僕はここでヴァイオリンを弾き続ける
親の顔を知らず育った
施設にあったボロボロのヴァイオリン
駄賃をつぎ込み
直しながら弾いていた
毎日弾くから上手くなって
街中で毎日披露した
みんな拍手をするのに
ある女の子は毎日
ただ黙って聞いて
黙って帰るのだ
僕はここでヴァイオリンを弾き続ける
みんなの笑顔を見たいから
僕はここでヴァイオリンを弾き続ける
あの子の笑顔も見たいから
いつものように弾き終わった
手によく馴染むピカピカのヴァイオリン
広場に残った
例の女の子は言う
「明日は私のために弾いて」
真剣で悲しい眼差しを
僕に向けたあの子のために
弾いてあげたいと思った
でも次の日…
彼女は来なかった
僕はここでヴァイオリンを弾き続ける
あの子に理由を聞きたいから
僕はここでヴァイオリンを弾き続ける
あの子の笑顔こそを見たいから
施設からは巣立って大人になったある日
僕はヴァイオリンを弾き終えて
拍手喝采をもらった
ヴァイオリンを片付けていると
散開する聴衆の端に
見覚えのある女性が
涙を湛えて立っていた
近付いて話しかけると
「ありがとう」と細い声でそう言った
僕はここでヴァイオリンを弾き続けた
この日を迎えるために
僕はここでヴァイオリンを弾き続けた
やっとあの子の笑顔を見れた
僕はここでヴァイオリンを弾き続ける
もっと笑顔を見たいから
僕はここでヴァイオリンを弾き続ける
僕がヴァイオリンを弾きたいから
昔から純愛の物語が好きなので自分でも書いてみました。混じりっけのない愛というのは現実ではなかなか難しいです。いくら自分が想っていても伝わらないことも多いと思います。だから純粋な愛というのは行動で示す以外ないと僕は思います。特に時間をかけた行動というものは時間がみんなに等しく与えられている故に説得力があるんだと思います。