六十四 お礼
「国王様は、隅に移動していてください!」
「うむ、わかった」
国王が隅に移動し終えると、エリッサはメフェリアを見据える。
「いくよ! 顕現せしは鏡。対象を映し、現実に示せ! いでよ、因果の鏡」
エリッサの前方に、一つの鏡が現れた。
「終わりだよ」
エリッサは右手を握り締める。
鏡に一つのひびが入る。
メフェリアは、直感で危険を察知したのか、自分を隠す程の白い球体を顕現する。
鏡のひびが、縦に広がっていく。
広がり終えると、因果の鏡の効果で、白い球体は縦に割れ消滅した。
「なっ! 防がれた!?」
「あなた、以前と違う······。まあ、いい。罪悪の力よ、形をなせ。白き球体となりて、顕現せよ。我が力は消失」
メフェリアの目の前に、白い球体が三つ出現する。
三つの白い球体は、エリッサへと襲い掛かっていく。
「くっ」
エリッサは横に駆けて回避する。
すかさず相手に向き直り、「舞え! 鏡華!」と叫ぶ。
無数の鏡の欠片が現れ、メフェリアへ放たれる。
だが相手は、白い球体を顕現して防いでいく。
「無駄よ。あなたも消える運命」
「やってみなきゃ、わからないよ!」
(ここで受けに回ったら、流れを持っていかれる。攻めなきゃ)
エリッサは、相手目掛け駆けていく。
「顕現せしは鏡。対象を映し、現実に示せ。因果の鏡!」
エリッサは、自分の目の前に鏡を三つ顕現する。
メフェリアは、五つの白い球体を顕現して放つ。
エリッサは、曲線を描いて駆けながら、白い球体を一つ二つとかわしていく。
だが、残り三つが迫ってくる。
その白い球体は、三つの因果の鏡で防ぐ。
鏡に当り、白い球体は消滅していく。
エリッサはさらに距離を詰め、右手に鏡の剣を顕現する。
射程に入ると、剣を左から右へ振っていく。
メフェリアは咄嗟に、後ろへ跳んで回避する。
「······!」
かわしきれなかったのか、左手で右肩を押さえる。
メフェリアの右肩からは、血が流れ出ていた。
傷口は深くなく、浅い程度だが。
「驚いた······。私に傷をつけるなんて。ふふっ」
メフェリアの周囲に、幾つか白い球体が現れる。
エリッサは、後方に跳んで距離をとった。
「ふふっ」
さらに、玉座の間の天井付近にも、無数の白い球体が現れていく。
「何をする気なの!?」
「傷のお礼に、面白いもの見せてあげる」
次の瞬間、玉座の間に存在する白い球体が、床や壁、天井に当たっていく。
当たった箇所は消えて無くなり、城が揺れだす。
天井と床が崩れていく。
「まずい。崩れる!」
エリッサは、国王を連れてどう脱出するか考える。
どうしようもないと諦めた時、視界の端で通り過ぎていく何かが見えた。
それと、背後から自分を呼ぶ声を、エリッサは聞いた。
「エリッサ!」
次回も戦闘です。
あの二人が登場します。
宜しくお願いいたします。




