五十八 協力している理由
ウェルグが構えたのを見て、ジュートも両手の剣を構える。
二人はしばし、仕掛けるタイミングを狙って、動かないでいた。
すると、ウェルグは唐突に口を開く。
「······なんでジュートは、王国準裁司に味方しているんだ?」
「俺は味方している訳ではない。仕方なく協力しているだけだ。それに、王国準裁司に味方しているんじゃなく、メフェリアに協力している」
「だったら、なおさらだ。なんでだ?」
「······話せば長くなる。俺とアーマイゼは······南部の東に位置する村の生まれでな。幼い頃からいつも一緒だった。あいつと村にいた時は、楽しかった。そんな楽しい日常を、俺は壊してしまったんだ」
「壊した······?」
「ああ、四年前のあの日、俺は通りすがりの傭兵三人を村に招き入れた。だけど、それが間違いだったんだ。······仕事終わりの夕刻に、アーマイゼが傭兵達に連れていかれるのを見たんだ。俺は、胸騒ぎがして後を追った······」
ジュートは顔が険しくなり、続きを話しづらそうにする。
ウェルグは黙って、続きを待っている。
ジュートは、数秒間黙っていたが、ようやく話を再開する。
「そして、追い付いて目にしたのは、信じられない光景だった。······アーマイゼが狂ったように笑っていたんだ。既に死んでいる傭兵達を、螺旋の刃で抉り刻みながら······。俺は、しばらく立ち竦んでいた。すると、アーマイゼはようやく笑うのを、刃で抉り刻むのをやめて、俺を見たんだ」
ジュートは、顔を苦渋に歪ませる。
「俺はアーマイゼが元に戻ってくれたんだと思った。だが、違った。彼女の瞳に、以前の輝きはなかった······。俺はとりあえず、傭兵三人の死体を土の中に埋めた。アーマイゼは、自分から進んで人なんか殺せない。そう信じていたからだ。その後、夜に彼女を連れて村を出た。それから、二人で旅をしていて、一年しない内に手配書が出回るようになった。恐らく、村での一件が明るみに出たんだろう。そんな時、メフェリア達に出会った。メフェリアは、俺達の弱味につけこんで、協力しろと言ってきた。······その提案を俺は受け入れたんだ。」
「他に方法はなかったのか?」
「他に方法はなかった。アーマイゼは罪悪の力の持ち主だ。生きてるのを国が許してくれない。」
「今の方法が間違っていると思わないのか?」
「当然、間違っているとわかっている」
「それなら!」
「だが、彼女を守るにはこうするしかなかった。例え間違った道でも、アーマイゼのためなら共に歩み続ける。そう決めたんだ······」
「······彼女のことが好きなのか?」
「······ああ、俺はアーマイゼのことが好きだ」
「そうか。良くわかったよ。やっぱり、戦うしかないみたいだ」
ウェルグは、両手の輝きの槍を構え直す。
「負ける気はないからな」
ジュートも、両手の剣を構える。
「こっちだって、負ける気はない」
ウェルグは相手を見据える。
今回は、ジュートとアーマイゼの過去の話でした。
次回は又、戦闘があります。
楽しみにしていて下さい。




