兄とあたし。
暖かいそのぬくもり。
不安は募るばかり。
あたしはどうしたいの?―――――――――――
「ただいまー」
「・・・」
「あすか?」
「・・・あなた、おかえりなさい」
「どうかした?」
「え?」
「何かぼーっとしてたみたいだけど」
「ちょっと疲れちゃって」
何をしてるんだろう、と思った。
卒業アルバムを片付けて、立ち上がる。
「ごめんなさい、夕食の準備してないわ・・・」
「そうだろうと思って買ってきた」
「本当ごめんなさい・・・」
「さっき携帯にかけたんだけど出なかったし、何かあったと思って」
スーパーの袋を受け取り、中からお弁当を取り出す。
「ちょっと、考え事しちゃってて」
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫よ」
本当は違った。
何かいけないことをしているみたいなそんな感じ。
自分でも無理に笑ってるってことに気付いてた。
「今週末なんだけど、出張が入っちゃって」
「今週末?」
「あぁ、金曜の夜からなんだけど・・・帰ってくるのは日曜日夕方かな」
「また急ね?」
「俺も聞いたばっかで、何がなんだか」
そう少ししょぼくれる旦那さまを差し置いて、あたしは箸を進めた。
「それでさ、今結構危ないだろ?」
「そうね、結構事件多いし」
「それでちあきに来てもらうってのはどうだ?」
「ちあきに?」
ちあきというのは、あたしの双子の兄のこと。
旦那さまの会社の下請け会社で働いてる。
「帰りにたまたま会ったんで、話したらOKだって」
「うん、わかった」
「明日にでも連絡取ってみれば?」
「そうね」
その日、旦那さまが本当に優しくてあかねをお風呂にも入れてくれた。
久々にゆっくり休んでいいよって微笑んでくれて、何だか胸が痛かった。
翌日の昼頃。
お昼ご飯の片付けをしていた時、携帯が鳴った。
「ちあき」
『あすか、元気か?』
「うん、元気よ」
『雅人から話聞いてるだろ?』
「うん、あとで電話しようと思ってたの」
雅人というのは旦那さまのことで
ちあきは年上なのに呼び捨てにしてる。
そこもちあきらしいんだけどね。
『んじゃ今日帰りにでも寄るわ』
「うん、わかった。ちあきの好きなハンバーグ作っておくわ」
『な、何でお前覚えてるんだよ』
「覚えてるわよ、家族でしょ?」
少しだけ陰った心が晴れた気がした。
ちあきはあたしの片割れ。
あの時も、そばにいてくれた。
「いやー寒くなったな」
「そうねー、もう12月だし」
「今年ももうすぐ終わりかー」
「早いよね、本当」
雅人さんは少しだけ遅れると連絡があった。
ちあきは家に来て早々ご飯を平らげた。
「雅人が言ってたけど、最近元気ないんだって?」
「え、そうかな?」
「同窓会の連絡が来たって聞いたけど、まさか・・・」
首を振った。
でも、何だか不安で俯いてしまった。
「藤崎くんは来ないって連絡があったの。でも・・・」
「でも?」
「この間、巴が来たんだけど卒業アルバムを一緒に見て・・・」
「・・・・それで?」
「思い出しちゃって、色々と・・・」
「・・・そうか」
手が震えてるのがわかった。
左手で右手を押さえる。
「ただいまー」
「!おかえりなさい・・・」
「おかえり、雅人」
「おい、ちあき。お前家の主人より偉そうとは何事だ」
雅人さんは疲れたのがすぐに着替えに行ってしまった。
ちあきは心配すんなって顔をしていたので安心した。
「え、何ちあき泊まってくの?」
「あれ言ってなかったっけ」
「今聞いた」
「俺明日休みなんだよ、だからいーかなって」
「んじゃ今日は飲もうぜ」
「雅人明日仕事は?」
「午後からなんだ」
「なら今日は3人で飲む?」
2人は少しだけ驚いた顔をしていたけど
今日は何だか飲みたい気分で
ワインやビールを冷蔵庫から出してきた。
酔いたい程に忘れたい記憶。
彼との出会いから、あたしの高校生活は色濃くなってゆく。
そしてその別れもまた・・・。
3連投です、ゆチャンです。
新キャラ登場の回。
適当に考えすぎたかなって思ってますが
これからも出せるといいなw
詳しくはブログ↓
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