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裁きを司る者達  作者: 志野夕刻
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六十五 浄の玉光




 エリッサは、体がふわりと浮くのを感じた。

 彼女の視界に、自分を抱えているウェルグの顔が映る。

 どうやら声の主は、ウェルグだったようだ。

 「ウェルグ!?」

 「良かった。間に合ったよ」


 (じゃあ、さっき横切ったのは······?)

 エリッサが思案顔でいると、ウェルグは「今はこの状況を切り抜けるのが先だ」と諭す。

 「うん」


 二人が話している間に、床や天井の崩壊が進んでいた。

 「落ちないようにしっかり掴まって!」

 「うん!」

 エリッサは、両手をウェルグの首に回す。


 数秒後、二人の足元の床が崩れ落ちていく。




 ウェルグはエリッサを抱えたまま、崩れていく瓦礫へ跳んで移動していく。

 上からの瓦礫をかわしながら、その移動を繰り返す。

 数秒後、崩落が止み地面に着地する。

 二人は辺りを見回す。

 「ひどいね······」

 「うん」


 城はほとんど、崩壊していた。

 天井はなく、壁も崩れて廃墟のようだ。

 そして、二人がいるのは地上一階だった。

 「まさか、メフェリアの力がここまでなんて······。そういえば、国王様は!?」

 「国王様なら、ほら」

 ウェルグは、右斜め前方に視線を向けて示す。


 その方向を見れば、王国裁司と王が一緒にいた。

 「遅れてすまなかったね。でも、間に合って良かったよ」

 「王国裁司様!」

 (さっき、通り過ぎた影はディーナのお兄さんだったんだね)

 エリッサは納得して落ち着くと、急にウェルグに抱えられているのが恥ずかしくなる。

 「······ウェルグ。その······下ろしてくれないかな?」

 「あっ、うん。わかった」

 ウェルグは、エリッサをそっと下ろす。


 王国裁司は王に向き直ると、右手を胸にそえ頭を下げる。

 「王よ。ここは危険なので、少し離れていて頂けますか?」

 「うむ、分かった。キルシュよ、頼んだぞ」

 「承りました。お任せ下さい」

 王は離れていく。



 「もう話は終わり? 続きを始めたいんだけど」

 メフェリアは、何気無い様子で立っている。

 「随分、余裕だね。こっちは三人いるんだよ?」

 「それが何? 私の力の前に、人数は関係ない」


 メフェリアは右手をかざす。

 すると、白い球体が四つ現れ、エリッサとウェルグに襲い掛かる。

 二人は左右に跳んでかわす。


 王国裁司は、メフェリアの横から光線を放つ。

 だが、相手は予想していたように、白い球体を顕現して相殺する。

 「穿て!」

 ウェルグは、輝きの槍を放り投げた。

 それとほぼ同時に、エリッサも鏡の欠片を射出する。

 メフェリアは、二人の攻撃も白い球体で防ぐ。


 「少し面倒······」

 メフェリアはそう口にすると、無数の白い球体を顕現していく。

 「あれは、まずい!」

 王国裁司は右手を上へ掲げる。

 「光りの玉よ」

 遥か頭上に、巨大な光りの球体が現れる。

 「悪しきものを眩さで照らし」

 球体の光が増していく。

 「消し去れ。浄の玉光」


 巨大な玉から周囲に、光が放射される。

 その光りによって、相殺された白い球体は消滅していく。


 「うわっ! あれ······すり抜けてる?」

 ウェルグは、不可思議な体験をしているといった表情だ。

 「みたいだね」

 (王国裁司の力······当たるものとそうでないものがあるのかな?) 


 光の放射はまだ止まらない。

 メフェリアは新たに、白い球体を顕現して相殺していく。

 「くっ」

 王国裁司は、顔に汗を滲ませる。


 光りの放射が、段々少なくなっていく。

 そして数秒後、王国裁司の攻撃が止んだ。

 光りの玉は消滅していく。





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