エピローグ
王城があったところで声が響いている。
多くの職人が、城を建て直そうと忙しなく動いていた。
その様子を眺めている人達の中に、二人の男女がいる。
二人の会話をしている様子を見るからに兄妹だろう。
兄の方は、濃い色味の赤髪。
妹の方も赤い髪色で、服は上と下が一つながり
のピタッとしたタイトスカートだ。
白色を基調としており、胸元を中心に赤の十字のラインが入っている。
それと裁司者を示す、襟が立った白い上着を着ていて、足元は紫のブーツを履いている。
片方の兄らしき男が、柔らかな口調で会話を続ける。
「それにしても、彼女がメフェリア・ノーレッシュを倒してしまうとは······驚きだね。今でも信じられないよ。そうは思わないかい? ディーナ」
「それはそうですが、兄上······。あの二人の行方は分からないのですか?」
「二人······? ああ、ジュートとアーマイゼのことだね。まあ、心配はいらないよ。ディーナの報告通りなら、あの二人は今すぐに捕らえなくても、危険はないよ」
「そうですか。······兄上が言うならそうなんでしょう」
ディーナは、溜め息をつく。
「それはそうと、エリッサ達は休暇をどうしてるでしょうか」
「彼女と彼ならきっとのんびりしていると思うよ。それに今の内に、休んでおいて貰わなくては困る。あの二人は、王都が復興すれば活躍を認められ、名誉ある名と昇進を授かるのだから。私達の名、S・アスクトのSがシュトラーセ(道)であるように」
「そうですか。······二人が」
ディーナは嬉しいのか、口角を僅かに上げている。
「それはディーナ、君もだよ」
「なっ!? あたしも!? 」
「そうだよ。ディーナもエリッサやウェルグと一緒に敵を倒すために戦ったからね」
「あたしが······」
(不思議なものだな······。エリッサと出会う前までは、兄上といつも比べられて、あたしを見てくれる人なんていなかった。だから、認めてもらいたかった。エリッサのおかげで、今はどうでもいいが)
ディーナが物思いにふけっていると、女性の綺麗な声が響く。
「ディーナ! 探しましたよ。ここにいたんですね」
「ああ、ミーフェア。兄上も一緒だ」
ミーフェアは、王国裁司に軽く頭を下げる。
「ディーナ、エリッサさん達はどうしてるでしょうか?」
「先程、兄上とその話をしていたところだ。そうだな······エリッサ達は······」
今ウェルグは、故郷に帰ってきていた。
緊張と嬉しさで、若干足取りが早い。
(あと少しで、姉さんのいるところだ······)
ウェルグの姉は、果物を売る商人の店で働かせて頂いている。
数分後、数メートル先に彼にとって懐かしい顔があった。
穏やかな目元に金色の髪の女性。
「姉さん······」
そのウェルグの声に気付いたのか、姉は顔を向ける。
「ウェルグ······!」
ウェルグは近づく。
「僕、話したいことが色々あるんだ。軍に入ってからのこと」
「そう。でも、あなたが元気そうで良かったわ」
日が暮れ夕食時。
エリッサも第二の家に帰ってきていた。
彼女は、メフェリアに両親を殺されてから、母親の兄夫婦に四年程世話になっていた。
それからは、仇を探す旅に出ていたのだが。
ふとスープを飲む手を止め、伯父が口を開く。
「エリッサ。それにしても大分すっきりしたな」
「えっ! 前、そんなに太ってた?」
「あなた、嫌ですよ。それじゃ伝わりませんよ。エリッサ、あなた。以前より大人びたわね」
「うん、それが言いたかった」
伯父は、伯母の言葉を肯定する。
「そうかな」
「ええ、本当に」
(そうなんだとしたら、ウェルグのおかげかな。ウェルグの過去を聞いてなかったら、今のわたしはないからね。どうしてるかな······。ウェルグやみんな······)
エリッサは物思いにふけるが、しばらくすると今までのことを話そうと口を開く。
「伯父さん、伯母さん。あのね······」
完
ようやく完結しました。
ここまで読んで下さった皆様、ありがとうございました。
webに載せた小説の中では、初めての完結です。
打ち込んでいる最中に、色々話を変えたり追加しました。
楽しかったです。
でもまだ、出してない設定や世界観があります。
この世界での貴族の在り方や、裁きの力と罪悪の力が生まれた経緯とかですね。
他にも歴史背景などもありますが、それは次回作で出したいと思います。
構想も進んでいます。
楽しみにしていて下さい。
読んで下さった読者の皆様、本当にありがとうございました!




