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裁きを司る者達  作者: 志野夕刻
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六十二 因果の鏡




 エリッサは、波打った金髪を揺らしながら、王城への一本道を駆けている。

 彼女の瞳に人影が映る。

 「あれは······」

 見覚えのある顔だった。


 ある程度距離が近付くと、エリッサは足を止めた。

 相手を睨み据える。

 「······ユア・レイティヒ」

 

 「そう怖い顔をしないでほしいな。それにしても、又会うとはね」


 「こっちは急いでるの。無理にでも通してもらうよ」

 エリッサは右手をかざす。

 「舞え! 鏡華!」

 無数の鏡の欠片が放たれ、相手へ向かっていく。


 「やれやれ、仕方ないな。いでよ、束縛の刃」

 ユアは、無数の波打った刃を顕現して、鏡の欠片を防ぐ。

 「もう、終わりかな?」


 「まだだよ!」

 再び、複数の鏡の欠片を顕現して放つ。

 今度は右と左に分けて。


 ユアは、刃でもって防ぐ。

 「何度も、同じ手は······」

 彼の表情が変わる。


 エリッサが、鏡の剣を手にして、突っ込んできたからだ。

 ユアは、刃を三つ放つ。


 エリッサは、鏡の剣で斬り払って防ぎ、距離を詰めていく。

 ユアは、更に刃を放っていく。

 その刃をエリッサは、鏡の剣で斬り払っていき防ぐ。

 ユアとの距離が詰まっていく。

 そして、相手が射程に入ると左から右へと剣を振る。


 ユアは、右手に刃を顕現する。

 甲高い音が響く。

 彼は、エリッサの剣を受け止めていた。

 「素晴らしい。以前と違った、その強さ!」


 (強さ······。そうかもね。わたしはあの時、ウェルグの過去を聞いた。その後質問した時、ウェルグは大型の異形を憎くはない、怖いと言ってた。だから、強くなりたいとも言ってたけ。その時、思ったんだ。わたしは、こんなに仇のメフェリアを憎いのに、なのにウェルグは仇の異形を憎いと思ってない。わたしは、ウェルグが強いと思った。それに、異形を怖いって言葉に、毒気を抜かれたんだよね。そしたら、復讐がどうでも良くなった。囚われるのはやめようって。そう思えたから、わたしの力は強くなったんだ。それが良く分かる)


 二人は、互いの剣と刃に、強く力を入れて押し合っている。

 エリッサは口角を上げる。

 「余裕を持っていられるのも、今だけだよ」

 「まだ、何か見せてくれるのかな。楽しみだ」


 エリッサは、後方に跳んで距離をとった。

 更に後退りしていく。

 充分な距離になったところで、足を止め右手を前へかざす。


 「顕現せしは鏡。対象を映し、現実に示せ。いでよ。因果の鏡」

 エリッサが言い終えると、円形の鏡が現れた。


 「あれは······」

 ユアは現れた鏡を見て、何かを感じ取ったのか警戒する。


 「もう、終わりだよ」

 エリッサは、かざしていた右手をぐっと握る。

 すると鏡に、一つの小さなひびが生じた。

 ひびはそのまま縦に広がっていく。


 広がりきった時。


 「なっ!?」

 ユアが驚いた声を上げる。

 自分の頭部から下まで、縦に線が走っていて血が垂れているからだ。

 ユアの体が左右に分かれていき、血が噴き出す。


 「だから、言ったよね。終わりだよって。わたしの因果の鏡は、攻撃が加わったり意図的に割ると、映し出された対象に攻撃がいくの。知らなきゃ、かわせないよ」

 エリッサは歩き出す。


 (ユアがいたってことは、メフェリアも来ているはず。王国準裁司と一緒にいるかも)

 「急がなきゃ······」

 エリッサは、王城へ向かって走り出した。











 エリッサの新たな力を、ようやく出せました。

 ラストも近くなってきました。

 次回も楽しみにしていて下さい。

 宜しくお願いいたします。

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