夏休み。
夏休みは忙しい。
委員会だけじゃなくて
さらに増えることになる。
「金垣さんて絵描くの好きなの?」
「え、な、なんで?」
「この間美術の先生にほめられてたの見たんだけど、凄い嬉しそうだったし」
「・・・いや、うん、まぁ」
委員会が一緒になってからというもの、
あたしと藤崎くんとはよく話すようになった。
「今度何か見せてよ」
「えぇ、あたし下手だから駄目だよ」
「そんなことないって、実は凄い絵うまいって知ってるんだから」
そうやって微笑まれると、あたしは頷かずにはいられない。
藤崎くんとあたしの関係は不思議なものだった。
高2の夏休み。
美術の先生に呼ばれたあたしは学校に来ていた。
文化祭で行う展示会の絵を描いてみないか?ということだった。
勿論頼まれることは名誉なことだし、、
何より何を描いてもいいというのが嬉しかった。
それから家にいる間は絵を描くことになった。
「あっつ・・・」
8月頭のとある日。
文化祭の会議ということで生徒会と執行委員が集められた。
夏休みの宿題と絵を描くことしかしてないあたしにとって久々の外出。
「おはよー」
「何か焼けたねー」
「そうそう、この間さー」
と委員会の中でもそれなりに仲が良い子同士は話をしている。
あたしはちょっとだけダルイ身体を起こし、ぼーっとしていた。
「久しぶり、金垣さん」
「・・・藤崎くん、久しぶり」
藤崎くんは爽やかに隣りに腰掛ける。
「夏休みももう半ばだねー」
「そうだねー。何してた?」
「これから旅行行くんだよ」
「旅行いいなー」
教師が来るにはまだ時間があるから
そんな風に話を進める。
「今日おっきい荷物持ってたでしょ?」
「うん、今も後ろにあるよー」
藤崎くんと一緒に後ろを向くと
あたしが持ってきた画用紙と画板、画材などが入った袋が置いてある。
「文化祭の展示会で飾る絵を描いてて」
「結構忙しいの?」
「うん、ここ最近は家にこもってた」
「あとで見せてよ」
「えぇ、まだ途中だよ?」
「うん、それでいいの」
そう言ってもまだ藤崎くんはその袋を見ていた。
あたしはそれが何だか恥ずかしくてあたしは前を向いた。
委員会は昼前に終わり、
あたしと藤崎くんは昼を一緒に食べることにした。
場所は美術室で、だけど。
そういうのもいいよね、なんて2人で笑った。
「出来上がってないけど、本当にいいの?」
「うん、それが見たい」
「何か恥ずかしいな」
紙を差し出すと、丁寧にそれを見る。
藤崎くんはいつもの優しい目じゃなくて
何処か鋭い目だった。
「秋らしくていいと思う」
「・・・ありがと」
心の底からホッとした。
別にほめてほしいとかそんなんじゃなかったけど
でも凄くドキドキして、嬉しかった。
お昼を食べ終わった後も藤崎くんはあたしが絵を描くのを見ていた。
「あーだめだ、また使い切っちゃった」
「ん?」
「パステル、そろそろ無くなりそうだと思ってたら丁度切れちゃった」
「あ、本当だ」
パステルの茶色を使い切ってしまった。
帰りにでも買いに行かなくちゃ。
「いつもそういう画材って何処で買ってるの?」
「地元駅前にある画材屋さん」
「へぇ」
「小さいお店なんだけど、色々売ってるの。帰りに寄ってかなくちゃ」
「・・・」
夕方になり、帰ることにした。
藤崎くんとは駅まで一緒。
「ねぇ、金垣さん」
「ん?」
「その画材屋さん俺も行ってみたいな」
「え」
「ちょっと興味があって、駄目かな」
ほらまたその顔。
頷かずにはいられない。
そして一緒に画材屋に向かうことになった。
何でかわからないけど、緊張して仕方なかった。
その時から、藤崎くんと帰りを一緒にすることが多くなった。
藤崎くんは興味があるからって画材屋に一緒に行くことが多かった。
あたしはあたしで買い物をするから、それでもいいんだけど
でも、曖昧な関係の方が居心地がいいって
気付くのはもう少しかかることにあたしはまだ気付いてなかった。
ゆチャンです。
回想編スタートです。
ここから長いですよーw
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