五十四 効いていない
「さて、すぐ終らせないとね」
王国裁司は手を前へかざす。
「すぐ、終らす? 舐められたものね。やってしまいなさい」
蜂型の異形は、命令を受け動く。
王国裁司は、襲い掛かってくる異形目掛け、光線を放つ。
だが、かわされる。
「では、これならどうですか?」
王国裁司は六つの光線を放つ。
その光線の幾つかが、蜂型の異形の身体を貫通する。
異形は生命を絶たれ、大地へ落ちていった。
「なかなか、やるじゃない。さすが、王国裁司ってところね」
「もう、守ってくれる盾はいないんですよ? 余裕ですね」
「私にはこれがあるからね」
ヴィネラの瞳が輝く。
王国裁司は自分の目に違和感を覚える。
「!? これは······」
「そう、私の力は生物を操ることが出来るのよ。まあ、条件があるんだけどね」
「なるほど、目を合わせたものを操れる。だけど、残念みたいですね。私には効いてないよ」
「なっ! なんでよ!? あんた、敵意とか負い目がないわけ!?」
「そうみたいだね」
王国裁司は右手を前へかざす。
「光よ。罪深き者を穿て」
一つの光線が放たれる。
光線は、ヴィネラの腹部に円形状の孔をあけた。
彼女は、地に倒れる。
「そんな······。まだ······私を······墜とした奴らを······見下ろし······返して······ない······のに······」
ヴィネラは、事切れた。
王国裁司は一息つく。
「さて、追い付かないとね」
彼は馬に跨がり、王都に向かっていく。




