニアの女王コンテストのことだろ。
でも、美人コンテストじゃないのに」
とジェイ。
リディアも、祭りの催しを張り紙で見たので、「キルバニアの女王コンテスト」のことは知っていた。前年度のキルバニアの女王は、キルバニア州立学園の副学園長で、55歳という情報もエリから聞いている。
素敵な女性らしいが、美人コンテストの勝者と言われると違うような気がする。
「私と母も、参加登録してあるのよ!」
とミライア。
キルバニア女王コンテストに参加するには、予め、自薦か他薦で、参加登録しておく必要があるのだ。
「へぇ。
シュウォーツ夫人がね」
リヌスがじゃっかん呆れた顔になった。
リヌスの言葉を聞いて、ガルハとジェイが、わずかに眉をひそめたのにリディアは気付いた。
ガルハは、リヌスとミライアに、
「子供連れなので、先に失礼します」
と挨拶をし、そそくさと退散した。
ミライアとリヌスから、十二分に離れ、ふたりの姿が人混みに見えなくなってから、
「ミライアさんは、シュウォーツ家のひとなのね。
知ってるの? ジェイ」
と聞いてみた。
「うん。
キルバニア副町長夫人・・若様の母上の実家が、シュウォーツ家なんだ。
シュウォーツ家は、ひとり娘しか生まれなかったから、養子をもらったんだよ、遠縁から。
当時12歳のアルディ氏。
でも、失敗だったみたいで、人柄が悪かった。
シュウォーツ家は、商会を営んでて、アルディ氏が継いだんだけど、副町長夫人の兄であることを利用して商会を大きくしていったし、ヴェルデス州と連んでるから、町の者からは、じゃっかん嫌われてる。
アルディ氏の妻が、ヴェルデスの貴族の出なんだよ」
「へぇ・・」
――喧嘩するほど仲が良い関係なのかと思ってたけど、もしかして、リヌス、本当に喧嘩してたのかな。ミライアさんには、通じてなかったような気もするけど。ちょっと、よく判らないな。
ジェイたちと途中で分かれ、リディアは森へ向かう道を行く。
――早く帰ろ。幼児にお昼寝なしは辛かった、眠い。隠れ家で休もう。
町外れから森の中の小道を進み、木立の茂みに入ると、リディアは、幻惑を解いて、身体強化を最大限に強め、疾走した。
◇◇◇◇◇
1時間後。
森で見失ったリディアの捜索を諦め、ジュードとジュリアンが、気落ちした足取りで町長邸に向かっていた。
「もう少し、捜索した方がいいんじゃないか」
ジュリアンが、森を振り返りながらジュードに尋ねた。
「アニスは、また、一家に会うだろ。
そのときに追うよ。
今度は、油断しない。
魔力波動が、私の探知の範囲内に全く無いんだ。
あれ以上森を進んでも、魔獣の魔力波動が現れ始めたら、よけいに判らなくなる」
「それもそうだな。
リヌスに文句を言われそうだ」
「ミライアに捕まってたリヌスに文句を言う権利はないよ」
「彼女は、シュウォーツ家だそうだな。リヌスの親戚だろう。
婚約者なのか?」
「シュウォーツ家は、ミライアをリヌスと結婚させたいみたいだな。
まず無理だろうけどね。
リヌスが嫌ってるし」
「知ってるのか?」
「シューデンブロウの学園に私が客員教授として招かれていたときに会ったよ。
ふたりとも、留学していたのでね。
リヌスは慇懃に振る舞っていたが、リヌスがディアナ王女と親しくし始めたときに、ミライアが攻撃的だったものだから、それ以来、本気で嫌っている。
もともと、性格は合わないだろう。
ミライアは押しが強いし。リヌスは、温厚そうに見えて、実は、我が強いところがある」
「そうだな」
「ジュリアンが、リヌスと会ったのは、幼い頃なのだろ?」
「10歳くらいのころだな。
祖父がキルバニアに移住してしまったのでね。
会いに来たときに紹介された。
一時期は、夏季休暇のたびに、会っていた。
その頃、祖父は、姉上の邸に滞在していた。
剣術を習いにリヌスが訪れていた」
「ふうん。そういう間柄か」
「そう言えば、リヌスは、ディアナ王女とアドニス王子の情報を、ヴェルデスに流していた親類が居る、と言っていたが、彼女のことか?」
「正解。
ただ、シュウォーツ家は、元から信用されていないので、ヴェルデスが喜ぶような情報はなかっただろうけどね」
「そうか。
ミライア嬢が、リヌスの婚約者になれる可能性は、まるきり無さそうだな」
「とっくに諦めるべきだったよ。
今日、彼女が、やけにご機嫌だったわけは、疎い私にも判るよ。
祭りの通りに、仲よさげな恋人たちが目に付いたからね。
リヌスは、いつもなら、ミライアを避けていた。
でも、今日は逃げられなかった。
ガルハ家が、ミライアに捕まっていたからね。
リヌスが逃げなかったわけが、彼女に勘違いされてなきゃいいがな。
彼女は、邪魔だと思う者には、酷く攻撃的でね。
シューデンブロウでは、ディアナ王女に、ずいぶん、嫌がらせをしていた。
一国の王女で、ヴェルデス王国の王子の妃に、よくもやれると思ったが、彼女の母がヴェルデスの貴族の出なのでね、ヴェルデス王国は、彼女のテリトリーだ。
アドニス王子は、ディアナ王女を護ってやるような気概もなかった」
「無理矢理、嫁にしたのにか」
ジュリアンの目が険しくなる。
「気がつかなかったんだろうよ。
ディアナ王女は、奥ゆかしい姫君だったからね」
「過去形で話さないでくれ。
辛くなる」
「気をつけるよ・・」
◇◇◇
その夜。
リヌスは、あれからしばらくの間、ミライアに腕を掴まれていたが、隙を見て逃走。
ガルハ家に向かったが、すでに、リディアの姿はなく、ジュードとジュリアンも見つからず、ひとり町長邸で待っていた。
ジュードたちが戻ってきたのは、夜が更けてからだった。
「見失ったって?」
リヌスは、客間のソファにぐったりと座り、疲れた声で言った。
「すまない」
とジュード。
「面目ない」
とジュリアン。
「しょうがないか。
でも、なぜ? アニスは逃げたのか?
ジュードとジュリアンは、魔力波動を隠していただろう」
「森の茂みに入り、姿が見えなくなったとたん、兎のように走り出した」
とジュード。
「ハハ・・。
ジュリアンにも追えない速さでか?」
「私は、森を走るのは慣れていなかった」
とジュリアン。
「途中で、魔力波動を探知する範囲を目標物が超えた」
とジュード。
「・・思ったより難易度が高いようだな・・」
「追跡のしがいがあるけどね」
「執事の鑑定が、先になるかもしれないな」
とジュリアン。
「ジギタスから返事が来たのか?」
「まだだが。なんなら、執事を連れて、もうジギタスに向かっていてもいい」
とジュリアン。
「ジギタスは、川を越えればすぐだ。
返事が来てからでいいだろう、ジュリアン。
得体の知れない執事を連れてジギタスに居る期間は、なるべく短くした方がいい」
とジュード。
「そうだな。
執事の攻撃能力は、ほぼ皆無だけれどね。
世の中には、優れ物の武器というものがあるからね」
とリヌス。
◇◇◇◇◇
明くる日。
リヌスは、昼休憩で邸に戻り、郵便物を確認していると、
「リヌス、少し、お話がありますの。
こちらにいらっしゃい」
と母セーラに呼ばれた。
「なんですか、母上」
副町長夫人の居間は、南に大きく開いたテラス窓から差す日の光で明るかった。
白木の調度品で統一され、薄青い絹のカーテンと絨毯があしらわれた部屋は瀟洒だった。
金茶色のセーラの髪が、麗しく輝いている。
セーラは、茶の用意をさせると、侍女を下がらせた。
「あのね、リヌス。
兄から連絡があったのだけれど。
ミライアと収穫祭を楽しんだのですって?
そんなに仲良しになっていたなんて、知らなかったわ。
兄に、婚約発表は、いつにするのか、って尋ねられたの。
いつにするの?」
セーラに首を傾げられ、リヌスは、心底、力が抜けた。
商会の一人娘として、ガラス細工のように大事にされ、花のように愛され育った母。
母のお喋りのおかげで、副町長である父の出張の頻度や、出張先や、父が不用意にこぼした仕事の内容が、シュウォーツ家に筒抜けだった。
祖父が、シュウォーツ家は信用できないと、シュウォーツ家に間者を放っていたおかげで判った。
父は、再三、シュウォーツ家に我が家の秘密を漏らすな、と注意したのだが、母にはその重要性がまるで理解できなかった。
何度言っても、情報を漏らし続け、仕舞いには、祖父の間者がシュウォーツ家に潜入していることさえ暴露してしまった。
幸い、アルディ・シュウォーツは、誰が祖父の間者か判らなかったらしく、勘違いをして関係のない従者や侍女を解雇した。
副町長である父は、本気で離婚を考えたが、体裁を考えて辞め、その代わり、リヌスと兄のレイに、「セーラは間者だと思え」と言った。
母は、人形のように綺麗だが、政治にはまるで関心が無く、人の心や人間関係にも疎い。
リヌスは、平然と、
「ミライアと婚約など、死んでもしません」
と答えた。
「まぁ・・冗談にしても、そんな言い方はよくなくてよ」
とセーラ。
「冗談ではありません。
あまりしつこく言うと、彼女にそう怒鳴りつけます。
私は本気です」
「リヌスったら・・。
でも、収穫祭を、彼女と楽しんだのでしょう?」
「ミライアが、酔っ払って、罪の無い町民に絡んでいたので、放っておけずにそばにいただけです」
「まぁ、そうだったの・・。
判ったわ。
兄には、そう言っておくわ」
「・・なんて言うんですか?」
「えっと・・そうね、ミライアが、酔っ払ったので、そばに居た、って言えばいいかしら?」
「ええ、まぁ、それでいいです。
とにかく、婚約の話は、きっぱりと断ってください」
「言いにくいのよ。
ミライアは、あなたが大好きなのよ。
リヌス、ミライアでもいいんじゃなくて?
あなた、他に好きな方いるの?
ディアナ姫は、ずいぶん、年上だし、行方不明なのでしょ?
それに、まだ、王子と結婚されてるのよね?」
「・・ディアナ王女は、関係ありません。
世の中に女がミライアしかいなかったとしても、私は、彼女とは結婚しません」
「オホホ。
リヌスの冗談は、ホントに楽しいわ」
「・・冗談じゃないんです・・」
リヌスは、実の母親と意思疎通することの困難さを、いつものように痛感しながら、部屋を後にした。