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裁きを司る者達  作者: 志野夕刻
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六十八 大切な




 「力に耐えきれなかった······?」

 エリッサは、メフェリアの言葉を繰り返した。

 「いえ、私の持つ力が原因で人々は忌み嫌った。それが引き起こす環境に耐えきれなかっただけ」


 メフェリアは、伏せていた目を上げた。

 「力を持つ前は、幸せだったんだと思う。両親がいて幸せに満ちていた。だけど、六才の時罪悪の力に目覚めた。この力は、私の幸福を一瞬で奪っていった。力を制御出来ず、両親を巻き込んでしまったの······。抑え込むのにかなりの時間がかかった。この時私の心は、両親を失った悲しみと自分の力への恐怖と驚きでいっぱいだった······。今でも忘れられない······」


 (メフェリアも両親を失ってたなんて······)

 エリッサは、真剣な面持ちで話の続きを待つ。

 

 「それからは、生きるために盗みをしていた。子供の私には、食い繋ぐ手段がなかったから。それで他人からは、忌み嫌われたわ。でも決して、罪悪の力は使わなかった。人が死ぬと分かっていたから。それから一年後、七才の時だった。私は現状に限界を感じ、自分の意思で人を殺めたわ。完全に警戒されて、食べ物を盗めず体が限界だった。子供の頃の私は、こう考えたの」


 メフェリアの目付きが、より冷たくなっていく。

 「幸せそうな人達が憎らしい。わたしはこんなに苦しいのに······って。でも、私は耐えた。長くは続かなかったけれど。ふと考えが浮かんだの。だったら、奪えば良い······って。だから私は、幸福な人達を消すの」


 「あなたにも色々あったんだってわかったよ。けど、間違ってる! 大切な両親を失ったなら、悲しい気持ちがわかるよね! なのに、なんで他の人達を殺すの!?」


 「幸せな人達が憎い、許せない。それだけ······。だから幸せごと、消すの」


 「メフェリア、あなたが殺した人達の中にも家族がいたんだよ! 残された人達にとって、死んだ人は大切な存在だったの! なんでそれがわからないの!」


 「間違っていても良い。私にはどうでもいいの」


 エリッサは、言葉で説得するのは無理だと判断し、右手に鏡の剣を顕現する。


 「わたし、あなたに言ったよね。裁司者として裁くって。わたしは、憎悪に囚われているあなたを裁いてみせる!」

 エリッサは、鏡の剣を構えた。











 次回、エリッサとメフェリアの決着です。

 宜しくお願いいたします。

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