五十三 復讐よりも
「国に······復讐」
「はい。私は、国が母にしたことを許せないんです。母は軍を辞めさせられました」
「何故、辞めさせられたんだ?」
「私も理由は分かりません。話してくれませんでしたから。でも、あんな気落ちしている母を、見ていられませんでした······。母は私の憧れ、目標だったから······」
ミーフェアは、唇をきつく引き締める。
「ミーフェア······」
「母が辞めさせられ、一年半が経った頃、私に転機が訪れました。王国準裁司様と出会ったのです。王国準裁司様は、国へ復讐の機会を与えてくれました。そして私は、数ヶ月後、スパイとして軍へ入ったんです」
「······ミーフェア、あたしは······」
「······ディーナには参りました。全然、退いてくれないので。ふふっ」
ミーフェアは思わず笑ってしまう。
「それは、こっちも同じだ。ミーフェア、こっちに戻ってきてくれないか?」
ディーナは近づき、右手を差し伸べる。
「······無理です。私はスパイだったんです。ディーナ達を裏切っていたんです。戻れる場所なんてありませんし、復讐も諦めてません」
ミーフェアは首を横に振る。
「居場所なんて兄上にお願いすればなんとでもなる。ミーフェア、復讐よりもあたしの隣にいてくれないか。いつも、かたわらで笑っていてほしい」
「······」
ミーフェアは呆気にとられる。
「ふふっ。ディーナはいつもそうですよね」
(いつも全力で······)
「茶化さないでくれ。真剣なんだ」
ディーナは、照れ気味に顔を逸らす。
「良いですよ。ディーナの隣にいます」
ミーフェアはディーナの右手を握る。
「ああ、頼む」
「ねえ、二人とも! 終わったんなら、こっちを手伝ってよ!」
「わかった、エリッサ」
「すいません」
ディーナとミーフェアは戦闘に加わろうとする。
その時、光が走った。
光は、狼の異形の頭部を貫通する。
円形状に。
大型の異形は、大地に重々しい音を立てて、倒れる。
「大丈夫でしたか? 皆さん」
エリッサ達は声のした方を見る。
女性みたいな二重で柔らかな目元に、肩上位の濃い赤髪。
そこにいたのは、ディーナの兄でもある王国裁司だった。
後ろには、自分の兵を五人引き連れている。
「兄上! こんな非常事態に今更来て」
「遅くなってごめんね、ディーナ。ここは私に任せて、ディーナ達は行くんだ。君達もだ」
「我々は王国裁司様をお守りするためにいます。それは出来ません!」
「行くんだ······。命令だよ?」
「······わかりました」
王国裁司の兵は、馬を走らせ去っていく。
「では兄上! 頼みます」
ディーナ、ミーフェア、エリッサ、ウェルグも馬に乗り、王都に向かって行った。
今回でディーナとミーフェアの戦闘が終わりました。
戦闘なのかな?
会話が多かった気がします。
次回はどちらのパターンにしようか迷っています。
まあ、決めなきゃいけないんですが。
とりあえず、次回も宜しくお願いします。




