五十六 先に
「うぅ······」
エリッサは、地に手をつけて立ち上がる。
他の三人も、同様に起き上がる。
「お前ら、悪いがここで死んでもらう」
ジュートは、二本の剣を鞘から抜く。
一本は長く、もう一本は短い。
「来るぞ!」
ディーナは右手を前へかざす。
「炎の刃よ。駆けろ!」
炎の刃は地を駆け、ジュートへ迫っていく。
だが、彼は進みつつ、左斜めに動いてかわす。
そのまま、ディーナへと距離を詰めていく。
「危ない!」
ウェルグは、輝きの槍を右手に顕現して、ディーナの前に出る。
ジュートが近づいて、右手の長い剣で突いてきた。
その攻撃を、槍の側面で受け止める。
ジュートはすかさず、左手の短い剣で足目掛けて突く。
ウェルグは、瞬時に左手にも槍を顕現して、それで防ぐ。
「アーマイゼ! 攻撃だ!」
ジュートは、後ろを振り返ることなく叫んだ。
「······」
アーマイゼの周りに、螺旋の刃が五つ形成されていく。
ジュートは地面に伏せる。
五つの螺旋の刃が、凄い勢いで伸び進んでいく。
エリッサ達は、地面に倒れるように跳んで、ぎりぎりで回避する。
「くっ。なんて力だ」
「危なかったですね」
四人は、起き上がる。
ジュートも立ち上がった。
ディーナは表情を引き締める。
「アーマイゼを抑えるぞ。ミーフェア」
「わかりました。ディーナ」
「僕は、ジュートの相手をするよ」
「じゃあ、わたしはウェルグに加勢するよ」
エリッサの言葉を聞いて、ディーナは口を開く。
「いや、エリッサは先に行くんだ。王が無事か気になるからな」
「でも、ジュートとアーマイゼは強いよ! わたしもいた方が······」
「ここは任せておけ。行け、エリッサ!」
「行ってください」
「大丈夫だ。僕たちに任せて先に」
「······うん、わかったよ。先に行くね」
エリッサは、城へ向かって駆け出した。




