六十九 決着
メフェリアは、右手を前へかざす。
「罪悪の力よ、形をなせ。白き球体となりて、顕現せよ。我が力は消失」
彼女の周りに、無数の白い球体が現れる。
「顕現せしは鏡。対象を映し現実に示せ。因果の鏡!」
エリッサは剣を顕現したまま、因果の鏡の力も使った。
目の前に五つの鏡が現れる。
それから両者は、動きを見せない。
互いに、仕掛ける隙を狙っているためか、張りつめた空気が満ちる。
一分が経ったと思う頃、メフェリアの体がふらついた。
肩の傷と出血のせいだろう。
その隙を見たエリッサは、動こうとした。
だが先に仕掛けたのは、意外にもメフェリアだった。
無数の白い球体を放っていく。
エリッサは必死に動いてかわすが、一つの白い球体が迫る。
それを因果の鏡で防ぐ。
さらに、白い球体が迫り来る。
エリッサはかわしたり、鏡で防いでいく。
(今までより······多い。これじゃ、近づけないよ)
次第に、エリッサのかわす動きに切れがなくなっていく。
(まずい、このままじゃ······。あれ?)
エリッサはあることに気付いた。
白い球体の数が、少なくなってきているのだ。
メフェリアも体力の限界がきているらしい。
根比べだねとエリッサは考え、粘ってかわし続ける。
数分後、繰り出される白い球体は三つになった。
エリッサはこれならいけると思い、球体をかわしながら、相手へ向かって駆ける。
全てをかわしきり、距離が近づいていく。
メフェリアは、新たに白い球体を顕現しようとしない。
相手の力が、限界だと判断したエリッサはさらに距離を詰めていく。
突如、前方に白い球体が出現した。
数は三つ。
(まずい、かわせない!)
エリッサの顔が青ざめていく。
その時だった。
エリッサは視界の端で、線状の輝きを目にした。
その輝きは、メフェリアの左肩を一瞬で貫いていった。
出血を伴って、左腕が地面に落ちる。
「うっ!」
白い球体が消滅していく。
「僕もいるよ」
ウェルグは、槍を投げ放った後の体勢でそう言った。
「私は······私は!」
メフェリアは、三つの白い球体を顕現する。
二つは近くにいるエリッサに、残り一つはウェルグへ放つ。
「顕現せよ! 象徴の賢者、鉄槌!」
突如、声が響いた。
ミーフェアだった。
彼女が顕現した賢者は、速く宙を駆けていく。
「エリッサさん!」
「ミーフェア!?」
賢者は、エリッサへ近づき大槌を構える。
「跳んでください!」
エリッサは、ミーフェアの意図を理解したらしく、上へ跳んだ。
その足に、賢者の大槌が当たり宙を舞う。
エリッサは、宙で二、三回転程してメフェリアの背後に着地する。
すぐさま向き直り、相手の背中を鏡の剣で貫いた。
ようやく、最後の戦いが終わりました。
次回は、エピローグです。
宜しくお願いいたします。




